会社の設立準備がいよいよ大詰めを迎える。あなたの頭の中には完璧な事業計画と未来への熱い情熱が渦巻いていることでしょう。
しかし、その計画を現実の世界で動かすための「燃料」、すなわち「創業融資」をどのタイミングで申し込むべきか。その極めて重要で、そして一度しか選択できない「タイミング」の問題に頭を悩ませてはいませんか?
会社の「登記」を済ませて法人格を手に入れてから申し込むべきか?
それとも、まだ個人(発起人)の段階で先に融資の内諾を得ておくべきか?
この選択は単なる手続きの順番の問題ではありません。それはあなたの起業における「リスク」の大きさ、「スピード感」、そして最終的に手にする「資金の額」までを左右する、極めて高度な「戦略的判断」なのです。
間違ったタイミングで行動すれば、本来であれば避けられたはずのリスクに自ら飛び込んでしまったり、あるいは無駄な時間とコストを浪費してしまったりする可能性があります。
この記事は、そのあなたの会社の船出の成否を分ける重要な「タイミング」の選択について、あなたに完璧な羅針盤を提供する究極の戦略ガイドです。会社設立「前」に申し込むメリットとその裏に潜む罠。会社設立「後」に申し込むメリットとその覚悟すべきリスク。そして私たち専門家がお客様の成功を最大化するために実際に用いている「第3の選択肢」。その全ての知識と実践的なノウハウをここに公開します。
第1章:【基本の理解】そもそも会社設立「前」に融資は申し込めるのか?
まず多くの起業家が抱く最も基本的な疑問から解消しましょう。「まだ存在しない会社のために、お金を借りることなどできるのか?」と。
答えは、「はい、明確に可能です」。
特に創業者にとって最大の味方である日本政策金融公庫は、これから事業を始める意欲ある起業家を支援することをその使命としています。そのため彼らの「新創業融資制度」などの申込要件には「新たに事業を始める方」が明確に含まれています。
この場合、あなたは「株式会社〇〇の代表取締役」としてではなく、「株式会社〇〇をこれから設立しようとしている発起人(創業者)の△△(あなたの個人名)」として融資を申し込むことになります。
そして審査は設立後の会社に対してではなく、あなたのその「事業計画」とあなた「個人」のこれまでの経験や自己資金の準備状況に対して行われます。
この「設立前」と「設立後」、2つの選択肢が法的に確かに存在することをまずご理解ください。
第2章:【リスク回避の道】会社設立「前」に申し込むメリットとデメリット
まず、より慎重でリスクを回避したいと考える起業家が検討すべき「設立前申請」というルートについて、その光と影を徹底的に分析します。
メリット1:【最大のメリット】「もし融資が下りなかったら…」という最悪のリスクを完全に回避できる
これが設立前申請を選ぶ最大の、そして最も合理的な理由です。
株式会社の設立には、たとえご自身で手続きを行ったとしても、定款の認証手数料や登録免許税といった法定費用だけで最低でも約25万円の現金が出ていきます。この費用は一度支払ってしまえば原則として返ってはきません。
もしあなたが設立「後」に融資を申し込み、そして万が一その審査に落ちてしまったらどうなるでしょうか。あなたは25万円という貴重な自己資金を失い、そして事業計画そのものをゼロから見直さなければならないという最悪の状況に陥ります。
しかし設立「前」に申請すれば、まず融資の内諾(「この計画なら〇〇万円まで融資可能です」という金融機関からの非公式な約束)を得てから、安心して会社設立の手続きに進むことができます。融資という事業の成否を分ける最大の不確定要素を最も早い段階で確定させることができる。この精神的な安心感は計り知れません。
メリット2:融資の内諾を「交渉の武器」にできる
例えばあなたが店舗を開業する場合。良い物件が見つかってもその大家さんや不動産会社は、「本当にこの人は家賃を払い続けられるのだろうか?」という当然の懸念を抱きます。
その際、「日本政策金融公庫からすでに〇〇万円の融資の内諾を得ています」という一言は、あなたの信用力を劇的に高める強力な「武器」となります。これにより、より有利な条件で賃貸借契約を結べるといった副次的な効果も期待できるのです。
デメリット(罠):【要注意】融資されたお金の「会計処理」が複雑になる
一見するとメリットだらけに見える「設立前申請」ですが、その裏には専門家でなければまず気づかない税務・会計上の大きな「罠」が潜んでいます。
設立前に融資が実行された場合、そのお金はまだ存在しない「会社」の口座ではなく、あなた「個人」の口座に振り込まれます。
そしてそのお金を、設立後のあなたの会社の口座へ移動させる際、そのお金は会計上どのような扱いになるのでしょうか?
