別会社設立による節税|法人税を抑える分社化の実務と注意点

更新日:2025年8月

1. なぜ別会社設立が節税になるのか?

中小企業の税負担を軽減する有効な手法の一つが、「別会社設立による分社化」です。これは、単一法人で利益を集中させるのではなく、複数の法人に利益を分散させることで、法人税の軽減税率を最大限に活用する戦略です。

現行制度では、資本金1億円以下の中小法人に対しては、年800万円以下の所得に軽減税率(15%)が適用され、実効税率は約23.2%です。一方、800万円を超える部分については約33.6%となっており、これが節税スキームの起点となります。

2. 節税効果の具体例

年間所得が1,200万円の会社を例に考えてみましょう。

  • 単一法人の場合:
    800万円 × 23.2% = 185.6万円
    400万円 × 33.6% = 134.4万円
    合計:320万円
  • 2法人に分割し、各600万円の利益とした場合:
    600万円 × 23.2% × 2社 = 278.4万円

このように、分社化によって年間40万円以上の法人税を節減できる可能性があります。

3. 節税以外のメリット

  • 事業リスクの分散:倒産リスクの隔離や債務保証の切り離しが可能。
  • 事業承継・M&A対策:部門単位での承継や売却が容易になる。
  • 社会保険料の最適化:役員報酬を分散することで保険料負担が軽減する可能性。

4. 実務上の留意点と税務リスク

分社化による節税は、あくまで「実体のある法人運営」が前提です。名目的な法人設立は、税務当局から否認される可能性が高くなります。

  • 実体のない法人に対しては、実質的所得者に課税する。
  • 同族会社グループ課税のリスク:
    経営実態が一体と判断されると、課税される可能性あり。
  • 租税回避行為の否認:
    法人税法132条:経済合理性を欠く行為・計算の否認。

5. 参考となる裁決事例・判例

節税目的の分社化に対して、税務当局が否認した事例も存在します。以下は実際に争われた代表的な例です。

同族会社が複数法人を設立し、所得分散を図ったが、資金・人材・取引先が一体であることから、実質的に同一法人と認定され、課税処分が是認された。

複数会社に事業を分離していたが、代表者・取引・意思決定が一元的だったため、「一体性が高い」と判断され、課税処分が維持された。

6. 節税スキームの応用事例

  • 役員報酬の分散:社会保険料・所得税の最適化。
  • 営業法人と管理法人の分離:業務効率と節税の両立。
  • 業種ごとの法人化:許認可や取引上の要請への対応。

7. まとめ

別会社の設立による節税は、制度の仕組みを正しく理解し、実態を伴った法人運営を行うことで初めて有効に機能します。 単なる税負担の回避を目的とした形式的な分社化は、税務調査で否認されるリスクが高く、正当な経済合理性が求められます。

節税・事業承継・資産防衛などの目的に応じた法人設計を行うには、税理士等の専門家のサポートが不可欠です。ご検討の際は、必ず専門家へ相談されることをおすすめします。

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