【会社設立前の準備リスト決定版】登記前に決めるべき9つのこと|創業融資に強い税理士が徹底解説

家を建てる時、いきなり基礎工事から始める人はいません。まず、どのような間取りにするか、予算はいくらか、どの土地に建てるかといった、綿密な「設計」から始めます。この設計の質が、その後の住み心地や家の寿命を大きく左右することは、誰もが知っています。

実は、会社設立もこれと全く同じです。

登記申請という「手続き」の前に、会社の根幹をなす様々な重要事項を決定するという「設計」のフェーズがあります。この設計段階での一つ一つの意思決定が、あなたの会社の将来の成長性、資金調達力、そして税負担の大きさにまで、直接的な影響を及ぼすのです。

この記事は、単なる「準備リスト」ではありません。新宿で数多くのスタートアップの門出を支援してきた、創業融資に強い私たち税理士事務所が、あなたが会社設立という重要な「設計」で失敗しないための「究極の準備ガイド」です。設立前に決めるべき9つの各項目について、法務・税務の基本ルールはもちろんのこと、「金融機関や取引先からどう見られるか」「どうすれば創業融資で有利になるか」といった、専門家でなければ語れない戦略的視点をふんだんに盛り込み、徹底的に解説していきます。

さあ、私たちと一緒に、あなたの会社の強固な土台となる「最高の設計図」を描き始めましょう。

【究極のチェックリスト】会社設立前に決めるべき9つの重要事項

まず、会社設立の登記申請を行う前に、最低限決めておくべき9つの重要事項の全体像を確認しましょう。これらは個別のパズルのピースのようで、実はすべてが密接に関連し合っています。

  1. 会社名(商号) - あなたのビジネスの「顔」
  2. 事業目的 - 会社の「活動範囲」と「専門性」
  3. 本店所在地 - ビジネスの「拠点」
  4. 資本金 - 会社の「体力」と「信用」の源泉
  5. 発起人・役員 - 会社を「動かす人」
  6. 事業年度(決算期) - 会社の「会計サイクル」
  7. 会社の印鑑 - 法的な「しるし」
  8. 会社設立費用 - 船出のための「準備資金」
  9. 専門家(パートナー) - 航海を共にする「羅針盤」

それでは、一つずつ具体的に、そして深く掘り下げて見ていきましょう。

【準備1】会社名(商号)- あなたのビジネスの「顔」を決める

会社名は、あなたの事業の第一印象を決める重要な要素です。法的なルールを守りつつ、ビジネスの成功に繋がる名前を考えましょう。

  • 法務上のルール
    ・必ず「株式会社」や「合同会社」といった会社の種類を名前の前か後ろに入れる必要があります(前株・後株)。
    ・使用できる文字は、漢字、ひらがな、カタカナ、アルファベット、アラビア数字、そして一部の記号(「&」「’」「,」「-」「.」「・」)です。
    ・有名な大企業の名前と酷似していたり、「銀行」や「信託」など、特定の業種でしか使えない文字を入れたりすることはできません。
  • マーケティングの視点
    覚えやすく、発音しやすく、事業内容がイメージできる名前が理想です。また、会社のウェブサイトで使う「ドメイン(.comや.co.jpなど)」が取得可能かどうかも、事前に必ず確認しておきましょう。将来のブランド展開を考えるなら、弁理士に相談して商標登録を検討するのも一つの手です。
  • 創業融資・税務の視点
    意外と見落としがちなのが、金融機関や税務署、取引先といったステークホルダーからの見え方です。あまりに奇抜すぎる名前や、個人名のような商号、事業内容と全く関係のない商号は、「事業の継続性に不安があるのでは?」と無用な警戒心を抱かせる可能性があります。シンプルでも、誠実さや信頼性が感じられる商号を心がけることが、円滑な事業運営の第一歩となります。

