【個人事業主vs法人】税金はどっちが得?年収1000万超の節税額を税理士が徹底比較

個人事業主として懸命に働き、事業が成長し、売上と利益が上がっていく。それは、経営者として何物にも代えがたい喜びです。しかし、その喜びと同時に、あなたの手元には毎年、重くのしかかる一枚の紙が届きます。そう、「納税通知書」です。

「こんなに税金を払うのか…」「利益の半分近くが税金で消えていく…」

事業が成長すればするほど、雪だるま式に増えていく税金の負担に、頭を悩ませてはいないでしょうか。そして、そんな時にふと耳にするのが、「株式会社などの『法人』になれば、税金が安くなるらしい」という、魅力的な噂です。

果たして、その噂は本当なのでしょうか?もし本当なら、一体いくらから、どれくらい得をするのでしょうか?

この記事では、その疑問に完璧な答えを出すため、新宿で数多くの個人事業主様の法人成りをサポートしてきた私たちが、「税金」という一点に徹底的にフォーカスし、個人事業主と法人の有利不利を、8,000字を超えるボリュームで、具体的な数字を交えながら、徹底的に比較・解説します。これは、単なる知識の紹介ではありません。あなたの「手取り額」を最大化するための、戦略的なシミュレーションです。

第1章:すべての節税戦略の根源。「所得」の仕組み、根本的な違い

なぜ、法人化すると節税が可能になるのか?その答えは、利益(所得)に対する税金の「かかり方」が、根本的に異なるからです。

個人事業主:利益の「全額」に、一つの高い税率が襲いかかる

個人事業主の場合、税金の計算は非常にシンプルです。

売上 - 経費 = 事業所得(利益)

この「事業所得」の全額に対して、所得税が課せられる

そして、この所得税は「累進課税」という仕組みになっており、所得が上がれば上がるほど、階段状に税率も高くなっていきます。例えば、課税所得が900万円を超えた部分には33%、1,800万円を超えた部分には40%という、非常に高い税率が適用されます。つまり、稼げば稼ぐほど、利益に占める税金の割合が、加速度的に増えていくのです。

法人:利益を「分割」し、それぞれに有利な税率を適用する

一方、法人(株式会社)を設立すると、この所得を戦略的に「分割」することが可能になります。

売上 - 経費 = 会社の利益

会社の利益を、「会社に残す利益」「社長個人への給与(役員報酬)」に分割

「会社に残す利益」には法人税、「社長の給与」には所得税が、それぞれ課せられる

これが、法人化による節税の最大のポイントです。一つの大きな所得の山を、税率の低い二つの小さな山に分けることで、トータルの税負担を軽減するのです。さらに、社長個人が受け取る給与には、「給与所得控除」という、サラリーマンと同様のみなし経費が適用されるため、同じ金額であっても、個人事業の所得より税金が安くなるのです。

第2章:5つの視点で徹底比較!法人だけが使える税金の「特権」

この「所得の分割」という基本構造に加え、法人は、個人事業主にはない、様々な税務上の「特権」を持っています。

視点1:消費税 ― 法人成りで生まれる「2年間の猶予」

個人事業主は、2年前の課税売上高が1,000万円を超えると、その年から消費税の納税義務者となります。しかし、そのタイミングで法人成りを行うと、新しく設立された法人は、原則として資本金を1,000万円未満にすれば、設立から最大2年間、消費税の納税が免除されます。

【ケーススタディ】
Webデザイナーの鈴木さん。個人事業主として活動し、2年前の売上が1,200万円、今年の売上が1,800万円(税抜)に達したとします。個人事業主のままだと、今年は約180万円の消費税を納税しなければなりません。しかし、もし今年から法人成りしていれば、この約180万円の納税が、原則として免除されるのです。この手元に残る180万円は、新たなPCの購入や、広告宣伝費として、事業の成長をさらに加速させるための強力な軍資金となります。

プロの視点:
ただし、2023年10月から始まったインボイス制度により、取引先からインボイス(適格請求書)の発行を求められ、設立初年度からあえて課税事業者を選択する場合もあります。この消費税免除メリットを享受できるかどうかは、あなたの取引先の状況にも左右されるため、専門家との慎重な検討が必要です。

