会社の設立登記を終え、いよいよ事業を本格化させるステージ。自宅での作業から一歩進み、「会社のオフィス」を構えることは、多くの起業家にとって大きな節目であり、夢の実現に向けた具体的な一歩です。特に、ビジネスの活気あふれる新宿にオフィスを構えることは、事業の成長を加速させる大きなチャンスを秘めています。
しかし、「最初のオフィス選び」は、会社の未来を左右する極めて重要な「投資判断」でもあります。月々の家賃という目に見えるコストだけでなく、敷金・礼金といった初期費用、内装工事やインフラ整備の費用、そして退去時に発生する原状回復費用まで、その総額は設立間もない会社のキャッシュフローに重くのしかかります。
このページでは、新宿で数多くの企業の財務を見てきた私達税理士が、単なる物件紹介サイトとは全く異なる視点、すなわち「財務」と「事業戦略」の観点から、失敗しないオフィス選びの方法を徹底的に解説します。伝統的な「賃貸オフィス」から、機動的な「レンタルオフィス」、そして新たな可能性を秘めた「コワーキングスペース」まで、それぞれのメリット・デメリットと、見落としがちなコストの罠を解き明かしていきます。
第1章:賃貸オフィス – 究極の自由度と信用の獲得
事業用のオフィスビルの一室などを借りる、最もトラディショナルな選択肢です。企業の「城」を築き、腰を据えて事業を拡大していく覚悟がある場合に最適です。
どんな人におすすめか?
- 設立当初から複数名の従業員を雇用する計画がある。
- 士業、人材紹介業、古物商など、事業の許認可で独立した事務所スペースが必須である。
- 顧客情報など、高度なセキュリティやプライバシーが求められる事業を行っている。
- 独自の企業文化を反映した、オリジナリティのあるオフィス空間を構築したい。
【最重要】コストの罠と契約の注意点 – 見積もるべき費用のすべて
賃貸オフィスの契約で最も注意すべきは、月額賃料以外にかかる、莫大な付随費用です。これらを正確に把握しないまま契約すると、資金計画はあっという間に破綻します。
初期費用(イニシャルコスト)の全貌
一般的に、月額賃料の6ヶ月~12ヶ月分の初期費用がかかると言われています。新宿で月額30万円のオフィスを借りるなら、初期費用として180万円~360万円程度の現金が必要になる計算です。
- 敷金・保証金:家賃滞納や退去時の原状回復費用のための担保金。賃料の6~10ヶ月分が相場です。退去時に一部が返還されます。
- 礼金:大家さんへのお礼として支払うお金で、返還されません。賃料の1~2ヶ月分が相場。
- 仲介手数料:不動産会社に支払う手数料。賃料の1ヶ月分+消費税が一般的です。
- 前家賃:契約月の家賃を前払いします。
- 火災保険料:加入が義務付けられていることがほとんどです。(例:2年間で2万円程度)
- 保証会社利用料:連帯保証人の代わりに利用する保証会社への費用。賃料の0.5~1ヶ月分が相場です。
見えざるコスト(隠れコスト)
契約時の費用だけで終わりではありません。事業を開始できる状態にするまでには、さらに多くのコストが発生します。
- 内装工事・インフラ整備費:賃貸オフィスは、何もない「スケルトン」状態で引き渡されることも少なくありません。会議室を作るためのパーテーション設置、電話回線やインターネット回線の引き込み工事、電源の増設など、事業内容によっては数百万円単位の費用がかかることもあります。
- 原状回復費用:退去時には、借りた時の状態に戻す「原状回復」が義務付けられています。「お金をかけて内装を作り、お金をかけてそれを壊す」のです。これも大きな負担となり、敷金・保証金から差し引かれますが、超える場合は追加で請求されます。
- 更新料:通常2年ごとに契約を更新する際に、賃料の1ヶ月分程度の更新料が発生します。
税理士視点:どこまで経費になるのか?
