あなたの頭の中には世界を変えるかもしれない革新的なWebサービスやSaaSのアイデアがある。その実現には物理的な店舗も高価な機械も大量の在庫も必要ない。必要なのは一台のパソコンと、あなたの卓越した技術力、そして燃えるような情熱だけだ。
「だから私たちの事業は低コストで始められる」。そう考えてはいませんか?
それはIT・Webサービス事業が持つ最大の強みであると同時に、創業融資の審査においてあなたの足をすくう最大の「落とし穴」でもあります。
なぜなら、あなたが金融機関の融資担当者にこう語った瞬間、
彼らの頭の中にはいくつもの深刻な「クエスチョンマーク」が灯るからです。
「形のないソフトウェアに、なぜ数百万もの大金が必要なんだ?」
「売上計画が横文字の専門用語ばかりで、どうやって儲けるのかさっぱり分からない…」
「このアイデア、本当にこの人でなければ実現できないのか?」
この記事は、その金融機関が抱く根源的な「疑念」をあなたの事業への揺るぎない「確信」へと変えるための、究極の「翻訳マニュアル」です。飲食店や小売店といった「目に見える」ビジネスとは全く異なるあなたの事業の真の価値を、どのようにすれば彼らが理解できる「言語」で伝えることができるのか。
新宿という日本で最も多くのITベンチャーが生まれる街で、数えきれないほどの「0」と「1」のアイデアを現実の「資金」へと変えてきた私たちが、その全ての「翻訳術」をここに徹底的に公開します。
第1章:【審査官の思考】なぜIT事業は融資担当者を不安にさせるのか?
まず、なぜあなたの革新的なアイデアが保守的な金融機関の担当者を不安にさせてしまうのか。彼らがあなたの事業計画書を見た時に、 instinctively感じる3つの「不信感」の正体を理解しましょう。
IT事業が金融機関を不安にさせる「3つの不信感」
| 不信感 | 審査官の本音(=なぜ不安か) |
|---|---|
| 1. 資産の不在 | 担保になる「モノ」がない。ソースコードの価値が評価できない。 |
| 2. 収益モデルの不可解さ | 「SaaS」「LTV」など横文字ばかりで、どう儲けるか分からない。 |
| 3. 資金使途の不透明さ | 「開発費」や「広告費」に本当にそんな大金が必要か、妥当性が判断できない。 |
第2章:【5つの証明】審査官の「不信」を「確信」に変える最強の事業計画書
では、これらの根深い「不信感」を払拭し、あなたの事業の真の価値を証明するためにはどうすれば良いのでしょうか。その答えが以下の5つの「証明」をあなたの事業計画書の中に完璧に実装することです。
審査官の「不信」を「確信」に変える5つの証明
| 証明すべきこと | 具体的な対策(=武器) |
|---|---|
| 1. あなたの「経験」 | 「なぜあなたか?」を過去の実績(職務経歴)と課題意識で結びつける。 |
| 2. アイデアの「可視化」 | モックアップ、画面遷移図、動く試作品(MVP)を準備し、デモする。 |
| 3. 収益モデルの「翻訳」 | 専門用語を封印。「広告費→無料顧客→有料顧客→売上」の流れを簡単な数字で示す。 |
| 4. 資金使途の「投資対効果」 | 開発費や広告費を「消費」ではなく、将来の売上を生む「投資」として説明する。 |
| 5. 市場の「手応え」 | 事前登録者数、顧客からの推薦状(LOI)、β版の感想など「トラクション」を示す。 |
証明1:あなたの「経験」こそが最強の「担保」であると証明する
物理的な担保がないあなたの事業において、唯一にして最強の担保資産。それが経営者であるあなた自身の「経験」と「専門性」です。
「創業の動機」や「経営者の略歴」の欄で、なぜこの事業を他の誰でもなく「あなた」が成功させられるのか。その絶対的な根拠を過去の実績と結びつけて語ります。
NGな書き方:「IT企業で10年間エンジニアとして勤務していました。」
OKな書き方:「私は前職の〇〇株式会社(業界:不動産テック)で賃貸管理システムのプロジェクトリーダーとして5年間従事してまいりました。その中で、多くの中小不動産管理会社が高機能すぎる既存のシステムを使いこなせず、未だに非効率な手作業に苦しんでいるという業界特有の深い課題を目の当たりにしました。今回私が開発するSaaSは、その中小の現場に徹底的に特化したシンプルで低価格なソリューションです。私のこの15年間の業界知識と開発経験こそが、競合他社には決して真似のできない最大の参入障壁です。」
