「事業を大きくしたい」「新しい挑戦のための資金が必要」―そう考えた時、多くの経営者様が検討するのが金融機関からの融資でしょう。しかし、ここで一つの疑問が浮上します。「法人と個人事業主、果たしてどちらの方が融資を受けやすいのだろう?」
巷では「法人が有利」とよく言われますが、その具体的な理由や、個人事業主でも融資を成功させる道筋を明確に理解している方は少ないかもしれません。
当税理士事務所は、これまで数多くの法人様・個人事業主様の資金調達を支援してまいりました。その経験から、金融機関が融資を審査する際の具体的な視点や、成功のためのキーポイントを熟知しています。この記事では、2025年最新の融資動向も踏まえつつ、法人と個人事業主それぞれの融資における有利・不利、そして融資を勝ち取るための実践的な戦略を、税理士の専門的視点から徹底的に解説します。
---1. 融資審査の生命線「決算書(確定申告書)」の信頼性とは?
金融機関が融資の可否を判断する上で、最も深く読み込むのが「決算書(法人)または確定申告書(個人事業主)」です。これは、事業の財務状況や経営成績を数値で示す「通信簿」であり、「健康診断書」だからに他なりません。
しかし、同じ事業活動の結果を示す書類でも、法人と個人事業主では、その信頼性において金融機関の評価に大きな差が生じます。この差こそが、融資の有利・不利を分ける最大の要因となるのです。
法人の決算書が「圧倒的に信頼されやすい」理由
- 「公私分離」の徹底と透明性:
法人は、法律上、経営者個人とは明確に区別された「法人格」を持ちます。これにより、事業資金と経営者個人のプライベートな資金が厳格に分離され、法人の銀行口座、資産、負債はすべて法人名義で管理されます。金融機関は、決算書に示される情報が純粋に事業活動のみを反映したものとして評価できるため、信頼性が格段に高まります。
- 厳格な会計基準とチェック体制:
法人は、会社法や法人税法、企業会計原則といったより厳格な会計基準に基づいて経理処理を行い、決算書を作成する義務があります。また、当事務所のような税理士が関与して作成されるケースがほとんどであり、第三者によるチェックが入ることで、その正確性と信頼性が担保されます。
- 情報公開の義務と事業継続性:
株式会社は、登記事項証明書を通じて資本金や役員構成などの情報が公開されており、高い透明性があります。また、経営者個人の死や病気によって事業が途絶えるリスクが低いと判断されるため、事業継続性という観点でも法人が有利とされます。
個人事業主の確定申告書が「信頼されにくい」側面
- 「公私混同」のリスク:
個人事業主の場合、事業用とプライベート用の資金管理が曖昧になりがちです。事業用口座と個人口座が一つであったり、家計費が事業経費に紛れていたりすると、金融機関は「この確定申告書が本当に事業の実態を正確に表しているのか?」という疑問を抱きやすくなります。これが決算書の信頼性を損なう大きな要因となります。
- 会計処理の任意性:
個人事業主の会計処理は、法人に比べて柔軟性が高い反面、厳密さが不足しがちです。青色申告承認を受けていれば比較的厳格ですが、それでも法人ほど詳細な会計基準は求められないため、金融機関はより慎重な評価を行う傾向にあります。
2. 法人が融資で「圧倒的に有利」とされる具体的理由
決算書の信頼性の違いに加え、法人格を持つこと自体が、融資審査において有利に働く様々な側面をもたらします。
法人が融資で有利な主なポイント
- 社会的な「信用力」の高さ:
法人という形態は、個人事業主と比較して社会的な信用度が高いと評価されます。これは金融機関だけでなく、大口取引先や仕入先との信頼関係構築にも好影響を与え、結果的に事業の安定性・成長性を示すことにつながります。
- 資金調達手段の多様性:
銀行融資だけでなく、ベンチャーキャピタルからの出資、社債の発行、クラウドファンディングなど、個人事業主には利用できない多様な資金調達手段の選択肢が広がります。これは、事業規模拡大の際に大きな強みとなります。
- 融資限度額や期間の優遇:
一般的に、法人の方が個人事業主よりも、より高額な融資や、長期的な融資を受けられる可能性が高まります。これは、法人の返済能力や事業継続性に対する金融機関の評価が背景にあります。
- プロフェッショナルなイメージ:
金融機関の融資担当者から見ても、法人相手の方が、事業計画や財務状況の提示が体系的であると期待されやすく、スムーズなコミュニケーションや審査が期待できるという側面も少なからず存在します。
当税理士事務所からのアドバイス:安易な法人化は禁物!