【準備2】事業目的 - 会社の「活動範囲」と「専門性」を明確にする

事業目的は、定款に記載される「その会社が何をする会社なのか」を定義する、極めて重要な項目です。

  • なぜ重要か?
    会社は、定款に記載された事業目的の範囲内でしか事業活動を行うことができません。ここに記載がない事業を始めてしまうと、定款違反となる可能性があります。
  • 創業融資・許認可の視点(最重要!)
    創業融資の審査において、金融機関の担当者は定款の事業目的と事業計画書の内容を照らし合わせ、「この会社が、何を専門として収益を上げていくのか」を厳しくチェックします。事業目的が多すぎたり、一貫性がなかったりすると、「何屋かわからない」「事業に集中できないのでは?」と判断され、融資に悪影響を及ぼすことがあります。
    さらに、建設業、飲食業、人材派遣業、古物商、不動産業など、事業を行うために国や都道府県の許認可が必要な業種では、定款の事業目的に法律で定められた特定の文言が正確に記載されていないと、そもそも許認可が下りません。例えば、人材派遣業を行いたい場合、「労働者派遣事業」という文言が必須です。これを入れ忘れると、設立後に定款変更(数万円の費用と手間がかかる)が必要になってしまいます。
  • プロの視点:未来を見据えた書き方のコツ
    メインとなる事業を明確にした上で、将来的に展開する可能性がある関連事業もいくつか記載しておくのが定石です。例えば、Web制作会社であれば、「Webサイトの企画、制作、保守及びコンサルティング」を主軸としつつ、「インターネット広告代理店業」「各種デザイン業務」なども加えておくと、事業の拡大に柔軟に対応できます。最後に「前各号に附帯関連する一切の事業」という一文(バスケット条項)を入れておくことも忘れないようにしましょう。

【準備3】本店所在地 - ビジネスの「拠点」を定める

本店所在地は、納税地を決定し、会社の公式な住所となる場所です。選択肢はいくつかあり、それぞれにメリット・デメリットがあります。

選択肢 メリット デメリット・注意点
自宅 ・家賃が不要でコストを抑えられる
・通勤時間がない
・プライバシーの問題
・社会的信用が低い場合がある
・賃貸契約で法人登記が禁止されている場合がある
賃貸オフィス ・社会的信用が高い
・事業スペースを確保できる
・敷金、礼金、家賃などコストが高い
・契約審査がある
バーチャルオフィス ・都心の一等地住所を安価に借りられる
・郵便物転送サービスなどがある
・特定の許認可が取得できない
・融資審査で不利になる場合がある
・銀行口座開設の審査が厳しくなる傾向
  • 創業融資・許認可の視点
    ここでも、融資と許認可の視点が重要になります。人材派遣業、古物商、士業など、事業を行うための専用スペースが法律で求められる業種では、バーチャルオフィスでの許認可取得はできません。また、創業融資の審査では、事業の実態がどこにあるかを確認されるため、バーチャルオフィスを本店所在地とする場合は、実際の作業場所や事業の具体性について、より詳細な説明が求められる傾向にあります。
  • 税務の視点
    自宅を本店所在地にする場合、家賃や水道光熱費、通信費の一部を会社の経費として計上できます(これを「家事按分」といいます)。事業で使用している面積や時間など、合理的な基準で按分する必要がありますが、これは大きな節税メリットになります。具体的な按分比率については、税理士に相談するのが最も安全です。

【準備4】資本金 - 会社の「体力」と「信用」の源泉

「資本金はいくらにすればいいですか?」これは、私たちが最も多く受ける質問の一つであり、会社の未来を左右する極めて重要な決定事項です。

  • 法律と現実:「1円起業」の落とし穴
    現在の会社法では、資本金1円から株式会社を設立できます。しかし、創業支援のプロとして断言します。「1円起業」は絶対に避けるべきです。 なぜなら、資本金は単なる設立要件ではなく、「会社の初期体力(当面の運転資金)」であり、対外的な「信用力の証」だからです。資本金1円の会社と、誰が安心して取引をしてくれるでしょうか。融資を受けようにも、そもそも事業を継続する意思があるのか疑われてしまいます。
  • 創業融資の視点:資本金は「自己資金」そのもの
    創業融資を成功させる上で、最も重要な要素の一つが「自己資金」です。金融機関は、「起業のために、どれだけ自分自身でリスクを取り、準備してきたか」という本気度を見ています。そして、資本金は、その自己資金を客観的に証明する最も強力な証拠となります。日本政策金融公庫などの創業融資では、融資希望額の1/10程度の自己資金が要件とされることが多いですが、実際には多ければ多いほど審査は有利になります。例えば、500万円の融資を受けたいのであれば、最低でも100万円~150万円程度の資本金(自己資金)を用意しておくのが理想です。一時的に親族から借りるなどした「見せ金」は、通帳の履歴などから簡単に見破られ、一発で信用を失うので絶対にやめましょう。
  • 税務の視点:1,000万円の壁
    税務上、資本金の額には大きな分岐点があります。それが「1,000万円」です。資本金を1,000万円未満に設定することで、設立から最大2年間、消費税の納税が免除されるという非常に大きな節税メリットがあります。特別な理由がない限り、資本金は1,000万円未満に抑えるのが賢明です。
  • プロの視点:最適な資本金額の決め方
    結論として、資本金は「初期の運転資金(最低でも3~6ヶ月分) + 創業融資で求められる自己資金額 + 許認可の要件額」を総合的に考慮し、かつ1,000万円未満の範囲で決定すべきです。この複雑な方程式の最適解を導き出すには、税務と融資の両方に精通した税理士のアドバイスが不可欠です。

