【法人成りのタイミング】個人事業主から会社設立へ!ベストな時期を税理士が診断

大切に育ててきたあなたの事業が、力強く成長し、個人事業主という枠では手狭に感じられるステージに到達されたこと、心よりお祝い申し上げます。

その成功の証として、多くの経営者様が次のステップとして意識するのが「法人成り」、すなわち株式会社などの法人を設立することです。

それは、小さな鉢で育った若木を、より大きく、より豊かな実りを得るために、広大な畑へと植え替えるようなもの。しかし、この「植え替え」のタイミングは、極めて重要です。早すぎれば、新しい環境の負担に耐えられないかもしれません。遅すぎれば、得られたはずの大きな成長の機会や、多くの節税メリットを逃してしまいます。

「いったい、いつが私のビジネスにとって最高のタイミングなのだろう?」

この記事では、新宿で数多くの個人事業主様の法人成りをサポートしてきた私たちが、その重要な経営判断を下すための「判断基準」を、網羅的かつ具体的に解説する「法人成り・総合診断ガイド」です。

判断基準①【税金】:最も有名な「利益800万円」説の真相

法人成りを検討する最もポピュラーなきっかけが「税金の負担」です。巷でよく言われる2つの「経験則」について、その本当の意味を深く理解しましょう。

「利益(所得)が800万円」を超えたら、なぜ有利なのか?

これは、個人事業主にかかる「所得税」と、法人にかかる「法人税」の税率構造の違いに起因します。

  • 所得税(個人):利益が大きくなるほど税率も高くなる「累進課税」です。所得が900万円を超えると、税率は33%にも達します。
  • 法人税(法人):利益が800万円以下の部分は15%、800万円を超える部分は23.2%と、比較的安定した税率です。

つまり、所得が800万円~900万円あたりを境に、所得税率が法人税率を上回る「逆転現象」が起こり始めるのです。これが、「利益800万円」がひとつの目安と言われる最大の理由です。

ただし、話はそう単純ではありません!
このシミュレーションには、法人化することで新たに発生するコストが考慮されていません。
社会保険料の負担増:法人になると、たとえ社長一人でも社会保険への加入が義務付けられ、個人負担・会社負担を合わせると大きなコスト増になります。
税理士報酬の増加:法人の決算・申告は個人より複雑なため、一般的に税理士への報酬も上がります。
法人住民税の均等割:法人は、たとえ赤字でも、最低でも年間約7万円の法人住民税を納める義務があります。

これらの追加コストを考慮せずに法人化すると、節税額よりも支出が増えてしまい、かえって手取りが減ってしまう「逆ザヤ現象」が起こり得ます。本当の損益分岐点を知るには、社会保険料まで含めた詳細なシミュレーションが不可欠です。

「2年前の売上が1,000万円」を超えたら、なぜ有利なのか?

この基準は「消費税」に関する、非常に強力な節税テクニックです。

  • 個人事業主は、2年前の課税売上高が1,000万円を超えると、その年から消費税の納税義務が発生します(課税事業者)。
  • しかし、ここで法人成りすると、法律上は「新しい会社」が誕生したことになります。新設法人は、原則として設立から最大2年間、消費税の納税が免除されるのです。

つまり、課税事業者になるタイミングで法人成りすることで、最大2年間、消費税の納税を合法的に先延ばしにできる可能性があります。これは、資金繰りにおいて絶大な効果を発揮する、プロの視点での重要な判断基準です。(インボイス制度への登録状況など、個別の状況により判断は異なります)

判断基準②【事業戦略】:税金以上に重要な、ビジネスの成長に関わるタイミング

法人成りのメリットは、節税だけではありません。時には、税金の損得勘定を度外視してでも、事業を次のステージへ進めるために法人化を決断すべきタイミングがあります。

タイミング1:大きな取引先との契約や、公的事業への参入を目指す時

残念ながら、日本のビジネス社会では、未だに「個人事業主」というだけで取引に二の足を踏む大企業が存在します。社会的信用度の観点から、取引相手を「法人のみ」に限定しているケースは少なくありません。また、国や自治体の公的な事業の入札などは、法であることが参加条件となっていることがほとんどです。大きなビジネスチャンスを掴むために、法人格が必要になるタイミングです。

タイミング2:資金調達(融資)で、より大きな勝負に出る時

個人事業主でも、日本政策金融公庫などから融資を受けることは可能です。しかし、事業が拡大し、数千万円単位のより大きな設備投資や運転資金が必要になった場合、法人の方が、民間金融機関からの融資審査において有利になる傾向があります。個人と法人の資産が明確に分離されているため、金融機関が経営状態を把握しやすく、信頼性が高まるためです。

タイミング3:優秀な人材を採用し、チームで事業を拡大する時

あなたが「この人と一緒に働きたい」と思う優秀な人材は、あなたの会社をどう見るでしょうか?多くの場合、求職者は「株式会社」という看板が持つ安定性や、充実した社会保険(厚生年金・健康保険)を重視します。チームで事業をスケールさせていくと決めたなら、優秀な人材を惹きつけ、安心して働いてもらうための「器」として、法人化は不可欠なステップです。

判断基準③【リスク管理】:あなたと、あなたの家族の未来を守るために

これは、見落とされがちですが、精神的に最も重要な判断基準かもしれません。

個人事業主は、事業上の責任がすべて個人に及ぶ「無限責任」です。万が一、事業に失敗して多額の負債を抱えた場合、その返済義務は、あなたの個人的な資産(自宅や預貯金など)にまで及びます。

一方、株式会社の株主は、原則として、自分が出資した金額の範囲内でのみ責任を負う「有限責任」です。法人化することで、事業のリスクと、あなた個人の生活との間に、法的な「防火壁」を築くことができるのです。(※金融機関からの借入で経営者自身が連帯保証人になる場合など、例外はあります)

事業が大きくなり、取引額や借入額が増えるほど、この「有限責任」のメリットは、あなたとあなたの家族の生活を守るための重要なセーフティネットとなります。

結論:最適なタイミングは、オーダーメイドのシミュレーションでしか見つからない

ここまで見てきたように、法人成りの最適なタイミングは、「利益が〇〇万円を超えたから」というような、単純なものではありません。それは、

  • あなたの事業の「税金」と「社会保険料」の複雑なバランス
  • あなたの事業の「将来の成長戦略」
  • あなたが許容できる「経営リスク」の大きさ

これら3つの要素を、総合的に勘案して下すべき、極めて重要な経営判断なのです。

私たち荒川会計事務所は、単に手続きを代行するだけではありません。あなたの現状の決算書と、将来の事業計画をお伺いし、法人化した場合の具体的な納税額・社会保険料・手取り額を、1円単位で詳細にシミュレーションします。その上で、税務・財務のプロフェッショナルとして、そして起業支援の専門家として、あなたの事業にとっての「最高のタイミング」を、共に考え、ご提案します。

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