個人事業主vs法人!どっちが有利?設立の最適タイミングも解説

「これから起業するけど、個人事業主と法人(会社)のどっちで始めたらいいの?
「個人事業主として数年やってきたけど、そろそろ法人化した方がいいって聞くけど本当?

事業を始める方、あるいは成長してきた個人事業主の方にとって、この選択は非常に大きな悩みの種ではないでしょうか。なぜなら、個人事業主と法人では、税金、社会保険、資金調達、信用力など、あらゆる面でメリット・デメリットが異なるためです。

当税理士事務所では、日々多くの起業家様や個人事業主様から、この「個人事業主か法人か」というご相談をいただいています。残念ながら「これが正解!」という画一的な答えはありません。事業内容、売上・利益の見込み、将来のビジョン、そして個人の状況によって最適な選択は変わります。

この記事では、税理士の視点から、個人事業主と法人のそれぞれのメリット・デメリットを詳細に比較し、特に重要な「税金」と「社会保険」の視点から、「どのタイミングで法人化すべきか」の判断基準を分かりやすく解説します。貴社(貴殿)にとって最適な選択をするためのヒントを、ぜひ見つけてください。

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1. 個人事業主と法人のメリット・デメリット比較表

まずは、個人事業主と法人(会社)の主なメリット・デメリットを一覧で比較してみましょう。

項目 個人事業主のメリット・デメリット 法人(会社)のメリット・デメリット
設立手続き・費用
  • メリット: 開業届提出のみでOK、設立費用はほぼかからない。資本金も不要。
  • デメリット: 法人格なし。
  • メリット: 法人格を取得。
  • デメリット: 登記手続きが必要、登録免許税(最低15万円)など設立費用がかかる。資本金が必要。
税金
  • メリット: 所得が低い場合は法人より税率が低い。赤字なら所得税はかからない。
  • デメリット: 所得が増えるほど税率が高くなる(所得税の累進課税)。
  • メリット: 所得がある程度高くなると個人事業主より税率が低くなる(法人税の定率課税)。役員報酬で所得分散が可能。
  • デメリット: 赤字でも法人住民税の均等割(最低7万円)がかかる。
消費税
  • メリット: 消費税の免税期間が最大2年間。
  • デメリット: 課税事業者になると納税義務が発生。
  • メリット: 個人事業主からの法人成りで、最大4年間免税期間を享受できる可能性がある(一定の条件あり)。
  • デメリット: 法人設立後、すぐに課税事業者となる場合も。
社会保険
  • メリット: 国民健康保険・国民年金に加入。扶養家族がいる場合、保険料負担が少ないケースも。
  • デメリット: 保険料が所得に応じて上限なく増える場合がある。
  • メリット: 健康保険・厚生年金に加入。保険料は会社と折半。将来の年金受給額が増える。
  • デメリット: 社会保険への強制加入義務があり、会社負担分が発生。保険料負担が個人事業主より大きくなる可能性。
資金調達・信用力
  • メリット: 個人向けの融資制度がある。
  • デメリット: 法人に比べて社会的信用度が低いと見られがち。高額な融資は困難な場合も。
  • メリット: 社会的信用が高い。金融機関からの融資を受けやすい。取引先との契約もしやすい。
  • デメリット: 融資審査はより厳格。
経理処理
  • メリット: 比較的シンプル。確定申告書作成のみで済む場合も。
  • デメリット: 特になし。
  • メリット: 厳格な会計処理により、経営状況がより明確に。
  • デメリット: 複雑で専門知識が必要。税理士費用がかかる。
事業廃止
  • メリット: 廃業届提出のみで良い。
  • デメリット: 特になし。
  • メリット: 特になし。
  • デメリット: 解散・清算の手続きが必要で、費用と時間がかかる。
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2. 最も重要な判断基準!「税金」と「社会保険」

上記の比較表の中でも、特に事業の収益性や将来設計に大きく影響するのが「税金」と「社会保険料」です。この二つのバランスを考慮することが、法人化の最適なタイミングを見極める上で不可欠となります。

2-1. 所得税と法人税の税率比較

個人事業主が支払う所得税は、所得が増えるほど税率が上がる「累進課税」です。一方、法人が支払う法人税は、利益額に応じて税率が決まる「定率課税」であり、所得税のような急激な税率上昇はありません。

  • 所得が低い段階: 個人事業主の方が有利なケースが多いです。
  • 所得がある程度高くなった段階: 法人の方が有利になるケースがほとんどです。

一般的に、個人の所得が年間800万円~1,000万円を超えてくるあたりが、法人化した方が税金面で有利になる一つの目安と言われることが多いです。ただし、これはあくまで目安であり、事業の内容や経費の状況、役員報酬の設定などによって変動します。

