【社会保険の手続き】自分でやる方法と書類の書き方|会社設立5日以内の期限に注意

会社の設立登記が完了し、晴れて「社長」としての第一歩を踏み出した、あなた。しかし、その安堵も束の間、あなたは法律で定められた、ある「重大な義務」と向き合うことになります。

それが、「社会保険」への加入手続きです。

「社会保険?国民健康保険と何が違うんだろう?」
「費用を抑えたいから、この手続き、自分でできないだろうか?」

もちろん、ご自身で手続きを行うことは可能です。この記事は、その「自分でやってみたい」と考える、意欲的な経営者様のための、手続きの全手順を網羅した、実践的なDIYガイドです。

しかし、同時に、私たちは起業支援のプロフェッショナルとして、この手続きに潜む「複雑さ」「 unforgivingな提出期限」「ミスを犯した場合の深刻なリスク」についても、包み隠さずお伝えします。この記事を最後までお読みいただくことで、あなたは、ご自身で挑戦すべきか、それとも専門家に任せるべきか、真に納得のいく、賢明な判断を下せるようになるはずです。

第1章:【基本の知識】そもそも、法人が加入する「社会保険」とは何か?

手続きの前に、まずは制度の基本を理解しましょう。法人が加入する社会保険は、主に以下の2つの制度から成り立っています。

① 健康保険

個人事業主時代に加入していた「国民健康保険」に代わる、会社の従業員(社長も含む)のための医療保険制度です。病気やケガをした際の医療費の自己負担が原則3割になる点は同じですが、法人向けの健康保険には、国民健康保険にはない、手厚い保障があります。
代表的なのが「傷病手当金」です。これは、病気やケガで連続して4日以上仕事を休んだ場合に、給与のおおよそ3分の2が、最長1年6ヶ月間にわたって支給される制度です。経営者自身の万が一の際にも、生活を支えるセーフティネットとなります。

② 厚生年金保険

すべての国民が加入する「国民年金(基礎年金)」に、上乗せして加入する公的年金制度です。個人事業主は国民年金のみですが、法人の役員・従業員は、この厚生年金にも加入します。保険料の負担は増えますが、その分、将来受け取れる年金額が、国民年金のみの場合と比較して、2階建て部分が加わるため、格段に手厚くなります。

【絶対のルール】法人の社会保険加入は「義務」です

最も重要なポイントです。株式会社や合同会社などの法人は、たとえ従業員がおらず、社長一人だけの「一人会社」であっても、法律によって社会保険への加入が強制されています。これは、「コストがかかるから入りたくない」といった、経営者の意思で選択できるものではありません。設立登記を済ませた瞬間から、あなたには、この手続きを行う「義務」が発生するのです。

第2章:【実践ガイド】社会保険の加入手続きと、書類の書き方

それでは、具体的な手続きのステップを見ていきましょう。提出先は、あなたの会社の本店所在地を管轄する「年金事務所」です。

STEP 1:「健康保険・厚生年金保険 新規適用届」の提出

まず、「私たちの会社は、社会保険の適用を受ける事業所になりました」ということを、年金事務所に届け出るための書類です。

  • 提出期限:会社設立の事実があった日から5日以内(土日祝含む)。極めてタイトな、 unforgivingな期限です。
  • 主な記載事項:事業所の名称・所在地、法人番号、事業内容などを記入します。
  • 添付書類:
    • 法人(株式会社など)の場合:登記簿謄本(履歴事項全部証明書)のコピー
    • 個人事業主(従業員5人以上で任意適用の場合):事業主の世帯全員の住民票
    設立したばかりの法人の場合は、法務局で登記簿謄本を取得してから、すぐにこの手続きを行う必要があります。

STEP 2:「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届」の提出

次に、社長であるあなた自身や、従業員一人ひとりが、「社会保険に加入する資格を得ました」ということを届け出る書類です。社長も含め、加入する従業員の人数分、この書類が必要になります。

  • 提出期限:こちらも、雇用や設立など、事実が発生した日から5日以内です。「新規適用届」と同時に提出するのが一般的です。
  • 主な記載事項:被保険者(社長・従業員)の氏名、生年月日、マイナンバー、そして最も重要な「標準報酬月額」を記入します。
  • プロの視点:「標準報酬月額」の決め方
    これは、社会保険料の計算の基礎となる、あなたの給与(役員報酬)の等級です。基本給だけでなく、通勤手当などの各種手当を含んだ月々の総支給額を基に、定められた等級表に当てはめて決定します。この金額をいくらに設定するかで、毎月の保険料負担額が直接決まるため、法人設立時の役員報酬の決定と密接に関わってきます。専門家と相談しながら、慎重に決定すべき項目です。
  • 添付書類:原則として不要ですが、60歳以上の方を雇用した場合など、特殊なケースでは添付書類が求められることがあります。

