目次
- 経理業務が「なぜ」重要か
- 経理業務の三つの進め方(自社・雇用・外注)
- 設立直後の最低限の経理チェックリスト(実務)
- 年間スケジュール例(設立1年目)
- 帳簿・領収書の保存と法的注意点(法人税法・会社法・電子帳簿保存法)
- クラウド会計と推奨ワークフロー
- 経理代行・税理士に依頼する際の契約・料金・選び方
- よくある落とし穴とトラブル事例(回避策付き)
- 費用の目安とコスト削減のヒント
- Q&A(よくある質問)
- まとめ・お問い合わせ
1. 経理業務が「なぜ」重要か
経理は単に帳簿を付ける作業ではありません。正確な会計記録は、法令遵守(税務申告・社会保険手続)、資金管理(資金繰り)、意思決定(価格設定・利益管理)に直結します。会社設立後、最初に整えるべき体制が経理です。特に創業期は現金不足に陥りやすく、誤った会計処理や領収書の整理漏れがあると、融資審査や税務調査で不利になります。新宿で会社を始める方も同様ですから、早めに体制を整えましょう。
2. 経理業務の三つの進め方(メリット・デメリット)
A. 経営者自身が行う
<メリット>コストが低く、自分で数字に直接触れられる。
<デメリット>専門知識と労力が必要。ミスが税務リスクにつながる。
B. 社内に経理担当者を雇用する
<メリット>即時対応が可能で内部管理が強化される。
<デメリット>人件費がかかる(給与・社会保険・教育など)。
C. 経理代行(税理士・会計事務所)に外注する
<メリット>専門家による正確な処理、節税提案、税務相談が受けられる。
<デメリット>費用が発生するが、時間とリスクの削減効果を考えると費用対効果が高い場合が多い。
実務的には、創業初期は経営者+部分的アウトソース(領収書整理や月次試算表作成など)、事業が安定してきたら社内化するハイブリッド運用が多く見られます。
3. 設立直後の最低限の経理チェックリスト(今すぐやること)
- 会社用口座の開設:法人名義の銀行口座を作る(銀行印を登録)。
- 会計ソフト・クラウドの導入:初期はクラウド会計を推奨(自動連携で手間削減)。
- 領収書の保存ルールを決める:紙は日付順に、デジタルはスキャン保存(電子帳簿保存法対応を検討)。
- 経理担当者・代行との役割分担を明確に:誰が何をいつまでにやるかフロー化。
- 毎月の締め日と月次試算表の確認日を設定:(例:月末締め、翌月10日までに試算表を確認)。
- 税務届出の確認:法人設立届、青色申告承認申請、給与支払事務所等の開設届などを提出。
4. 年間スケジュール例(設立1年目のタイムライン)
以下は一般的な例です。会社の事業形態によって必要な手続きは変わります。
時期 | 主な業務 |
---|---|
設立直後(0ヶ月) | 法人銀行口座開設、会計ソフト導入、印鑑届出、初期仕訳の入力 |
1ヶ月目 | 月次締め、給与支払・源泉徴収の開始、社会保険の加入手続き(該当時) |
3ヶ月目 | 四半期ごとの資金繰り確認、必要に応じ融資申込資料の整備 |
6ヶ月目 | 半期の損益確認、必要なら経費見直しや資金繰り対応 |
12ヶ月目 | 決算準備、税務申告(法人税、消費税の確定)、年末調整の実施 |
5. 帳簿・領収書の保存と法的注意点
会社は帳簿書類を一定期間保存する義務があります。主な法律・制度としては法人税法(帳簿書類の保存)、会社法(商業帳簿の保管)、および電子帳簿保存法があります。電子保存を行う場合は、要件(タイムスタンプ、検索可能性など)を満たす必要があり、事前の登録・運用ルールが求められます。 保存期間の目安:原則7年(国税関係資料は法令で定められた期間に従う)。重要書類は紛失しないようバックアップを取りましょう。
実務ポイント(保存)
- 領収書は日付順、取引先別に保管。
- スキャナ保存を行う場合は、スキャン品質と検索性を確保。