証明2:あなたの「アイデア」が「触れるモノ」であるかのように証明する
形のないあなたのサービスを、担当者があたかも手で触れることができるかのように「可視化」する。これが無形資産の価値を伝えるための鍵です。
- モックアップ、画面遷移図:あなたのアプリやWebサービスの具体的な画面デザイン案や、ユーザーがどのように操作するのかという画面遷移図を作成し、補足資料として提出します。
- MVP(Minimum Viable Product):もし可能であれば、製品の核となる最小限の機能だけでも実装した「動く試作品(MVP)」を準備しておきましょう。面談の場で実際にノートパソコンを開き、そのMVPを担当者の目の前でデモンストレーションする。その具体的な「体験」は、どんな雄弁な言葉よりもあなたのアイデアの価値と実現可能性を強力に証明します。
証明3:あなたの「収益モデル」を「小学生でも分かる言葉」で証明する
SaaS、LTV、CAC…。それらの専門用語を一旦全て封印してください。そしてあなたのビジネスモデルを、中学生の甥っ子に説明するつもりでシンプルに、そして具体的に翻訳します。
OKな説明(SaaSモデルの例)
「私たちのサービスは月額制のソフトウェアです。お客様は月々1万円をお支払いいただくことで、面倒な請求書作成の時間を半分に短縮することができます。」
「売上計画は以下の通りです。まず開業後最初の3ヶ月間で30万円のWeb広告費を投下します。1クリックあたりの単価が100円、クリックからの無料トライアルへの転換率が5%と想定されるため、3ヶ月で150社の無料トライアル顧客を獲得できる見込みです。過去の類似サービスのデータから、無料トライアルから有料顧客への転換率を20%と保守的に見積もっております。したがって3ヶ月後には30社の有料顧客(月商30万円)を確保できる計算となります。」
この「広告費(投資)→ 見込み客(クリック)→ 無料顧客 → 有料顧客(売上)」というお金の流れを具体的な数字の連鎖で示すこと。それが担当者の不可解さを納得へと変える唯一の方法です。
証明4:あなたの「資金使途」が「消費」ではなく「投資」であると証明する
なぜ数百万ものお金が必要なのか。その一つひとつの使い道を、それが将来何倍ものリターンを生み出す「戦略的な投資」であるという文脈で語ります。
- 開発費(人件費):「私自身の役員報酬月額40万円は単なる生活費ではありません。これは本ソフトウェアの核となる〇〇機能の開発を6ヶ月で完了させるための最も重要な開発投資です。」
- 広告宣伝費:「この100万円の広告費は、前述の顧客獲得単価(CPA)のシミュレーションに基づけば、〇〇社の有料顧客を獲得し将来にわたって〇〇〇万円の生涯顧客価値(LTV)を生み出すための、極めて費用対効果の高い先行投資です。」
証明5:あなたの事業がすでに「顧客」に求められていると証明する
まだ売上が1円も立っていないあなたの事業。その成功確率を証明する最強の証拠。それが「トラクション(Traction)」です。
トラクションとは、「市場があなたのアイデアを受け入れ始めている」という客観的な手応えのことです。
- 事前登録者数:「まだ製品は完成しておりませんが、ティザーサイトを公開したところ、すでに500名の方が事前登録してくださっています。」
- 顧客からの推薦状:「〇〇株式会社様からは『このサービスが完成したらぜひ導入したい』という基本合意書(LOI)をいただいております。(添付資料参照)」
- β版テスターの熱狂的な声:「β版を試していただいた10名のユーザーからは『これなしの仕事はもう考えられない』といった非常にポジティブなフィードバックを得ております。」
これらのたとえ小さくても具体的な「手応え」は、あなたの事業が単なる机上の空論ではないという何よりの証明となるのです。
第3章:【FAQ】「IT・Webサービス事業の融資」に関する一歩進んだ疑問
最後に、IT・Webサービス事業の資金調達を具体的に検討されている起業家の皆様から、私たちが特によくお受けする専門的なご質問とその回答をQ&A形式でまとめました。
Q1. 私の事業は100%ソフトウェアです。「設備資金」として計上できるものは何もないのでしょうか?