STEP 3:扶養家族がいる場合:「健康保険 被扶養者(異動)届」の提出

加入する社長や従業員に、扶養する家族(配偶者や子供など)がいる場合に、併せて提出が必要な書類です。

  • 提出期限:こちらも、事実発生から5日以内です。「資格取得届」と同時に提出します。
  • 主な記載事項:扶養する家族の氏名、生年月日、マイナンバー、続柄、そして扶養の認定理由などを記入します。
  • プロの視点:扶養の認定要件は複雑
    誰でも扶養に入れるわけではありません。「年間収入130万円未満」といった収入要件や、「同一世帯であるか」といった生計維持関係の要件など、細かなルールがあります。また、配偶者の年金の種類によっては、「国民年金第3号被保険者関係届」も併せて提出が必要です。要件の判断が難しく、添付書類(続柄を証明する住民票や、収入を証明する課税証明書など)も多岐にわたるため、専門家のアドバイスが推奨される部分です。

STEP 4:保険料の支払い手続き:「保険料口座振替納付申出書」の提出

毎月の社会保険料を、会社の銀行口座から自動で引き落としてもらうための申込書です。これを提出しておかないと、毎月、納付書で支払う手間が発生します。金融機関の確認印が必要なため、早めに準備しておきましょう。

第3章:【見落としがちな罠】従業員を雇ったら必須!「労働保険」の手続き

社会保険の手続きだけで、安心してはいけません。あなたが社長一人だけの会社なら、一旦はここまでで大丈夫です。しかし、パート・アルバイトを含め、一人でも従業員を雇用した瞬間、あなたにはもう一つ、「労働保険」の加入手続きという義務が発生します。

労働保険は、主に以下の2つから構成されます。

  • 労災保険:従業員が、仕事中や通勤中にケガや病気をした場合に、治療費や休業中の給付を行う制度です。
  • 雇用保険:従業員が、失業した場合などに、生活を支えるための給付(いわゆる失業手当)を行う制度です。

この手続きは、社会保険とは全く別で、「労働基準監督署」「ハローワーク」という、2つの異なる役所に対して、それぞれ行わなければなりません。

労働保険の加入手続き(3ステップ)

  1. 労働保険関係成立届:従業員を雇用した日の翌日から10日以内に、管轄の労働基準監督署へ提出。
  2. 雇用保険 適用事業所設置届:事業所を設置した日の翌日から10日以内に、管轄のハローワークへ提出。
  3. 雇用保険 被保険者資格取得届:従業員を雇用した月の翌月10日までに、管轄のハローワークへ提出。

このように、会社設立後、あるいは従業員雇用後は、社会保険と労働保険という、2つの全く異なる制度の、複雑で、期限の短い手続きを、複数の役所に対して、同時並行で進めなければならないのです。

第4章:もし、手続きを自分で行う場合のリスク

ここまで見てきたように、手続きは非常に複雑です。もし、あなたが多忙な本業の傍ら、これらの手続きを自分で行う場合、以下のようなリスクを覚悟する必要があります。

  • ペナルティのリスク:「5日以内」「10日以内」といった厳しい期限を守れなかった場合、法律上は罰則(懲役や罰金)も定められています。また、悪質な場合は、過去2年間に遡って、保険料と延滞金を一括で追徴される可能性もあります。
  • 従業員とのトラブルのリスク:手続きが遅れると、従業員の健康保険証の発行が遅れ、病院にかかれなくなったり、将来の年金額が減ってしまったりと、直接的な不利益を与えてしまいます。これは、従業員からの信頼を失い、深刻な労務トラブルに発展する大きな原因となります。
  • 機会損失のリスク:あなたが、これらの複雑な書類と格闘し、役所の窓口を駆けずり回っている数十時間は、本来、あなたの会社の売上を1円でも多く生み出すための、貴重な時間だったはずです。専門家に依頼する費用は、この「失われた時間(機会損失)」と比較して、本当に「高い」と言えるでしょうか。

結論:専門家との連携が、あなたの会社を「最初の危機」から守る

会社設立後の社会保険・労働保険の手続きは、多くの新米経営者が最初に直面する、時間と正確性が問われる「危機」です。

これらの手続きは、法律上、社会保険労務士(社労士)の専門分野となります。そして、私たちのような起業支援に強い税理士事務所は、必ず、信頼できる優秀な社労士と、緊密な連携体制を築いています。

あなたが、私たち荒川会計事務所を、あなたの会社の「総合的な相談窓口」としてくだされば、会社設立の登記(司法書士)、税務署への届出(税理士)、そして、今回の社会保険・労働保険の手続き(社会保険労務士)まで、あなたは一人の担当者と話すだけで、すべての専門的な手続きが、適切なタイミングで、ミスなく、自動的に完了していく、という安心感を手に入れることができます。

経営者であるあなたの仕事は、フォームの書き方を調べることではありません。あなたの事業の未来を創ることです。その貴重な時間を守るため、私たち専門家チームを、あなたの会社の「バックオフィス部門」として、ぜひご活用ください。

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