新宿エリアに不動産や自社株式などの資産をお持ちの経営者・資産家の皆様にとって、次世代へといかに円滑に資産を引き継ぐか、そしてその際に発生する多額の「相続税」にどう備えるかは、避けては通れない重大な経営課題です。平成27年の税制改正による基礎控除額の引き下げ以降、相続税はもはや一部の富裕層だけのものではなくなり、対策の重要性は増すばかりです。
生前の贈与、生命保険の活用、不動産の組み換えなど、様々な対策がありますが、その中でも特に計画的かつ大きな効果が期待できる手法として、近年改めて注目を集めているのが「会社設立」による相続対策です。これは、ご自身の資産を管理・運用するためだけの会社、いわゆる「資産管理会社(プライベートカンパニー)」を設立し、そこに個人資産を移すことで、相続税の最適化を図るという、高度なタックスプランニングです。
この手法は、単なる節税に留まらず、所得税の軽減、円満な遺産分割、そしてスムーズな事業承継など、多くのメリットをもたらす可能性を秘めています。しかしその一方で、実行には専門的な知識が不可欠であり、一歩間違えれば税務署から「租税回避行為」と見なされ、厳しいペナルティを受けるリスクも伴います。
このページでは、新宿で多くの資産承継コンサルティングを手掛けてきた私達税理士が、資産管理会社の設立による相続対策の基本メカニズムから、具体的なメリット、そして絶対に知っておくべき税務リスクまで、プロフェッショナルの視点から、どこよりも深く、そして圧倒的な情報量で分かりやすく解説します。
第1章:資産管理会社とは何か?– 次世代への「資産の箱舟」
まずは、この戦略の核となる「資産管理会社」が、なぜ相続税対策に繋がるのか、その仕組みを理解しましょう。
資産管理会社の2つのタイプ
資産管理会社は、その保有する資産の内容によって、大きく2つのタイプに分類されます。
- 資産保有型:オーナー個人が所有する賃貸不動産や上場株式、現金などを会社に所有させ、その管理・運用(家賃収入や配当収入の受領)を事業とするタイプです。本記事では、主にこちらのタイプを解説します。
- 株式保有型(ホールディングカンパニー):オーナーが経営する事業会社の株式を保有・管理することを目的とするタイプです。こちらは、主に「事業承継」を円滑に進めるために活用されます。
なぜ相続税対策になるのか? – 財産評価の転換マジック
この戦略の最大のポイントは、相続財産の「評価方法」が変わる点にあります。
- 個人で資産を所有している場合: 相続が発生すると、不動産は「路線価」や「固定資産税評価額」、上場株式は「相続開始日の終値」といった、国が定めたルールに基づいて個々の資産が直接評価され、その合計額に相続税が課されます。
- 資産管理会社で所有している場合: 相続が発生した際、相続財産となるのは不動産や株式そのものではなく、それらの資産を所有している「資産管理会社の株式(非上場株式)」です。そして、この自社株の評価額は、会社の純資産や利益、配当などを基に、極めて複雑な計算式(純資産価額方式や類似業種比準価額方式など)で算出されます。
この計算過程において、役員退職金の支給準備による負債の計上や、含み損のある資産の活用など、様々な手法を組み合わせることで、会社の株式評価額を、その会社が所有する資産の時価総額よりも低く抑えることが可能になります。これが、資産管理会社が相続税対策の切り札と言われる所以です。
第2章:【7大メリット】資産管理会社がもたらす絶大な効果
相続税評価額の圧縮以外にも、資産管理会社の設立には、経営者・資産家にとって計り知れない多くのメリットが存在します。
メリット①:所得の分散による所得税・住民税の節税
例えば、オーナー社長個人が所有する複数の賃貸マンションから、年間2,000万円の家賃収入を得ているとします。この2,000万円は全て社長個人の「不動産所得」となり、所得税・住民税は最高税率(合計55%)に近い高い税率で課税されます。
しかし、資産管理会社を設立し、そこにマンションを所有させると、2,000万円の家賃収入は会社の売上となります。そして、社長自身と、実際に業務を手伝う配偶者やお子さんを会社の役員にし、それぞれに「役員報酬」として給与を支払うことができます。
所得を複数人に分散させれば、それぞれに「給与所得控除」という有利な控除が適用される上、所得税の累進課税が緩和されるため、家族全体で支払う所得税・住民税の合計額を劇的に引き下げることが可能になるのです。
メリット②:円満な遺産分割と「争族」の防止
複数の不動産を、複数の相続人で分ける「現物分割」は、「誰がどの物件をもらうか」で揉めることが多く、不動産を売却して現金で分ける「換価分割」も、大切な資産を手放すことになり、また譲渡所得税も発生します。「争う相続」と書いて「争族」と揶揄される、最も避けたい事態です。
資産管理会社を活用すれば、相続財産は「会社の株式」となります。例えば、子供3人で平等に分けるなら、会社の株式を3分の1ずつ相続させるだけで済みます。これにより、資産そのものを切り分けることなく、公平かつ円満な遺産分割が実現しやすくなります。