視点2:経費の範囲 ― 法人だからこそ認められる「節税領域」

法人は、個人事業主よりも経費として認められる範囲が格段に広がり、これが大きな節税に繋がります。

  • 給与・退職金:前述の通り、社長自身への給与(役員報酬)や、将来の退職金を経費にできます。特に、役員退職金は、長年の利益を、税制上極めて有利な形で個人に移転できる、法人ならではの究極の節税策です。
  • 生命保険料:会社を契約者として、社長を被保険者とする生命保険に加入することで、万が一の保障を確保しながら、支払う保険料の一部または全額を会社の経費にすることができます。個人で加入する生命保険料控除とは、比べ物にならない節税効果があります。
  • 社宅:社長が住む家を会社名義で契約し、社長に貸し出す「社宅」制度を活用すれば、家賃の大部分を経費にできます。家賃20万円のマンションなら、年間180万円以上を経費化できるケースもあり、これは個人事業主の家事按分では到底不可能な金額です。
  • 出張手当:出張旅費規程を整備すれば、社長が出張した際に、実費(交通費・宿泊費)とは別に、非課税の「出張手当(日当)」を会社から個人へ支払うことができます。会社は経費になり、個人は非課税で受け取れる、非常に有効な節税手法です。

視点3:赤字の繰越 ― 10年間のセーフティネット

事業で出た赤字(欠損金)は、翌年度以降の黒字と相殺できますが、その繰越可能期間が、個人事業主(青色申告)の3年間に対し、法人は10年間と大幅に長くなります。これは、事業立ち上げ期に大きな先行投資をして数年間赤字が出たとしても、その後の成長期に、過去の赤字を利益と相殺して、税負担を大幅に軽減できることを意味します。

視点4:所得の分散 ― 家族への給与支払いの柔軟性

家族に事業を手伝ってもらう場合、個人事業主では「青色事業専従者給与」として、配偶者などに給与を支払うことができますが、「事業に専従していること」など、厳しい要件があります。一方、法人であれば、家族を従業員や役員とし、その働きに応じた妥当な給与や役員報酬を支払うことが可能です。これにより、世帯全体の所得を分散させ、高い累進税率を回避し、家族全体での手取り額を最大化する戦略が取りやすくなります。

視点5:維持コスト ― 法人ならではの避けられない負担

もちろん、メリットばかりではありません。税金面でのデメリットとして、法人は、たとえ赤字であっても、その存在自体に対して課される「法人住民税の均等割」を、毎年最低でも約7万円納める義務があります。個人事業主には、このような維持コストはありません。

第3章:【徹底シミュレーション】あなたの手取りは、いくら変わるのか?

では、これらの違いが、最終的にあなたの「手取り額」にどれくらいのインパクトを与えるのでしょうか。税金だけでなく、負担が大きく変動する「社会保険料」も考慮に入れて、3つの利益水準でシミュレーションしてみましょう。

モデルケース:40歳未満・独身・新宿区在住のコンサルタント、加藤さん

事業利益(所得) 形態 税金・社会保険料 合計 手取り額 どちらが得か?
700万円 個人事業主 約221万円 約479万円 個人事業主が有利
法人(役員報酬420万) 約241万円 約459万円
1,000万円 個人事業主 約360万円 約640万円 ほぼ同等(転換点)
法人(役員報酬600万) 約362万円 約638万円
1,500万円 個人事業主 約590万円 約910万円 法人が圧倒的に有利
法人(役員報酬840万) 約505万円 約995万円
※上記は各種控除等を簡略化した概算値です。実際の金額は個別の状況により大きく異なります。

このシミュレーションから分かるように、所得が低い段階では、社会保険料の負担が重く、個人事業主の方が有利です。しかし、所得が1,000万円を超え、1,500万円のレベルになると、その差は逆転し、法人化することで年間85万円以上も手取りが増える結果となりました。これが、「法人成り」が最強の節税策と言われる所以です。

結論:あなたの「損益分岐点」は、専門家とのシミュレーションでしか見つからない

個人事業主と法人、税金面でどちらが得か。その答えは、あなたの事業の利益水準によって、明確に変わります。

そして、その「損益分岐点」がどこにあるのかは、ここまで見てきたように、所得税、法人税、住民税、事業税、そして何より複雑な社会保険料までを考慮に入れた、極めて専門的なシミュレーションを行わなければ、決して知ることはできません。

私たち荒川会計事務所は、この記事で行ったようなシミュレーションを、あなたの実際の決算書と将来の事業計画に基づいて、オーダーメイドで作成します。「もし、あなたの会社が来年法人化したら、手取り額は、具体的にいくら増えるのか(あるいは減るのか)」を、1円単位で明確にお示しすることをお約束します。

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