2-2. 消費税の免税期間

消費税の納税義務は、売上が一定額を超えると発生します。特に、個人事業主から法人に移行する際に、この消費税の免税期間を戦略的に活用できる場合があります。

  • 個人事業主: 原則として、開業から最大2年間は消費税が免税されます。
  • 法人: 新設法人も原則として最大2年間は消費税が免税されます。

これを活用すると、例えば個人事業主として免税期間を過ごした後、売上が伸びてきたタイミングで法人化することで、合計で最大4年間の消費税免税期間を享受できる可能性があります。しかし、これには令和5年10月1日からのインボイス制度(適格請求書等保存方式)導入による影響や、会社の資本金、特定期間の売上など、いくつかの条件や注意点があるため、専門家のアドバイスが不可欠です。

2-3. 社会保険料の負担

社会保険料は、税金と並び、手元に残る資金に大きく影響します。

  • 個人事業主:

    国民健康保険と国民年金に加入します。保険料は所得に応じて変動し、扶養家族がいる場合などは法人より保険料負担が少ないケースもありますが、所得が非常に高くなると保険料負担も大きくなる傾向があります。

  • 法人:

    健康保険と厚生年金に強制加入となり、保険料は会社と従業員(役員含む)で折半します。個人の所得税・住民税を抑えつつ、厚生年金に加入することで将来の年金受給額を増やせるメリットがありますが、会社としての保険料負担は個人事業主時代より増えることが一般的です。

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3. どのタイミングで会社設立(法人化)すべきか?

個人事業主として事業を拡大し、利益も出てきた際に、「いつ法人化すべきか」は多くの経営者様が抱える最大のお悩みです。特に、個人事業主として2年経営して消費税の課税事業者になるタイミングは、法人化を検討する大きな節目となるでしょう。

ここで重要なのは、「売上が〇〇円になったら法人化」といった単純な判断基準だけでは不十分だということです。

当税理士事務所からの警告!安易な法人化の勧めにご注意を
残念ながら、一部の会計事務所や税理士の中には、会社(法人)の方が顧問料や決算料が高く設定できるという理由から、安易に法人化を勧めるケースも存在します。「とりあえず法人化した方がいい」というアドバイスには慎重になるべきです。

なぜなら、個人事業主と法人との有利・不利の判定は、想像以上に複雑だからです。所得税、法人税、住民税、事業税といった各種税金に加え、国民健康保険、国民年金、厚生年金といった社会保険料まで、所得や利益に応じて変動する項目が多岐にわたります。これらを総合的に考慮しないと、かえって税金・社会保険料の負担が増え、手元に残るキャッシュが減ってしまう可能性すらあります。

最適な法人化タイミングを見極めるには

当税理士事務所では、このような全ての税金・社会保険料を網羅的に考慮し、個人と法人でそれぞれ試算を行います。その上で、お客様の事業計画、将来の収益見込み、キャッシュフロー、個人のライフプランなどを詳細にヒアリングし、「どの時点で会社設立(法人化)すべきか」を具体的な数値に基づいてご提案します。

  • 年間所得の推移予測
  • 社会保険料の増減シミュレーション
  • 消費税の免税期間活用戦略
  • 法人の設立・維持コストと税務メリットの比較
  • 将来的な資金調達の必要性

これらの要素を複合的に分析することで、貴社にとって本当に有利なタイミングを見極め、「もっと早く相談しておけばよかった!」と後悔することのない最適な法人化をサポートします。

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まとめ:迷ったら、まずは「税理士」にご相談を

個人事業主としてスタートするか、最初から法人を設立するか、あるいは個人事業主から法人へ移行(法人成り)するタイミングは、貴社の事業の将来を左右する重要な経営判断です。

特に、所得税と法人税の有利不利消費税の免税期間を最大限に享受するための戦略、そして社会保険料の負担シミュレーションなどは、専門知識がなければ正確な判断が非常に困難です。これらの試算は金額も大きくなるため、慎重な検討が不可欠です。

当税理士事務所では、多数の個人事業主様の法人化を日々検討しており、お客様一人ひとりの状況に合わせた最適なアドバイスを提供しています。複雑な税金や社会保険の計算、設立・維持コスト、そして将来的な見通しまで、専門家がお客様の立場に立って徹底的にシミュレーションし、最適な道筋をご提案いたします。

このページをご覧になったのも何かの縁です。会社設立・法人化でお悩みの方は、ぜひ当税理士事務所へご相談ください。お困りごとやお悩みを是非お聞かせください。税理士が初回無料でご相談に乗ります。

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