【準備5】発起人・役員 - 会社を「動かす人」を決める

会社の所有者(株主)と経営者(取締役)を誰にするかを決めます。

  • 用語の整理
    ・発起人:会社設立を企画し、資本金を出す人。設立後は「株主」になります。
    ・株主:会社のオーナー。会社の重要事項を決定する権利を持ちます。
    ・取締役(役員):株主から会社の経営を任された人。
  • プロの視点:意思決定のルール作り
    友人など複数人で起業する場合、出資比率(株式の保有割合)が経営の主導権を決めます。安易に株式を均等に分けると、将来意見が対立した際に経営が停滞する「デッドロック」状態に陥るリスクがあります。誰が最終的な意思決定権を持つのか、創業メンバー間で十分に話し合い、定款や株主間契約でルールを定めておくことが、将来のトラブルを防ぎます。

【準備6】事業年度(決算期)- 会社の「会計サイクル」を決める

事業年度とは、会社の利益を計算するための期間のことで、自由に決めることができます。この決算期の決め方一つで、納税額や手間が大きく変わってきます。

  • プロが教える戦略的な決め方
    ① 繁忙期を避ける:決算申告の準備には1~2ヶ月かかります。会社の繁忙期と決算期が重なると、本業にも決算作業にも支障をきたします。繁忙期の直後などに設定するのがお勧めです。
    ② 資金繰りを考慮する:法人税の納税は、決算日から2ヶ月後です。売上が最も大きくなる月の2~3ヶ月後を決算月に設定すれば、手元資金が潤沢な時期に納税のタイミングを迎えることができます。
    ③ 消費税の免税期間を最大化する:設立第1期は、設立日から決算日までです。例えば、4月1日に設立する場合、決算月を翌年3月にすれば、第1期は丸12ヶ月となり、消費税の免税期間(最大2年)を最大限に活用できます。

【準備7~9】印鑑、費用、そして専門家という名の羅針盤

最後に、物理的な準備と、最も重要なパートナー選びについてです。

  • 会社の印鑑:法務局に登録する「代表者印(法人実印)」、銀行取引に使う「銀行印」、請求書や見積書に押す「角印(社印)」の3点セットは最低限用意しましょう。セキュリティ上、代表者印と銀行印は別のものを作成するのが鉄則です。
  • 会社設立費用:資本金とは別に、設立手続きのための実費(株式会社なら約20~25万円)が必要です。この設立費用も、創業融資の対象経費に含めて借り入れが可能であることを覚えておきましょう。
  • 専門家(パートナー):ここまでお読みいただき、お気づきかと思います。これらの準備項目は、すべてが「税金」と「融資」に密接に関連しています。これらすべての要素を俯瞰し、あなたの会社にとっての最適解を導き出せるのは、創業支援と融資に強い税理士以外にありえません。

まとめ:最高の「設計図」が、あなたの会社の未来を創る

会社設立前の準備は、単なる作業ではありません。それは、あなたの会社の未来を描く、最も創造的で、最も重要な「設計」作業です。

この設計段階で、専門家の視点を取り入れるかどうかで、あなたの会社のスタートラインは大きく変わります。融資を受けられる額、支払う税金の額、そして事業の成長スピードそのものが変わってくるのです。

私たち新宿の税理士荒川会計事務所は、あなたの会社の最初の設計者であり、航海を共にする羅針盤となる準備ができています。あなたが思い描くビジネスの成功というゴールまで、最短距離で、そして最も安全な航路でご案内します。

まずは、あなたの夢と、この準備リストで疑問に思ったことを、無料相談でお聞かせください。

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