会社設立の際、特に新宿で起業や法人設立を検討されている方にとって、役員の「名義貸し」問題は見逃せないテーマです。
本記事では、名義貸しの定義からその歴史的背景、法的な扱い、経営リスク、トラブル回避の方法まで詳しく解説します。
これから会社を設立する方が安心して事業をスタートできるよう、税理士としての専門的な視点でわかりやすく説明します。
1. 役員の名義貸しとは何か?その定義と背景
役員の名義貸しとは、実際には役員としての職務を行っていない人の名前を、会社設立時の登記に使う行為です。
特に旧商法時代には、株式会社設立に最低3名の取締役が必要だったため、必要な人数を揃える目的で名義貸しが頻繁に行われました。
この行為は形式的には問題視されないこともありましたが、実際には名義貸しされた人物が経営判断や法的責任を負わないケースが多く、会社運営上のトラブルの原因となっていました。
1-1. 名義貸しが行われた背景
旧法下では、設立登記のために取締役3名が必須とされたことが名義貸しの大きな要因です。
特に資金や人材が不足する起業初期段階では、形式的に役員人数を満たすために名義貸しが横行しました。
しかし、こうした名義貸しは、後のトラブルや責任問題の温床となり、企業の信用を損なうケースも少なくありません。
2. 新会社法の施行による名義貸し事情の変化
2006年5月に施行された新会社法により、株式会社は取締役1名から設置可能となり、名義貸しの必要性は大きく減少しました。
これにより、多くの中小企業や個人事業主が気軽に会社設立を行えるようになりましたが、一部では依然として名義貸しが見受けられます。
例えば、複数会社を経営するオーナーが別会社の役員名義を借りるケースや、知名度のある著名人の名前を利用して会社の信用力を高める場合などです。
2-1. 合同会社(LLC)における名義貸しの可能性
合同会社は設立時の取締役設置義務がなく、社員全員が有限責任社員となるため、名義貸しの意味合いは株式会社とは異なります。
しかし、実態と異なる社員名義を使うことで信用問題が生じるリスクは同様にあります。
税務・法務上のトラブル回避のため、役員や社員の実態に合った登記が重要です。
3. 名義貸しの法的リスクと刑事責任の有無
名義貸しは表面上違法とはされていませんが、詐欺、脱税、犯罪隠蔽の目的があれば刑事責任が生じます。
たとえば、融資詐欺や資金洗浄の隠れ蓑として役員名義を貸す行為は、犯罪行為とみなされます。
こうした場合、名義貸しを行った人は幇助罪や共犯として処罰されるリスクがあります。
また、会社法上の取締役には善管注意義務や忠実義務があり、名義貸し役員であっても会社への責任を負う可能性があります。
3-1. 実際に役員責任を問われた判例例
実務上、名義貸し役員が会社の不正や債務超過に関して責任追及を受けた判例もあります。
判決では、「形式的な役員でも取締役としての義務を負う」として厳格に判断された例があり、名義貸しは単なる形式上の問題に留まらないことがわかります。
4. 名義貸しがもたらす経営上のリスク
名義貸しによって、実際の経営から離れているにもかかわらず、役員責任が及ぶリスクがあります。
債務超過や税務調査の際に、名義貸し役員が責任追及される可能性は否定できません。
加えて、会社の契約違反や労務問題が起きた場合、名義貸し役員に対して法的措置が取られることもあります。
また、役員個人の信用問題にも発展し、金融機関との取引停止や信用失墜のリスクが高まります。
4-1. 社会的信用の低下と取引停止のリスク
役員の名義貸しが判明すると、金融機関や取引先からの信用を失い、融資や取引停止となることがあります。
特に新宿のような競争激しい地域では、こうした信用リスクが企業存続に致命的な影響を与える可能性が高いです。
適正な役員構成を保つことは、会社の長期的な発展に欠かせません。
5. 名義貸しを依頼された際の対応と注意点
知人や家族から役員の名義貸しを依頼された場合、法的責任の所在とリスクを十分に理解することが不可欠です。
以下の点に注意してください。
- 名義貸しに伴う法的責任と経営リスクを説明し、納得の上で判断すること
- 名義貸し契約書の作成やリスク分担の明確化
- 税理士や司法書士への事前相談で法的・税務上の問題を確認
6. 名義貸しのリスクを回避するための具体策
会社設立時には、役員構成を実態に即したものとし、名義貸しを避けることが重要です。
定款の内容や登記情報の正確性を保ち、役員報酬の支払いや株主総会の開催など法的義務を遵守しましょう。
さらに、役員の職務履行状況を定期的にチェックし、不適切な名義貸しが疑われる場合は専門家の助言を仰ぐことをおすすめします。
7. 新宿の税理士事務所による会社設立と役員サポート
当税理士事務所は、新宿で会社設立を目指す方に対し、適正な役員構成のアドバイスや登記書類作成、税務届出まで幅広くサポートします。
役員の名義貸しに伴うリスクを未然に防ぎ、安心・安全な法人設立を実現します。
また、会社設立後の経理・税務対応や社会保険手続きまでトータルで支援可能です。
初回相談は無料ですので、まずはお気軽にお問い合わせください。
- Q1. 役員の名義貸しは法的に認められていますか?
- A. 名義貸し自体は明確に違法とはされていませんが、詐欺や脱税などの犯罪目的の場合は刑事罰の対象となります。実務上はリスクが非常に高いため推奨されません。
- Q2. 名義貸し役員に責任はありますか?
- A. 会社法上の取締役には忠実義務・善管注意義務が課されるため、名義貸し役員でも一定の責任を負う可能性があります。特に違法行為があった場合は刑事責任や損害賠償責任を問われることもあります。
- Q3. 名義貸しが発覚した場合の会社への影響は?
- A. 金融機関や取引先からの信用を失い、融資停止や取引停止のリスクがあります。また、役員の社会的信用にも影響が及び、経営に大きなダメージとなります。
- Q4. どうすれば名義貸しを回避できますか?
- A. 実態に即した役員構成にし、登記内容の正確化や法定手続きの遵守を徹底することが必要です。専門家に相談し適切なアドバイスを受けることも重要です。
過去の裁判例では、名義貸しをしていた取締役が、会社の不正行為や債務不履行に関し法的責任を問われたケースが複数あります。
特に名義貸しを理由に「経営に実態がなかった」として会社の損害賠償責任が追及される事例が増えており、裁判所は形式的な名義貸しを軽視しません。
このような動きから、実務上は名義貸しのリスクを避けることが一層求められています。
名義貸し役員が法的責任から逃れられないことを示す重要な判例群として注目されています。
会社設立に際しては、役員の選任が登記手続きの重要なステップとなります。
役員には実態が伴うことが求められており、名義貸しは避けるべきです。
登記にあたっては、以下の点に注意しましょう。
- 役員は実際に職務を行い、会社経営に責任を持つ人物を選任する。
- 登記申請書に記載する役員情報は正確かつ最新のものとし、虚偽記載をしない。
- 役員就任承諾書を必ず取得し、紛争の種を減らす。
- 取締役の人数は1名以上で良いが、複数人の場合は各自の責任範囲を明確にしておく。
- 登記後の役員変更登記も速やかに行い、会社情報を常に正確に保つ。
これらのポイントを遵守し、法令遵守のもとで役員登記を進めることが、会社設立成功の鍵となります。