A1. 素晴らしいご質問です。一見すると何もないように思えますが、実はIT事業においても「設備資金」として計上できる、あるいはそうすべき項目は存在します。
設備資金として計上するメリットは、一般的に返済期間を運転資金よりも長く設定できる可能性があるという点です。
IT・Web事業で「設備資金」として計上できるもの
| カテゴリ | 具体例 |
|---|---|
| ハードウェア | 開発用の高性能PC、サーバー機器、ネットワーク機器 |
| ソフトウェア | 高額な開発ソフト、デザインソフト、業務用ライセンス(年間プランなど) |
| 外注費用 | 外部に委託する自社コーポレートサイト、サービスサイトの「構築費用」 |
| 不動産関連 | (もし借りる場合)事務所の保証金、敷金、内装工事費 |
設備資金として計上を検討すべき項目
これらの項目を正確に設備資金として切り分け、それぞれに業者からの「見積書」を添付することで、あなたの資金計画の透明性と信頼性は大きく向上します。
Q2. 私自身の開発人件費(役員報酬)は運転資金としてどのくらい見込んでおくべきですか?
A2. これはIT事業の資金計画における最重要ポイントです。なぜなら、あなたの事業の最大の「仕入」は、あなた自身の「時間」と「労働力」だからです。
融資担当者は、「この経営者は融資が実行された後、製品が完成し売上が立つまでの数ヶ月間、どうやって生活していくのだろうか?」という極めて現実的な疑問を抱きます。
プロの視点:
私たちは事業計画書を作成する際に、必ずあなた個人の「家計の収支表」を作成します。そして、あなたが最低限生活していくために必要な月々の金額(例えば25万円)を算出します。
そして、その金額を基に「社長への役員報酬として月額25万円」を会社の最も重要な「固定費」として運転資金の見積もりに計上するのです。
そして、その最低でも6ヶ月分、理想を言えば1年分(25万円 × 12ヶ月 = 300万円)を運転資金として融資希望額に含める。このロジカルで現実的な人件費計画こそが、担当者に「この経営者は自分自身の生活設計まで含めて堅実な資金計画を立てている」という絶対的な安心感を与えるのです。
Q3. 事業がまだ研究開発(R&D)の段階で、具体的な売上計画が立てられません。それでも融資は受けられますか?
A3. はい、可能性は十分にあります。ただしその場合、事業計画書の主役が「売上計画」から「開発計画(マイルストーン)」へと変わります。
売上がまだ見通せない段階の事業において、金融機関が評価するのは、「この資金を投下することで、この事業はどのような具体的な進捗を遂げるのか」という開発のロードマップです。
事業計画書への記載例
「今回ご融資いただく500万円は、今後12ヶ月間の開発費用に充当いたします。この資金により、私たちは以下の3つの開発マイルストーンを達成することをお約束します。」
- マイルストーン1(6ヶ月後):核となる〇〇機能を実装したβ版の完成。
- マイルストーン2(9ヶ月後):限定した100社のモニター企業によるβ版のテスト運用とフィードバック収集の完了。
- マイルストーン3(12ヶ月後):β版のフィードバックを基に改良を加え、正式な商用版(ver.1.0)のリリース。
このように、融資資金がどのように事業の「価値」を高め具体的な「成果物」を生み出すのか、そのマイルストーンを明確に提示することで、たとえ売上計画が不透明であっても融資の承認を勝ち取ることは十分に可能なのです。
結論:あなたの「技術」を、金融機関が理解できる「ビジネス」へ
IT・Webサービス事業の創業融資を成功させること。
それは、あなたのその革新的な「技術」や「アイデア」を、
- 金融機関という伝統的な価値観を持つ組織が、
- 唯一理解できる「リスク」と「リターン」という言語で、
- 完璧に、そして論理的に「翻訳」する、
という高度なコミュニケーションのプロセスに他なりません。
私たち荒川会計事務所は、あなたのその素晴らしい「技術の言語」の最高の「翻訳家」です。
あなたの「アイデア」の本当の価値、金融機関に伝わっていますか?
その革新的なアイデアを現実の「資金」へと変えるために。
まずは無料相談で、あなたのビジネスプランを私たち「翻訳のプロ」にお聞かせください。
記事執筆監修者
荒川会計事務所(経営革新等支援機関(認定支援機関))代表税理士・登録政治資金監査人・行政書士の荒川 一磨です。
会社設立と創業融資を得意とし、何でも相談できる話しやすいパートナーであることを心掛けている事務所です。
事務所所在地 〒160-0022 東京都新宿区新宿2-5-16 霞ビル8F
電話番号 0120-016-356
所属 東京税理士会四谷支部・東京行政書士会新宿支部
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