- パターンA:会社への「資本金」として組み入れる(増資)
この場合、あなたは設立登記とは別に「増資」の登記手続きを法務局で行う必要があります。これには登録免許税(増資額の0.7%、最低3万円)と司法書士への手数料が別途発生します。 - パターンB:会社への「貸付金」として処理する
最も一般的でシンプルなのがこの方法です。あなた個人があなたの会社へそのお金を「貸し付けた」という形(会計上は「役員借入金」)で処理します。会社は将来利益が出た時に、あなた個人へこの借金を返済していくことになります。
プロの視点:
この個人から法人への資金移動のプロセスは、法務・税務の両面で正確な会計処理と適切な契約書の作成(金銭消費貸借契約書など)が不可欠です。この処理を誤ると、税務調査で「社長個人への実質的な給与(役員賞与)である」と指摘され、多額の追徴課税を受けるといった深刻なリスクを生んでしまうのです。
第3章:【王道の選択】会社設立「後」に申し込むメリットとデメリット
次に、多くの起業家が選択する、より一般的で王道とも言える「設立後申請」というルートについて、その光と影を分析します。
メリット1:【最大のメリット】手続きがシンプルでクリーン
これが設立後申請を選ぶ最大の理由です。
あなたは「株式会社〇〇 代表取締役」として堂々と融資を申し込みます。そして審査を通過し実行された融資は、あなたの会社の「法人口座」へ直接振り込まれます。
そこには設立前申請のような、個人口座を経由したり、個人から法人へお金を貸し付けたりといった複雑で専門的な会計処理は一切介在しません。お金の流れが極めてシンプルでクリーンなのです。これはその後の経理処理の負担を大幅に軽減します。
メリット2:金融機関への「本気度」がより強く伝わる
会社の設立登記をすでに完了させているという「事実」。それは融資担当者に対して、あなたのこの事業にかける「後戻りのできない覚悟」を何よりも雄弁に物語ります。
「この人は口先だけでなく、すでに自らのリスクで設立費用という具体的なコストを支払い、事業をスタートさせている」。その既成事実が、あなたの事業計画全体の信頼性をさらに高める効果があるのです。
デメリット(リスク):【最大の恐怖】融資が否決された場合、全てを失う
これが設立後申請が覚悟を要するハイリスクな選択である理由です。
あなたはすでに25万円以上の設立費用を支払い、そして場合によってはオフィスの賃貸契約まで結んでしまっているかもしれません。
その後戻りのできない状況で、もし頼みの綱であった創業融資が否決されてしまったら…?
あなたは初期費用を丸々失うだけでなく、事業計画そのものをゼロから見直さなければならないという、まさに八方塞がりの絶望的な状況に追い込まれます。
第4章:【プロの選択】「ハイブリッド戦略」という第3の道
では、私たち起業支援のプロフェッショナルは、この二律背反の選択に対してどのような最適解を導き出すのでしょうか。
その答えが、設立「前」と「後」の両方のメリットを最大限に享受し、デメリットを最小限に抑える「ハイブリッド戦略」です。
この戦略は、専門家でなければ実行不可能な高度なプロジェクトマネジメントを要します。
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STEP 1:【設立前】完璧な「事業計画書」の先行作成
まず、会社設立の手続きと完全に同時並行で、日本政策金融公庫の審査基準を120%満たす完璧な事業計画書を作り上げます。 -
STEP 2:【設立前】金融機関との「事前相談(根回し)」
ここがプロの腕の見せ所です。私たちは正式な申込書を提出する前に、完成した事業計画書を手に日本政策金融公庫の担当者と「事前相談」のアポイントを取ります。そしてその場で事業の将来性やあなたの強みを徹底的にプレゼンテーションし、「この計画であればおおよそ〇〇万円程度の融資は前向きに検討可能でしょう」という担当者からの非公式な「内諾(感触)」を引き出すのです。 -
STEP 3:【登記実行】内諾を得てから会社を設立
この確かな「内諾」という安心材料を手に入れて初めて、私たちは提携する司法書士にGOサインを出し、会社設立の登記申請を実行します。これにより「融資否決」という最大のリスクはほぼ完全に排除されます。 -
STEP 4:【設立後】最短での正式申し込み
そして登記が完了し登記簿謄本が手に入ったまさにその日に、すでに準備万端の申込書類一式を「株式会社〇〇 代表取締役」として正式に提出します。
この戦略により、あなたは、
- 設立前に融資の成功確率をほぼ100%に近づけ(リスク回避)
- 設立後にクリーンな形で会社の口座へ直接資金を受け入れる(シンプルさ)
という、両方のメリットを同時に手に入れることができるのです。
第5章:【FAQ】「創業融資のタイミング」に関する一歩進んだ疑問
最後に、融資の申し込みタイミングについてさらに深く検討されている起業家の皆様から、私たちが特によくお受けする専門的なご質問とその回答をQ&A形式でまとめました。
Q1. 設立前に融資の内諾を得ましたが、実際に承認された融資額が希望額より少なくなってしまいました。どうすれば良いですか?
