会社設立の専門家の選び方のコツ

会社設立の際には、複雑な手続きや法令の理解、そして細かな書類作成が必要です。
そのため、多くの起業家や法人設立希望者は、専門家に依頼してスムーズに事業スタートを図っています。
ただし、会社設立に関わる専門家は「司法書士」「行政書士」「税理士」など複数存在し、それぞれ得意分野や対応可能な業務範囲が異なります。
本稿では、これらの専門家の役割や特徴を整理し、会社設立の目的や業種、今後のサポート体制を考慮した適切な専門家選びのコツを解説します。

1. 司法書士の役割と特徴

司法書士は、会社設立において最も重要な登記手続きの専門家です。
会社の設立登記は司法書士の独占業務であり、会社の「定款認証」や「設立登記申請」をワンストップで代行できます。
定款の認証は公証人役場で行う手続きですが、司法書士がその書類作成や認証の立会いまで対応可能です。
また、設立後の商業登記(役員変更登記、本店移転登記など)も司法書士が専門的にサポートしています。
しかし、司法書士は許認可申請業務は業務範囲外となっているため、建設業や飲食店営業許可などの官公庁提出書類は対応できません。

1-1. 司法書士に依頼するメリット・デメリット

  • メリット:登記申請のプロフェッショナルであり、スピーディーかつ確実に手続きを進められる。
  • メリット:会社設立の法的側面の相談や必要書類の作成に精通しているため、間違いが少ない。
  • デメリット:許認可申請や税務申告など、登記以外の業務は対応外のため別の専門家に依頼が必要。
  • デメリット:司法書士費用が割と高額なところが多く、報酬以外に公証役場の手数料などが別途発生することもある。

2. 行政書士の役割と特徴

行政書士は、官公庁や自治体へ提出する書類の作成や手続き代理を行う専門家です。
許認可が必要な業種(飲食店営業許可、建設業許可、風俗営業許可など)の手続きで行政書士の活躍の場が広がっています。
会社設立においては、司法書士が登記を担当するため、行政書士は許認可関連の書類作成・申請代理や創業計画書の作成支援などを担うことが多いです。
また、法人設立に関わる補助金申請や助成金手続きも行政書士が対応可能です。

2-1. 行政書士に依頼するメリット・デメリット

  • メリット:許認可申請など、専門的な行政手続きを一括で代行できる。
  • メリット:創業支援や補助金申請に強く、起業後の資金調達の支援も受けられる。
  • デメリット:登記申請は業務範囲外のため、司法書士と連携が必要になることが多い。
  • デメリット:税務・会計面のサポートは基本的に行わないため別途税理士の利用が望ましい。

3. 税理士の役割と特徴

税理士は、法人の税務申告や税務相談、会計業務の専門家です。
会社設立に直接かかわる登記手続きは司法書士の業務ですが、設立後の税務処理や帳簿作成、決算、確定申告などの業務は税理士の専門分野です。
設立時には、税務署や都道府県税事務所、市区町村役場などへの各種届出書類の作成・提出支援も行います。
特に、起業後は毎月の会計処理や年次決算を適切に行い、税務リスクを回避することが重要となります。
そのため、設立時から税理士に相談・依頼することで、経営の安定と節税対策を同時に進めることが可能です。

3-1. 税理士に依頼するメリット・デメリット

  • メリット:税務や会計の専門知識に基づき、正確な申告・節税アドバイスが得られる。
  • メリット:設立後も継続して税務申告や記帳代行、決算書作成などのトータルサポートを受けられる。
  • メリット:銀行融資や補助金申請の際に必要な事業計画書や財務書類の作成も支援可能。
  • デメリット:登記業務は扱わないため、司法書士など他の専門家との連携が必要。
  • デメリット:税理士報酬は依頼する業務内容によって高額になるケースもあり、費用対効果を検討することが必要。

4. 専門家の選び方のポイント

会社設立における専門家の選択は、依頼する業務内容や会社の将来計画に大きく影響します。
以下のポイントを踏まえて最適な専門家を選ぶことが成功の秘訣です。

4-1. 業種と許認可の必要性を把握する

飲食店や建設業、介護事業などの特定業種では、許認可が必要になります。
こうしたケースでは、登記だけでなく許認可申請も重要な手続きとなるため、司法書士だけでなく行政書士のサポートも欠かせません。
許認可の有無を事前に確認し、ワンストップで対応できる体制を検討しましょう。

