会社の設立、そしてその後の事業運営には、何かとお金がかかります。特に物価や家賃の高い新宿で起業するとなると、自己資金や融資だけでは不安に感じる方も多いのではないでしょうか。そんな時に、ぜひ活用を検討していただきたいのが、国や地方自治体が提供する「助成金・補助金」です。
これらは、銀行からの融資と異なり、原則として返済が不要な、いわば「事業への応援資金」です。うまく活用すれば、会社の財務基盤を大きく安定させ、事業の成長を加速させることができます。
しかし、この助成金・補助金の世界は非常に複雑で、「知っている人だけが得をする」情報格差が生まれやすい分野でもあります。このページでは、新宿で多くの起業家の資金調達をサポートしてきた私達税理士が、2025年8月現在の情報を基に、会社設立時に活用できる主要な制度から、新宿区・東京都独自の制度、そして申請を成功させるためのコツまで、わかりやすく解説します。
大前提:「助成金」と「補助金」のちがい
まず、よく混同されがちな「助成金」と「補助金」の違いを理解しましょう。
- 助成金:主に厚生労働省が管轄。雇用の安定や労働環境の改善などを目的としています。定められた要件を満たせば、原則として受給できます。
- 補助金:主に経済産業省や地方自治体が管轄。新規事業や技術開発、地域振興などを目的としています。公募期間が定められており、予算の上限があるため、申請しても審査で採択されなければ受給できません。事業計画の優位性などが問われる、競争的な資金です。
これから紹介する制度がどちらに分類されるのかを意識することで、申請に向けた心構えや準備も変わってきます。
【国の制度①】厚生労働省管轄の「雇用関係助成金」
従業員を雇用し、その活躍を後押しする企業を支援する制度です。人を雇い入れる計画がある場合は、必ずチェックしましょう。
キャリアアップ助成金【最も活用される代表格】
有期雇用のパートタイマーや契約社員といった、いわゆる非正規雇用の労働者のキャリアアップを促進するための、非常に人気の高い助成金です。様々なコースがありますが、特に活用しやすいのが「正社員化コース」です。
- 対象となる取り組み:有期雇用の従業員を、ルールに則って正規雇用(正社員)に転換する。
- 受給額の目安(中小企業の場合):
- 有期 → 正規:1人あたり 80万円
- 無期 → 正規:1人あたり 40万円
- ポイント:就業規則などに転換制度を明記し、計画的に実行する必要があります。人件費の助成だけでなく、優秀な人材の定着にも繋がる、一石二鳥の制度です。
トライアル雇用助成金
安定的な就職が困難な求職者(就労経験がない、長期間失業している、母子家庭の母など)を、原則3ヶ月間の試行雇用(トライアル雇用)で雇い入れる場合に支給されます。
- 目的:企業側と求職者側の相互理解を深め、ミスマッチを防ぎながら常用雇用への移行を促します。
- 受給額の目安:対象者1人あたり月額4万円(特定のケースでは5万円)を最大3ヶ月間。
- 活用シーン:未経験者を採用し、自社で育てていきたいと考える企業にとっては、採用コストと教育期間中の人件費負担を軽減できるメリットがあります。
【国の制度②】経済産業省管轄の「事業拡大向け補助金」
こちらは、事業のIT化や販路開拓など、企業の成長を後押しする補助金です。優れた事業計画が求められる競争的な資金となります。
IT導入補助金
中小企業が自社の課題やニーズに合ったITツール(会計ソフト、受発注システム、決済システム、ECサイト制作など)を導入する経費の一部を補助する制度です。
- ポイント:あらかじめ登録された「IT導入支援事業者」とパートナーシップを組んで申請する必要があります。バックオフィスの生産性向上や、新たな販売チャネルの構築に直結するため、多くの企業が活用しています。
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者(従業員数がおおむね20人以下)が、経営計画に基づいて実施する販路開拓等の取り組みを支援する制度です。
- 対象経費の例:
- 新しいチラシやカタログの作成、Webサイトの制作・改修
- 店舗の改装、看板の設置
- 展示会への出展費用
- ポイント:非常に人気が高く、応募が殺到します。商工会議所・商工会のサポートを受けながら、説得力のある事業計画を作成することが採択の鍵となります。
【地域特化】新宿区・東京都の創業者向け制度
国の制度に加えて、事業所のある地方自治体が独自に設けている支援制度は必ずチェックしましょう。特に、創業支援に力を入れている東京都と新宿区には、起業家にとって魅力的な制度が存在します。
専門家コラム:なぜ地域制度が狙い目なのか?