A1. これは十分に起こり得る事態です。内諾はあくまで非公式な感触であり、最終的な審査で計画の一部が保守的に評価され減額されることはあります。
取るべき行動
- 減額理由の推定:担当者は具体的な理由は教えてくれません。しかし私たちはこれまでの経験から、「おそらく運転資金のこの部分が過大だと判断されたのだろう」「設備投資のこの項目の必要性が十分に伝わらなかったのだろう」といった減額理由を高い精度で推定することができます。
- 事業計画の見直し(ダウンサイジング):その推定に基づき、事業計画を減額された融資額の範囲内で実行可能な形に見直します。例えば高額な内装工事の一部をDIYに切り替える。広告宣伝費をより費用対効果の高いWeb広告に集中させるといった具体的な代替案を検討します。
- 追加の資金調達の検討:もしどうしても当初の計画が譲れないのであれば、減額された部分を補うための別の資金調達手段(例えば自治体の制度融資や親族からの贈与など)を速やかに検討し始めます。
重要なのはパニックにならず減額という「現実」を受け入れ、その制約の中でどうすれば事業を成功させられるかという次なる「戦略」を冷静に、そして迅速に立て直すことです。
Q2. 設立前に融資されたお金を、設立費用(登録免許税など)に充てることはできますか?
A2. はい、可能です。そしてそれは設立前申請の大きなメリットの一つです。
設立前に融資を申し込む際、事業計画書の中の「必要な資金」の項目に「会社設立費用」として登録免許税や定款認証手数料などの実費を明確に計上しておきます。
そうすれば融資が実行された際に、その資金の中からこれらの設立費用を支払うことが正当な「資金使途」として認められます。これにより、あなたはご自身の本当にプライベートな預貯金を一切取り崩すことなく会社を設立することが可能になるのです。
Q3. 専門家が言う「事前相談」と自分で行う「事前相談」は何が違うのですか?
A3. その「質」と「効果」が全く異なります。
ご自身で行う場合:
まだ完成度の低いアイデア段階の計画を持って金融機関の窓口へ行くと、担当者からは「まずはご自身で事業計画をしっかりと固めてきてください」といった一般的なアドバイスしか得られないことがほとんどです。
専門家が行う場合:
私たちは、金融機関がそのまま審査に回せるレベルまで完璧に作り込まれた「プロ仕様の事業計画書」を持参します。そして私たちはあなたの代理人として、その計画の全ての数字の根拠を専門用語で論理的に説明します。
さらに、私たちのような日常的に融資の案件を持ち込んでいる専門家と金融機関の担当者との間には一定の「信頼関係」がすでに構築されています。「あの先生が太鼓判を押して持ってきた案件なら、きっと見込みがあるだろう」。この目に見えない「信用」が担当者の前向きな姿勢を引き出すのです。
つまり、専門家による「事前相談」とは単なる相談ではなく、限りなく本審査に近い「模擬試験」であり、そして強力な「プレゼンテーション」なのです。
Q4. 設立「後」の申請の場合、「いつまで」に申し込むべきですか?
A4. 日本政策金融公庫の「新創業融資の特例」を利用する場合、その対象者は「事業開始後、税務申告を2期終えていない方」と定められています。
つまり、あなたの会社が2回目の決算申告を終えてしまうと、この最も有利な創業融資制度を利用する「権利」は永久に失われてしまうのです。
プロの視点:
私たちは、たとえ自己資金にある程度の余裕があるお客様であっても、設立後できるだけ早い段階でこの「新創業融資の特例」を一度利用しておくことを強くお勧めしています。
なぜなら、この制度を利用しそして計画通りに返済を続ける。その「実績」こそがあなたの会社の最も価値のある「信用履歴(クレジットヒストリー)」となり、将来事業が拡大し民間金融機関からのより大きな融資が必要になった際に極めて有利に働くからです。創業期にしか使えないこの「信用作りの特権」を使わない手はありません。
結論:あなたの船出を「運」に任せてはいけない
創業融資の申し込みのタイミング。それはあなたの会社の最初の、そして最も重要な羅針盤のセッティングです。
その一度しかできない重要なセッティングを、「とりあえず登記してから考えよう」といった行き当たりばったりの「運」に任せてはいけません。
私たち荒川会計事務所は、あなたの会社のこの最も重要な船出のタイミングを完璧に、そして戦略的にプロデュースする経験豊富な「航海士」です。
あなたの「船出」のタイミング、本当に今のままで大丈夫ですか?
その一度きりの重要な選択を、私たち専門家と共に考えませんか?
まずは無料相談で、あなたの事業にとっての「最高のタイミング」を見つけましょう。
記事執筆監修者
荒川会計事務所(経営革新等支援機関(認定支援機関))代表税理士・登録政治資金監査人・行政書士の荒川 一磨です。
会社設立と創業融資を得意とし、何でも相談できる話しやすいパートナーであることを心掛けている事務所です。
事務所所在地 〒160-0022 東京都新宿区新宿2-5-16 霞ビル8F
電話番号 0120-016-356
所属 東京税理士会四谷支部・東京行政書士会新宿支部
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