「手元に、個人として借りたお金(住宅ローン、カードローンなど)がある。これを設立したばかりの会社の運転資金や資本金に回せたら、どんなに助かるだろう…」
会社の資金繰りを考える経営者様であれば、一度はこのような考えが頭をよぎるかもしれません。しかし、その一見すると「近道」や「裏ワザ」に見える選択は、あなたの会社とあなた自身の未来を、深刻なリスクに晒す「危険な罠」である可能性が極めて高いのです。
資金調達のルールを正しく理解しないまま安易な行動を取ると、最悪の場合、借入の一括返済を求められ、事業の継続が不可能になることさえあります。
この記事では、新宿で数多くの企業の財務をサポートしてきた私たちが、なぜ個人の借入を会社の資金にすることが原則として許されないのか、その理由と深刻なリスクを徹底的に解説します。そして、あなたが本当に取るべき、安全で正しい「会社としての」資金調達の道筋を、明確にお示しします。
大原則:「資金使途」の契約が、すべてを決める
この問題を理解する上で、最も重要なキーワードが「資金使途(しきんしと)」です。これは、融資の契約を結ぶ際に必ず定められる、「借りたお金を、何のために使って良いか」というルールのことです。そして、あなたが個人として受けている融資は、その資金使途によって大きく2種類に分けられます。
ケース1:資金使途が「個人消費」に限られるローン(住宅・自動車・教育ローンなど)
これらのローンは、契約書に「事業性資金への利用を禁止する」と明確に記載されているのが一般的です。金融機関は、あなたの「マイホーム購入」や「自動車購入」という目的を審査し、その範囲で返済可能だと判断してお金を貸しています。これを事業のために使うことは、明確な契約違反(資金使途違反)となります。
ケース2:個人事業主として受けた「事業性」ローン(日本政策金融公庫など)
「個人事業主の時に、事業用として借りたお金なら、自分が設立した会社に使っても良いのでは?」と考える方もいらっしゃいます。しかし、これも原則としてNGです。なぜなら、金融機関は、あくまで「個人事業主である、あなたの事業」の事業計画書や決算書を審査して融資を実行したからです。
たとえあなたが100%株主の会社であっても、法律上、「個人事業主のあなた」と「あなたの会社(法人)」は、全くの別人格です。したがって、個人事業主として借りたお金を、法人格である会社に移す行為は、「申請時とは違う事業に資金を流用した」と見なされ、これもまた資金使途違反に該当するのです。
「資金使途違反」が発覚した場合に起こる、3つの深刻な結末
「バレなければ大丈夫だろう」という考えは、あまりにも危険です。金融機関は、決算書のチェックや、あなたの口座の動きなどから、資金使途違反を察知するノウハウを持っています。そして、一度発覚してしまえば、以下のような深刻な事態を招きます。
結末1:借入金の一括返済を求められる
これが最も一般的で、最も壊滅的な結末です。金融機関は、契約違反を理由に、残っている借入金の全額を、直ちに一括で返済するよう要求する権利を持っています。まだ事業が軌道に乗っていない段階でこれを要求されれば、対応できる会社はほとんどなく、倒産に直結することになります。
結末2:金融機関のブラックリストに載り、将来の融資が絶望的になる
資金使途違反という重大な契約違反を犯した事実は、あなたの信用情報に深く刻まれます。その金融機関から、二度とお金を借りることはできなくなるでしょう。さらに、その情報が他の金融機関にも共有される可能性があり、あなたの会社の未来の成長に必要な、あらゆる資金調達の道が閉ざされてしまう危険性があります。
結末3:悪質な場合は「詐欺罪」に問われるリスクも
極めて悪質なケース、例えば、最初から事業資金に使うことを隠して、偽りの目的で融資を申し込んだと判断された場合、単なる契約違反に留まらず、金融機関を騙してお金を借りたとして「詐欺罪」に問われる可能性もゼロではありません。
例外?「使途自由なローン(カードローン等)」という危険な誘惑
では、消費者金融のカードローンや、銀行のフリーローンのように、資金使途が原則として「自由」なローンなら問題ないのでしょうか?
確かに、契約上は事業性資金への利用を明確に禁止していないローンも存在します。しかし、これを会社の資金として安易に利用することは、別の意味で、あなたの会社を破滅に導く危険な選択です。
- 比較にならないほどの高金利
日本政策金融公庫の創業融資が年利2~3%程度であるのに対し、カードローンの金利は年利15%~18%にも達します。これは、事業が生み出す貴重な利益を、ただ利息の支払いで失い続けることを意味し、健全な経営を著しく阻害します。 - 会社の信用力を著しく損なう
会社の代表者が、高金利のカードローンを多用しているという事実は、将来、本格的な事業融資を受けようとする際に、金融機関から「この経営者は、資金計画が非常に甘い」「よほど資金繰りに困っているのではないか」という、極めてネガティブな評価を受ける原因となります。正しい融資への道が、遠のいてしまうのです。
結論として、使途自由なローンを事業資金に充てるのは、燃え盛る火の中に、ガソリンを注ぎ込むような行為に等しいと言えるでしょう。
【王道】本当に取るべき、安全で正しい資金調達の道筋
ここまで、やってはいけないことの危険性を解説してきました。では、本当に取るべき正しい道とは何でしょうか。それは、非常にシンプルです。
個人ではなく、「会社」として、
事業のための「事業性融資」を、
正々堂々と申し込むこと。
「でも、設立したばかりで実績のない会社に、お金を貸してくれるところなんてあるの?」
はい、あります。それこそが、私たちが一貫してお勧めしている、日本政策金融公庫の「新創業融資制度」や、自治体の「制度融資」なのです。これらの制度は、まさにあなたのような、実績はないが、情熱と優れた事業計画を持つ起業家を支援するために存在しています。
低金利で、無担保・無保証が原則。そして何より、会社の名前で借りた、クリーンで正当な資金です。この資金は、あなたの会社の信用となり、未来のさらなる成長への礎となります。
結論:危険な「近道」を探すより、安全な「王道」を専門家と歩む
個人の借入を会社の資金に流用するという考えは、一見すると目の前の問題を解決してくれる「近道」のように見えるかもしれません。しかし、その先にあるのは、一括返済や信用の失墜という、事業の継続を不可能にする「行き止まり」です。
あなたが本当に問うべきは、「どうやって個人の借入を会社に使おうか?」ではありません。
「どうすれば、私の会社が、自身の力で、正々堂々と融資を受けられるか?」です。
私たち荒川会計事務所は、その問いに対する、あなたの会社だけの最適解を導き出すプロフェッショナルです。危険な道に迷い込む前に、まずは私たちにご相談ください。あなたの会社のための、安全で、力強い資金調達戦略を、私たちが共に築き上げます。
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