4-2. トータルサポートの必要範囲を明確にする

単に会社設立の登記だけを依頼したい場合と、設立後の税務会計や融資支援まで一括して依頼したい場合では、選ぶべき専門家が変わります。
例えば、設立登記は司法書士に任せ、税務や会計は税理士に依頼するといった専門分業もありますが、税理士が設立手続きもサポートするワンストップサービスを提供する事務所も増えています。
業務範囲を明確にし、専門家の対応可能範囲と得意分野を事前に確認しましょう。

4-3. 料金体系と報酬の透明性

費用面は専門家選びで重要な要素です。
固定報酬制、成功報酬制、時間制報酬など、報酬体系は事務所によって異なります。
見積もり時には報酬の内訳、追加費用の有無を必ず確認し、明朗な料金設定の専門家を選びましょう。
安価すぎる場合はサービスの質やサポート内容に不安があることもあるため、費用だけでなく実績や信頼性も判断材料に加えることが大切です。

4-4. コミュニケーションの取りやすさと信頼性

会社設立は一度きりの手続きで終わらず、設立後も様々な相談が発生します。
そのため、専門家との相性や相談しやすい環境、レスポンスの早さは重要です。
面談や電話、メールでの対応のしやすさ、質問に対するわかりやすい説明があるかどうかを見極めましょう。
また、実績や口コミ、紹介などで信頼できる専門家を選ぶことも成功のポイントです。

5. 会社設立の専門家選びで見落としがちなポイント

専門家選びの際に意外と見落としがちな点として「アフターサポートの充実度」があります。
設立手続きは一度きりの業務のように見えますが、実際には設立後の税務申告や社会保険の加入手続き、各種契約書の見直しなど長期的なサポートが必要です。
例えば、設立後1年以内に役員変更や資本金の増減などの登記変更が発生した場合、迅速に対応してくれるかどうかは重要な判断材料となります。
また、税務調査が入った際に適切なアドバイスや対応をしてくれる専門家を選ぶことは、事業継続にとっても大きな安心材料となります。

5-1. 継続的なサポート体制の確認

専門家によっては、設立登記までは対応するが、その後は別の担当者に引き継ぐケースもあります。
そのため、設立から決算、税務申告まで一貫して担当してくれるか、担当者が変わっても情報共有が円滑かどうかを事前に確認しておくことが望ましいです。
また、税理士事務所の場合、記帳代行や給与計算のアウトソーシングにも対応できるところもあり、これらのサービスが含まれるかどうかもポイントとなります。

5-2. 地元・地域密着型専門家のメリット

特に新宿など首都圏で会社を設立する場合は、地域に詳しい専門家を選ぶことも大切です。
地域密着型の専門家は、地元の商工会議所や行政機関とのパイプが強く、融資や助成金の最新情報を把握しているケースが多いです。
これにより、スムーズな手続きだけでなく、地元ならではのサポートを受けやすいメリットがあります。
また、直接面談や書類の受け渡しがしやすいことも、遠隔地の事務所に依頼するより安心感が高いです。

6. 専門家に依頼する際の具体的な質問事項

専門家に依頼する前に、以下の質問を用意しておくと、ミスマッチを防ぎやすくなります。

  • 過去にどのくらいの会社設立をサポートしているか?
  • 会社設立手続きの費用と内訳はどうなっているか?追加費用は発生するか?
  • 登記以外の手続き(許認可申請、税務届出など)も対応可能か?
  • 設立後の経理や税務サポートはどのような内容か?
  • 融資申請や助成金申請のサポートは行っているか?
  • 担当者は一貫して同じ人が担当するか?問い合わせのレスポンスはどの程度か?
  • 過去にトラブルがあった場合の対応方法は?