国の補助金は全国の事業者がライバルとなるため、競争が非常に激しくなります。一方、東京都や新宿区の制度は、対象者がその地域内の事業者に限定されるため、相対的に採択される可能性が高まる傾向にあります。地域に根差して事業を行うメリットを最大限に活かしましょう。
東京都:創業助成事業【最大300万円の大型助成】
東京都内で創業を予定している、または創業後5年未満の中小企業者等に対して、賃借料、広告費、器具備品購入費などの創業期に必要な経費の一部を助成する、非常に強力な制度です。
- 助成限度額:最大 300万円
- 助成率:助成対象と認められた経費の2/3以内
- 主な申請要件:
- 東京都が指定する「創業支援等事業者」による支援(セミナー受講や個別相談など)を一定期間受けていること。
- 東京都内で創業する具体的な計画があること。
- ポイント:非常に人気の高い助成金であり、事業計画書のクオリティが採択を大きく左右します。申請期間も限られているため、周到な準備が必要です。私達税理士は、この事業計画書の策定を強力にサポートします。
新宿区:創業者向け融資あっせん・利子補給制度
新宿区では、直接的な助成金・補助金とは少し異なりますが、創業者にとって非常に有利な資金調達支援を行っています。
- 制度の概要:新宿区が金融機関(提携の信用金庫など)に対して、創業者への融資を「あっせん(紹介)」し、さらに創業者が支払うべき利子の一部を、新宿区が代わりに金融機関へ支払ってくれる(利子補給)という制度です。
- メリット:直接お金がもらえるわけではありませんが、融資の審査が通りやすくなる効果が期待でき、かつ、通常よりも低い実質金利で借入ができるため、返済負担を大きく軽減できます。プロパー融資(金融機関独自の融資)が難しい創業期において、非常に価値の高い制度です。
助成金・補助金申請の注意点と税理士の役割
夢のような制度に見えますが、実際に活用するにはいくつかの重要な注意点があります。
- 原則「後払い」である:助成金・補助金は、対象となる事業を実施し、経費を支払った後に、報告書を提出して初めて振り込まれます。つまり、一旦は自己資金や融資で立て替える必要があるため、手元の資金がゼロでは活用できません。
- 手続きが煩雑で、期限が厳格:公募要領は数十ページに及ぶことも多く、申請書類の作成には多大な労力がかかります。わずかな書類の不備や、1日の期限遅れで不採択となる厳しい世界です。
- 受給した助成金・補助金は「課税対象」である:これは最も重要なポイントです。例えば100万円の助成金を受け取った場合、その100万円は会社の利益(営業外収益)として扱われ、翌年の法人税の課税対象となります。これを知らずに全額使い込んでしまうと、翌年の納税資金に窮することになりかねません。
資金調達における税理士の役割とは?
雇用関係助成金は社会保険労務士、補助金申請は中小企業診断士など、各分野に専門家が存在します。私達税理士の役割は、お客様の事業の「財務責任者」として、これらの資金調達全体の「司令塔」となることです。
- どの制度がお客様の状況に最も適しているかを判断し、信頼できる専門家(社労士など)と連携します。
- 補助金申請に不可欠な、説得力のある事業計画書や収支計画の策定をサポートします。
- 調達した資金が課税対象となることを見据え、納税資金まで含めた長期的な資金繰り計画を立案します。
終章:制度を味方に、盤石な財務基盤を築く
助成金や補助金は、正しく理解し、戦略的に活用すれば、あなたの会社の成長を力強く後押ししてくれます。しかし、その道のりは決して平坦ではありません。
「自分の会社は、どの制度を使えるんだろう?」「事業計画書の作り方がわからない…」そう感じたら、ぜひ一度、私達専門家にご相談ください。あなたの事業に最適な資金調達の組み合わせを考え、その実現まで伴走することが、私達の使命です。
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