賃貸オフィスにかかる費用のうち、月々の家賃や共益費、水道光熱費などはもちろん全額経費(損金)になります。仲介手数料や礼金、更新料も支払った期の経費です。一方、敷金・保証金は、退去時に返還される性質のものなので、支払った時点では経費にならず「資産」として計上します。また、内装工事や高額なオフィス家具は、数年にわたって経費化する「減価償却」という会計処理が必要です。
第2章:レンタルオフィス(サービスオフィス)– スピードと効率性の追求
賃貸借契約を結ぶのではなく、オフィススペースの「利用権」を購入するイメージです。個室スペースを借りつつ、会議室や受付などの共用サービスを利用できる形態で、特に少人数のスタートアップに人気です。
どんな人におすすめか?
- 1~5名程度の少人数で事業をスタートする。
- 敷金・礼金などの初期費用を極力抑え、すぐにでも事業を開始したい。
- 新宿の一等地など、好立地な住所で法人登記したい。
- 受付や電話代行など、秘書的なサービスを活用して業務を効率化したい。
メリットとデメリット
- メリット:
- 圧倒的なスピードと低初期費用:敷金・礼金が不要な場合が多く、保証金も賃料の1~3ヶ月分程度。机や椅子、ネット環境も完備されているため、契約後すぐに業務を開始できます。
- 付帯サービスの活用:法人登記可能な住所、郵便物受取代行、電話応対サービス、共用会議室の利用など、トータルで考えるとコストパフォーマンスが高い場合があります。
- デメリット:
- プライバシーとセキュリティ:壁が薄かったり、簡易的なパーテーションで区切られていたりする施設もあり、音漏れやセキュリティ面に注意が必要です。
- 利用規約の制約:24時間利用できない、来客対応のルールが厳しいなど、施設ごとのルールに縛られます。
- 拡張性の限界:従業員が増えた際に、同じ施設内でより広い部屋に移動できるか、事前に確認が必要です。
第3章:コワーキングスペース – コストとコミュニティの両立
フリーランスや他の起業家とオープンスペースを共有する形態。「法人登記」や「住所利用」が可能なプランを提供している施設が、新宿エリアにも急増しています。
どんな人におすすめか?
- 主に一人、またはリモートワーク中心のチームで、コストを最小限に抑えたい。
- 異業種の起業家とのネットワークを築き、新たなビジネスチャンスを探したい。
- 自宅では集中できないが、固定のオフィスはまだ必要ない。
メリットとデメリット
- メリット:
- 圧倒的な低コストと柔軟性:月額数万円から利用でき、1ヶ月単位で契約できるなど、プランの柔軟性が高いです。
- コミュニティとネットワーキング:最大の魅力は、他の利用者との交流です。情報交換から、協業、顧客紹介に繋がるケースも少なくありません。
- デメリット:
- 集中と機密性:オープンスペースが基本のため、集中しにくい、オンライン会議がしにくい、機密情報が扱いにくい、といった側面があります。
- 信用の見え方:取引先によっては、賃貸オフィスやレンタルオフィスに比べて、事業拠点としての信頼性が低いと見なされる可能性があります。
終章:最初のオフィスは、未来への投資。総所有コストで判断を。
ここまで見てきたように、それぞれのオフィス形態には一長一短があり、「これが絶対の正解」というものはありません。重要なのは、あなたの会社の事業計画、資金計画、そして将来の成長戦略に、どの選択肢が最も合致しているかを見極めることです。
税理士視点:総所有コスト(TCO)で比較する
オフィス選びで失敗しないためには、月額の賃料だけで比較するのではなく、「総所有コスト(Total Cost of Ownership)」という考え方が不可欠です。私達は、お客様がオフィスを検討される際、例えば2年間の利用を想定し、「初期費用+(月額費用×24ヶ月)+退去費用」の総額がいくらになるかをシミュレーションし、財務的な観点から最適な選択をサポートします。
新宿という競争の激しい市場で、オフィス選びは会社の成功を左右する重要な財務判断です。目先の家賃だけでなく、初期費用、将来の拡張性、そして融資への影響まで、トータルで最適な選択をするために。ぜひ一度、私達税理士にご相談ください。あなたの事業計画に命を吹き込む、最高のワークスペース探しを財務のプロとしてサポートします。
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