7. 会社設立の専門家費用の相場と節約ポイント

会社設立にかかる費用は専門家ごとに異なり、手続きの範囲やオプションの有無によって大きく変動します。
司法書士に依頼する場合、設立登記費用として一般的に10万円~20万円程度が相場です。
行政書士の許認可申請費用は業種により数万円から数十万円まで幅があります。
税理士の顧問契約費用は月額数万円からで、決算報酬が別途かかるケースも多いです。
費用節約のためには、依頼範囲を明確にし、必要最低限の手続きを依頼することや、各専門家の費用見積もりを比較検討することが重要です。
また、電子定款を利用して公証役場の印紙代4万円を節約する方法も有効です。

8. ワンストップサービスと専門家の連携

近年では、会社設立から税務顧問、許認可申請、助成金申請、融資サポートまで一括で対応できるワンストップサービスを提供する事務所も増えています。
こうしたサービスを利用することで、複数の専門家に依頼する手間や費用を軽減でき、効率的な会社設立を実現可能です。
ただし、ワンストップサービスでも特定の分野で専門性が不足する場合があるため、各専門家の連携状況や担当者の専門性を確認することが欠かせません。
信頼できるパートナーと長期的に関係を築くことが、会社経営の成功につながります。

9. 会社設立に関するよくある質問(FAQ)

9-1. 会社設立の費用はどのくらいかかりますか?

会社設立にかかる費用は、登録免許税、定款認証費用(株式会社の場合)、専門家への報酬などが含まれます。
例えば、登録免許税は資本金の0.7%(最低15万円)、定款の認証手数料は約5万円、専門家への依頼費用は10万~20万円程度が一般的です。
ただし、電子定款を利用すれば収入印紙4万円が不要となり、コスト削減が可能です。

9-2. 会社設立に必要な書類は何ですか?

代表的なものに、定款、設立登記申請書、取締役の就任承諾書、払込証明書、印鑑届出書などがあります。
詳しくは当税理士事務所までご相談ください。専門家が書類作成から提出までトータルでサポートいたします。

9-3. 会社設立の流れはどのようになっていますか?

会社設立は主に「定款の作成・認証」「資本金の払込み」「登記申請」の3ステップで行います。
これらの手続きを正確に進めるためには、専門家のサポートが効果的です。

10. 専門家とのトラブルを避けるために知っておきたいこと

10-1. 依頼内容と費用は必ず契約書で確認する

専門家と契約する際には、業務内容や報酬額、追加料金の有無などを明文化した契約書を必ず交わしましょう。
口約束やあいまいなまま進めると、後々トラブルの原因になります。
また、費用見積もりは複数の事務所で比較検討し、納得できるところを選ぶことが重要です。

10-2. 業務範囲と責任の所在を明確にする

登記手続きのみ、許認可申請のみ、税務顧問のみ、といった部分的な依頼の場合、どの業務が含まれ、どこまで対応してもらえるのか事前に確認しましょう。
それにより、手続き漏れや担当者間の責任の押し付けを防ぐことができます。

10-3. 相談時のコミュニケーションは丁寧かつ迅速か?

疑問点やトラブルの芽は早期に発見し対処することが肝要です。
問い合わせに対して迅速かつ丁寧に回答してくれる専門家を選ぶことが、安心して任せられるポイントです。

11. 実際の会社設立相談事例と専門家の役割

11-1. 相談事例:初めての飲食店開業

飲食店を開業するA様は、設立登記だけでなく食品衛生許可や防火管理者資格の申請も必要でした。
当事務所の提携行政書士が許認可申請を担当し、司法書士が登記を行い、税理士が開業後の帳簿作成・税務申告をサポートしました。
各専門家が連携して対応したことで、スムーズな会社設立と事業開始を実現しました。

11-2. 相談事例:複数事業を統合する法人設立

複数の事業をまとめて法人化したいB様は、資本金設定や役員構成、税務戦略に関して専門的な相談を希望されました。
税理士が税務面の最適化を図り、司法書士が登記手続きを進めました。
複雑な事案でも、各分野の専門家が連携することで安心して設立準備を進められました。

12. まとめ:専門家選びは会社設立成功の第一歩

会社設立は単なる手続きだけでなく、事業の基盤を築く重要なプロセスです。
そのためには、信頼できる専門家の選定が不可欠です。
司法書士、行政書士、税理士などそれぞれの役割と得意分野を理解し、自社のニーズに最適な専門家を選びましょう。
初回相談は無料の事務所も多いため、気軽に問い合わせてみることをおすすめします。
私たち新宿の税理士事務所荒川会計事務所は、会社設立から税務顧問、経営相談までトータルにサポートいたします。
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