- 請求書や見積書の電子データは、関係法令に合致した形で保存。
6. クラウド会計と推奨ワークフロー
クラウド会計ソフト(例:弥生/freee/マネーフォワードなど)は、銀行・カード連携、自動仕訳、請求管理、給与計算の一部自動化機能があり、創業期の効率化に非常に有効です。基本的なワークフロー例:
- 銀行口座と会計ソフトを連携 → 入出金データを自動取得
- 自動仕訳ルールで一次処理 → 月次で経営者がレビュー
- 経費精算は電子で完結(従業員はスマホで領収書をアップロード)
- 月次試算表を確認し、課題を翌月のアクションに反映
7. 経理代行・税理士に依頼する際の契約・料金・選び方
(A)契約形態と業務範囲
経理代行は「領収書整理のみ」「月次仕訳・試算表作成」「給与計算」「年次決算・申告」など業務範囲で料金が大きく変わります。契約の際は業務範囲を明確にし、対応フロー・納期・追加料金ルールを文書化してください。
(B)料金の目安
サービス内容 | 月額の目安(税抜) |
---|---|
領収書整理・月次仕訳のみ | 20,000〜50,000円 |
月次仕訳+試算表作成 | 30,000〜80,000円 |
給与計算(〜10名) | 10,000〜30,000円 |
年次決算・申告(法人税) | 150,000〜500,000円(規模により変動) |
※価格は目安です。業種・取引量・必要帳票により大きく変わります。見積もりは複数社で比較しましょう。
(C)税理士・代行先の選び方
- 創業支援や融資サポートの実績があるか(特に創業間もない会社は重要)
- 使用ソフトや電子化の方針が自社に合っているか
- 連絡体制(レスポンス速度や担当者の担当レベル)
- セキュリティ対策(クラウドデータの管理やアクセス制御)
- 料金体系が明確であること
8. よくある落とし穴とトラブル事例(回避策)
ケース1:領収書の未整理で経費漏れ/申告漏れ
回避策:領収書は発生時にスキャン・分類。クラウドで月次締めを習慣化。
ケース2:給与計算ミスによる従業員トラブル
回避策:給与規程を整備し、社会保険・源泉税の計算は専門家にチェック。
ケース3:電子帳簿保存要件未対応で過去データが非適法に
回避策:電子保存を始める前に所轄税務署や専門家に相談し、要件(検索性・訂正履歴・タイムスタンプ等)を満たす運用を構築。
9. 費用の目安とコスト削減のヒント
創業初期はコストを抑えつつも、税務リスクを減らすバランスが重要です。
コスト削減の具体例:
・クラウド会計の自動連携で領収書の手入力を削減
・領収書整理のみ代行し、仕訳は自社で行うハイブリッド契約
・年次決算のみスポットで外注する(ただし税務相談は継続契約推奨)
10. Q&A(よくある質問)
- Q1:経理を全て自分でやるべきですか?
- A1:小規模なら可能ですが、税務申告や社会保険の知識が必要です。時間対効果を考え、重要業務だけは専門家の力を借りましょう。
- Q2:会計ソフトはどれが良い?
- A2:クラウド型(弥生/freee/マネーフォワード等)が創業期は扱いやすく推奨。銀行連携やレシート読み取りの性能を比較して選んでください。
- Q3:領収書はどのくらい保存する必要がありますか?
- A3:原則として国税関係書類は7年(法人税等の規定に従う)。業種や書類種類で異なるため専門家に確認を。
- Q4:経理代行を依頼する際の注意点は?
- A4:業務範囲・納期・追加費用の有無・データの引継ぎ条件を契約で明確にすること。
11. 最後に(まとめ)
会社設立後の経理業務は、会社の生命線とも言える業務です。正確な帳簿管理・適切な保存・月次での収支把握ができれば、経営判断も融資交渉も有利になります。新宿での会社設立を検討されている方は、ぜひ早めに税理士に相談し、最適な経理体制を一緒に作りましょう。