会社の未来を左右する、重要なプロジェクトのための資金調達。
何週間もかけて事業計画を練り上げ、万全の準備を整えたつもりで、意を決して銀行の扉を叩く。しかし、応接室に通され、融資担当者に話を切り出して、わずか数分後。返ってきたのは、丁寧な、しかし、取り付く島もない、こんな一言だった。
「大変申し訳ございませんが、現状では、当行でのご融資は難しいかと…」
いわゆる「門前払い」。こちらの想いや計画の核心部分を、深く理解してもらう以前に、会話そのものが打ち切られてしまう。これは、経営者にとって、最も自尊心を傷つけられ、そして、事業の未来への希望を打ち砕かれかねない、非常に辛い経験です。
なぜ、このようなことが起こるのでしょうか。銀行員が「冷たい」からではありません。その理由は、あなたが、銀行という組織がコミュニケーションに使う、独自の「言語」と「ルール」を知らずに、交渉のテーブルに着いてしまっているからです。
この記事では、新宿で数えきれないほどの企業と金融機関の橋渡しをしてきた私たちが、その銀行の「言語」と「ルール」を、あなたに伝授します。銀行員が、あなたの会社の何を、どのように見ているのか。そして、「門前払い」という最悪の事態を回避し、あなたの会社の価値を、正当に評価してもらうための、具体的で、実践的な戦略のすべてを、ここに公開します。
第1章:銀行員の「本音」― なぜ、彼らは門を閉ざすのか?
戦略を立てる前に、まず、相手の立場を理解しましょう。銀行の融資担当者の仕事は、「お金を貸すこと」ではありません。彼らの本当の仕事は、「貸したお金が、将来、きちんと返ってくるかどうかを、徹底的に見極めること(=リスク管理)」です。彼らの人事評価は、成功した融資の数よりも、失敗した融資(貸し倒れ)を出さなかったことの方が、はるかに重要視されます。
そのため、彼らは、日々持ち込まれる多くの融資案件を、まず、いくつかの「赤信号(レッドフラグ)」で、瞬時にふるいにかけます。「門前払い」とは、この最初のフィルタリングで、あなたの会社が「これ以上、時間をかけて検討する価値のない、高リスク案件である」と、瞬時に判断されてしまった状態なのです。
門前払いを誘発する「5つの赤信号」
- 赤信号1:【武器を持たない】決算書を持参していない
融資の相談に、会社の成績表である「決算書」を持たずに臨むのは、武器を持たずに戦場に行くようなものです。話の土台となる客観的なデータがないため、担当者は議論のしようがありません。 - 赤信号2:【汚れた武器】信頼性の低い決算書
たとえ決算書があっても、それが手書きであったり、勘定科目が乱雑であったり、明らかに専門家が関与していないと分かるような、質の低いものであれば、「この会社は、経営管理が杜撰だ」と判断されます。 - 赤信号3:【不明確な目的】「何に使うか」が、曖昧
「とにかく、運転資金が欲しいんです」「事業を拡大したくて」といった、漠然とした資金使途では、計画性のなさを露呈するだけです。 - 赤信号4:【初対面の壁】取引実績が、全くない
あなたが、一度も取引をしたことのない銀行に、いきなり「お金を貸してください」と飛び込むのは、道で初めて会った人に、いきなりお金を貸してくれ、と頼むようなものです。銀行が、慎重になるのは当然です。 - 赤信号5:【準備不足】経営者としての、姿勢の問題
服装の乱れや、横柄な態度はもちろんのこと、自社の事業計画について、自信を持って語れない、数字の根拠を質問されて答えに詰まる、といった準備不足は、経営者としての資質を疑われます。
第2章:銀行との「共通言語」― 融資に強い決算書の作り方
これらの赤信号を回避し、銀行との対話の扉を開けるための、唯一にして最強の「鍵」。それが、「信頼性の高い決算書」です。銀行員は、決算書のどこを見て、あなたの会社の何を判断しているのでしょうか。
彼らが見ているのは、単に「利益が出ているか(黒字か赤字か)」だけではありません。
銀行が決算書で本当に見ている、5つの重要指標
① 自己資本比率 ― 会社の「体力・安定性」
貸借対照表(B/S)に記載される、会社の総資産のうち、返済不要の自分のお金(純資産)が、どれくらいの割合を占めるかを示す指標です。この比率が高いほど、「借金に頼らない、健全な財務体質である」と評価されます。業種にもよりますが、最低でも10%以上、できれば20%以上を目指したいところです。逆に、この比率がマイナス、すなわち「債務超過(資産よりも負債が多い状態)」であれば、その会社は実質的に倒産状態であり、融資は絶望的です。
② 営業キャッシュフロー ― 事業の「稼ぐ力」
損益計算書(P/L)で利益(黒字)が出ていても、実際の現金の出入りを示すキャッシュ・フロー計算書(C/S)がマイナス、という会社は珍しくありません(黒字倒産)。銀行は、本業の商売で、実際にどれだけの現金を稼ぎ出せているかを示す「営業キャッシュフロー」を、極めて重視します。ここが、継続的にプラスであることが、健全な事業の証です。