メリット③:経費計上範囲の拡大による法人税の節税
個人事業主である不動産オーナーと比べ、法人化することで経費として認められる範囲が格段に広がります。役員報酬はもちろんのこと、役員退職金の準備(生命保険の活用)、社宅制度による家賃の経費化、日当が非課税となる出張旅費規程の整備、倒産防止共済への加入など、様々な節税策を合法的に実行でき、法人税を圧縮できます。
メリット④:資産の凍結リスクの回避と事業承継の円滑化
個人名義の資産は、本人が亡くなると、遺産分割協議が完了するまで銀行口座が凍結されてしまいます。賃貸経営の場合、家賃の入金や経費の支払いが滞り、経営に支障をきたす可能性があります。しかし、法人名義であれば、社長が亡くなっても会社の口座は凍結されず、事業は滞りなく継続されます。これは、スムーズな事業承継においても極めて重要なポイントです。
メリット⑤:柔軟な生前贈与の実現
暦年贈与(年間110万円まで非課税)を活用して生前に資産を移転させたい場合、不動産そのものを贈与するのは、評価額が高額になりがちで、登記費用もかかるため現実的ではありません。しかし、資産管理会社の「株式」であれば、評価額を調整しやすく、毎年110万円の非課税枠の範囲内で、計画的に子供や孫へ株式を贈与していくことが可能です。これにより、相続財産そのものを、生前のうちに着実に減らしていくことができます。
メリット⑥:経営ノウハウの承継
お子さんやお孫さんを会社の役員にすることで、単に給与を支払うだけでなく、実際に会社の運営(資産管理)に関与してもらうことができます。取締役会などの場で、資産状況の報告を受けたり、今後の投資方針を議論したりすることを通じて、創業者であるあなたの資産運用の哲学や経営ノウハウを、次世代へ実践的に教育していく場としても活用できます。
メリット⑦:相続財産の把握と管理の容易化
資産が様々な金融機関や場所に散在していると、相続発生時にその全体像を把握するだけで大変な労力がかかります。資産管理会社に資産を集約しておくことで、会社の決算書を見れば一族の資産状況が一目瞭然となり、計画的な相続対策や納税資金の準備が立てやすくなります。
第3章:【重要】設立・運営における注意点と税務リスク
これほど多くのメリットがある一方で、資産管理会社の設立・運営には、専門的な知識を要する重大な注意点と税務リスクが伴います。
【税理士からの警告】安易な設立は、破綻への第一歩です
資産管理会社による相続対策は、ネットや書籍で紹介されているような単純なものではありません。これは、お客様の資産状況、家族構成、そして将来のビジョンに合わせて、精密に設計・構築するオーダーメイドの仕組みです。専門家のサポートなしに自己流で進めることは、将来の税務調査で「租税回避行為」と見なされ、本来のメリットが全て吹き飛ぶどころか、多額の追徴課税を課されるリスクを伴う、極めて危険な行為です。
リスク①:資産移転時に発生する税金
個人が所有する資産を、設立した会社に移す際には、様々な税金が発生します。
- 不動産の場合:時価で会社に売却すれば、個人に譲渡所得税が課されます。会社側は不動産取得税や登録免許税を負担します。時価より著しく低い価額で売却すると、差額が贈与と見なされるリスクがあります。
- 有価証券の場合:含み益のある株式を会社に売却すれば、同様に譲渡所得税が課されます。
これらの初期コストを、将来にわたる節税メリットが上回るかどうか、精密なシミュレーションが不可欠です。
リスク②:「事業実態」がないと判断されるリスク
税務署は、その会社が本当に事業を行う実態があるのかを厳しくチェックします。事務所の実態がなく、役員会も開かれず、単に資産を所有しているだけのペーパーカンパニーだと判断された場合、「同族会社の行為又は計算の否認」という法律に基づき、会社を介した取引そのものがなかったものと見なされ、全ての節税効果が否認される可能性があります。定款の事業目的に沿った、実態のある事業活動が必須です。
リスク③:株価のコントロールの失敗
会社の経営がうまくいき、内部に利益が蓄積されすぎると、かえって会社の株式評価額が高騰し、相続税が増えてしまうという本末転倒な事態も起こり得ます。役員報酬や退職金の積み立て、適切な投資などを通じて、会社の株価を継続的にコントロールしていく、長期的な視点での運営が求められます。
終章:資産管理会社は、専門家と創り上げるオーダーメイドの解決策
資産管理会社の設立は、間違いなく、現行税制の中で最も効果的な相続・事業承継対策の一つです。しかし、それは同時に、税務、法務、金融の知識が交差する、極めて専門性の高い領域でもあります。
私達新宿の税理士は、目先の節税だけに囚われることなく、お客様一族の10年後、20年後を見据え、円満な資産承継と事業の永続的な発展を実現するための、最適なプランをご提案します。次世代への想いを、確かな形にするために。まずは、あなたの現状と想いを、私達にお聞かせください。
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