法人化は融資を有利に進める一つの強力な手段ですが、法人化には設立費用、毎年の維持コスト(税金、社会保険料など)、社会保険加入義務、複雑な経理処理といった、個人事業主にはない新たな負担も発生します。融資だけを理由に性急に法人化するのではなく、事業の成長段階や将来のビジョン、税金・社会保険料のシミュレーションなど、総合的な視点から最適なタイミングでの法人化を検討することが極めて重要です。当事務所では、法人化のメリット・デメリットを丁寧に解説し、お客様にとって最適な事業形態の選択をサポートいたします。
3. 法人・個人事業主共通!融資成功を左右する3つの絶対条件
たとえ法人のほうが融資で有利であるとはいえ、単に法人であれば無条件で融資が受けられるわけではありません。法人であっても個人事業主であっても、金融機関が融資の可否を判断する上で共通して厳しくチェックする重要ポイントが存在します。これらをクリアすることが、融資成功の絶対条件となります。
1. 事業の「黒字化」と「返済能力」
- 安定した利益実績:
最も基本的なことですが、事業が安定して利益(黒字)を出しているかどうかは、金融機関が最も重視するポイントです。過去の決算書(確定申告書)において、継続的な黒字を計上していることは、返済能力の最も明確な証拠となります。
- 赤字の場合の対応:
もし一時的に赤字が発生していても、その原因が明確であり、今後の具体的な改善計画と実現可能性を説得力を持って説明できれば、融資の可能性は残ります。ただし、漫然とした赤字の継続は、融資を極めて困難にします。
2. 自己資金(貯蓄)の充実度
- 事業への本気度とリスク許容度:
金融機関は、借り手がどの程度の自己資金を事業に投じているかを重視します。自己資金が多いほど、事業への経営者自身の本気度や、万が一の事態に対するリスク許容度が高いと評価されます。これは、融資の返済を滞らせない信頼性にも繋がります。
- 目安は融資希望額の1/3以上:
特に創業融資の場合、融資希望額の1/3から半分程度の自己資金を用意することが望ましいとされています。
3. 「事業計画書」の具体性と実現可能性(特に創業融資)
- 創業融資の生命線:
事業実績がない「創業融資」の場合、過去の決算書が存在しないため、事業計画書が融資審査の生命線となります。金融機関は、事業計画書を通じて、あなたの事業の将来性、成長性、そして返済能力を総合的に判断します。
- 説得力のある事業計画書の構成要素:
金融機関が「この事業は成功する」と確信できるような、具体性と実現可能性に富んだ事業計画書には、以下の要素を盛り込む必要があります。
- 事業内容の明確化:誰に、何を、どのように提供するのかを具体的に。
- 市場分析とターゲット顧客:市場規模、競合、自社の優位性、顧客層の明確化。
- 具体的な資金使途:融資金を何に、いくら、どのように使うのかを明確に。
- 綿密な資金計画:売上・費用見込み、損益計画、キャッシュフロー計算(数年分)など、具体的な数値目標。
- 説得力のある返済計画:上記資金計画に基づき、どのように融資を返済していくかを示す。
- 経営者の経験と熱意:経営者のこれまでのキャリア、事業への情熱、専門知識、資格などをアピール。
まとめ:融資成功には、信頼できる「決算書」と「税理士」の存在が不可欠
事業資金の融資において、一般的に法人のほうが有利であると言われるのは、「決算書の信頼性」と「資金の公私分離の明確さ」が大きな要因です。これにより、金融機関は法人の財務状況をより正確に把握し、返済能力を評価しやすいためです。
しかし、法人・個人事業主の形態にかかわらず、事業が黒字であること、そして練り上げられた質の高い事業計画書の存在は、融資を成功させるための共通かつ絶対的な条件となります。
当税理士事務所では、お客様の事業の形態(法人・個人事業主)を問わず、融資獲得を強力にサポートしています。
- 金融機関が評価する「信頼性の高い決算書」作成支援: 適正な会計処理に基づいた、金融機関が融資審査で重視するポイントを押さえた決算書を作成します。
- 融資担当者を納得させる「精度の高い事業計画書」策定支援: お客様の事業の強みや将来性を最大限にアピールできるよう、具体的かつ実現可能性の高い事業計画書作成をサポートします。
- 金融機関との交渉アドバイスと面談同行: 融資担当者との面談に向けた準備や、質問への的確な対応方法について具体的なアドバイスを提供。必要に応じて面談に同行し、専門家として経営者様をサポートします。
- 資金調達全般のコンサルティング: 融資だけでなく、補助金・助成金活用など、お客様の事業に最適な資金調達戦略を多角的にご提案します。
資金調達は、事業の成長を加速させる上で非常に重要なステップです。お一人で悩んだり、複雑な書類作成に時間を費やしたりする前に、ぜひ当税理士事務所にご相談ください。お客様の事業に最適な資金調達の道筋を、共に探し、実現に向けて全力でサポートいたします。
現在の融資状況や、今後の事業展開について、具体的なご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。初回相談は無料です。