③ 売上と利益の「推移」 ― 会社の「成長性」
銀行は、単年度の決算書だけでなく、過去3期分程度の決算書を比較し、その「推移」を見ます。たとえ今期が赤字でも、売上が右肩上がりに伸びており、赤字幅が縮小傾向にあれば、「将来性がある」とポジティブに評価される可能性があります。逆に、黒字であっても、売上が年々減少傾向にあれば、「この会社は、衰退期にあるのではないか」と、厳しい評価を受けます。
④ 借入金の状況 ― 会社の「信用履歴」
現在の借入金の残高や、その返済が、計画通りにきちんと行われているか。これは、あなたの会社の「信用履歴(クレジットヒストリー)」そのものです。
⑤ 税理士の署名押印 ― 決算書の「信頼性の証明」
そして、これら全ての数字の信頼性を、最終的に担保するのが、決算書に押された、私たち税理士の「署名押印」です。税理士の署名がある決算書は、「これは、第三者である会計の専門家が、法律と会計基準に則って、その内容を検証した、客観性の高い書類です」という、強力な「お墨付き」となります。銀行は、社長自身が作成した決算書よりも、税理士が関与した決算書を、はるかに高く評価するのです。
第3章:【意外な落とし穴】「無借金経営」が、融資で不利になる理由
「うちは、今まで一度も借金をしたことがない、健全な無借金経営だ。だから、銀行も高く評価してくれるはずだ」。
そう考えている経営者様、実は、その「無借金」が、逆に融資の審査で、不利に働く可能性があることをご存知でしょうか。
銀行員が「無借金経営」の裏に見てしまう、3つの懸念
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「この会社は、成長意欲がないのではないか?」
銀行から見れば、借入(融資)とは、事業を成長させるための、ポジティブな「投資」です。一度も借入をしたことがない、ということは、「これまで、大きな成長投資を必要とするような、挑戦をしてこなかった会社」という、消極的な印象を与えてしまう可能性があります。 -
「過去に、何か借りられない事情があったのではないか?」
「もしかしたら、過去に融資を申し込んで、断られた経験があるのかもしれない」「決算書には表れない、何か隠れた問題があるのではないか」といった、ネガティブな憶測を呼んでしまうことがあります。 -
「この会社は、お金の『返済実績』が全くない」
これが、最も大きなポイントです。銀行にとって、最高の顧客とは、「借りたお金を、きちんと、期日通りに、最後まで返してくれた」という「返済実績」を持つ会社です。返済実績は、あなたの会社の、何よりの「信用」となります。一度も借金をしたことがない会社は、この「信用履歴」が全くの白紙状態であり、銀行からすれば、「本当に、ちゃんと返してくれるかどうか分からない、未知数の相手」なのです。
プロの視点:
だからこそ、私たちは、たとえ自己資金に余裕があるお客様であっても、創業期に、あえて日本政策金融公庫などから、少額でも融資を受けておくことをお勧めしています。最初に、この「返済実績」という名の、貴重な「信用」を築いておくことが、将来、本当に大きな資金が必要になった時に、民間金融機関の扉を開けるための、最も有効な戦略となるからです。
結論:「門前払い」されないための、たった一つの、しかし最も重要なこと
銀行の分厚い扉を、スムーズに開けるために。
それは、行き当たりばったりで訪問することではありません。それは、「専門家」という、信頼できる紹介者を伴って、訪問することです。
私たちのような、金融機関と日常的にやり取りをしている税理士は、各銀行の融資担当者と、良好な関係を築いています。
私たちが、あなたの会社の決算書を事前にチェックし、「この会社は、こういう強みがあり、将来性も有望です。ぜひ、融資の相談に乗ってあげてください」と、担当者に一本の電話を入れる。そして、あなたと共に、その面談に同席する。
その時、あなたは、もはや、飛び込みの「一見さん」ではありません。あなたは、銀行が信頼する専門家からの「お墨付き」を得た、「 vettedされた(検証済みの)有望な融資候補先」として、交渉のテーブルに着くことができるのです。
「門前払い」されるか、それとも「VIP」として迎えられるか。その差は、あなたの隣に、信頼できるパートナーがいるかどうかに、かかっているのかもしれません。
銀行の固い扉を、一人でこじ開けようとしていませんか?
その扉を開ける「鍵」と「紹介状」が、ここにあります。
まずは無料相談で、あなたの会社の決算書を、私た-ちに診断させてください。
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