【創業融資と「助成金・補助金」】申請の順番と賢い併用術|絶対に間違えてはいけない戦略

会社の設立準備と並行して、あなたは今、事業をスタートさせるための「燃料(資金)」を集めるべく奔走していることでしょう。

その時、あなたの目の前には2つの希望に満ちた「水源」が見えているはずです。

  • ①「創業融資」:日本政策金融公庫などがあなたの「未来」を信じて貸してくれる、事業のメインエンジンとなるお金。
  • ②「助成金・補助金」:国や自治体があなたの特定の取り組み(雇用やIT化など)を支援してくれる、「返済不要」のありがたいお金。

そして多くの起業家がこう考えてしまいます。

「返さなくていい助成金があるなら、まずそっちから申し込もう」
「助成金が100万円採択されたから、その分、融資は100万円減らして申し込もう」

もしあなたがそのように考えているとしたら。それはあなたの会社の未来のキャッシュフローを完全に破壊する、創業期における最も致命的で回復不可能な「戦略的ミス」を犯そうとしているのと同じことです。

この記事は、そのあまりにも多くの起業家が陥る「甘い罠」の正体を徹底的に解き明かし、あなたの会社の資金調達を最大化するための究極の「併用戦略マニュアル」です。

なぜこの2つのお金は、その「申請の順番」を間違えた瞬間にあなたの会社を倒産(黒字倒産)へと導くのか。その恐ろしいキャッシュフローの真実と、

「『融資』の力を利用して、本来もらえなかったはずの『助成金』を獲りに行く」

という、専門家だけが実践する高度な併用術の全てを、新宿で数えきれないほどの企業の資金調達を成功させてきた私たちが徹底的に解説します。

第1章:【残酷な真実】「融資」と「助成金」は、流れる「時間」が真逆である

まず、この2つのお金の本質的な違いを理解してください。

それは「返済が必要か不要か」ではありません。それは「いつあなたの口座に振り込まれるか」という、「時間軸」の決定的な違いです。

①「創業融資」= あなたの「未来」に投資するお金

創業融資は、あなたがこれから実行しようとする「事業計画書」という名の「未来の設計図」に対してお金を貸し付けます。

  • ステップ1:「こんなお店を作りたい」という計画書を提出する。
  • ステップ2:審査が通る。
  • ステップ3:あなたの口座に「先」に1,000万円の現金が振り込まれる。
  • ステップ4:あなたは、その1,000万円を使ってお店を作る。

融資は、あなたの行動の「前」に実行される、「先払いのお金」です。

②「助成金・補助金」= あなたの「過去」に報いるお金

一方、助成金・補助金はあなたの「計画」には1円も支払われません。それは、あなたが計画を実行し「すでに行った過去の行動」に対して支払われます。

  • ステップ1:「こんなITシステムを導入したい」という計画書を提出し、「採択(内定)」をもらう。
  • ステップ2:あなたは、そのITシステムを業者に発注し、まずあなた自身のお金で全額(例:100万円)を支払う。
  • ステップ3:支払いが完了した領収書や成果物を全て揃え、「確かに100万円使いました」という分厚い「実績報告書」を提出する。
  • ステップ4:その報告書が厳格に審査され、承認される。
  • ステップ5:数ヶ月後、あなたの口座に「後」から補助金(例:50万円)が振り込まれる。

助成金・補助金は、あなたの行動の「後」に支払われる、「完全な後払い(精算払い)のお金」なのです。

第2章:【死の谷】なぜ「助成金ありき」の資金計画は100%破綻するのか?

この絶望的なまでの「時間軸」の違い。

この真実を理解しないまま「助成金をアテにする」という甘い計画を立てた起業家が陥る、2つの典型的な「破綻シナリオ」を見ていきましょう。

シナリオ1:【黒字倒産の罠】「採択」はされた。しかし実行する「金」がない

あなたは幸運にも、経済産業省の公募する「ものづくり補助金」で「1,000万円」の採択を勝ち取ったとします。

「やった!1,000万円手に入れた!」と喜んだあなた。しかしその補助金の交付要件にはこう書かれています。「補助率:2分の1」。

これは、あなたがまず「2,000万円」の最新の機械を全額自己資金で購入・支払いを完了させなければ、1,000万円の補助金は1円も振り込まれない、ということを意味します。

手元に2,000万円の現金がないあなたは、結局その素晴らしい「採択の権利」を行使することができず、補助金は絵に描いた餅となり、事業は頓挫します。

シナリオ2:【融資否決の罠】「助成金だのみ」の事業計画書

あなたは日本政策金融公庫の面談で、自信満々にこう語ります。

「私の事業は、開業半年後に〇〇助成金が300万円入金される予定です。ですから、その300万円を自己資金の一部と見なして融資をしてください」

その瞬間、融資担当者の表情は凍りつきます。

融資担当者の心の声
「『予定』?冗談じゃない。助成金や補助金は審査が厳格で不採択になるリスクも高い。入金は早くても半年、1年先だ。そんな不確定な未来のお金をアテにしなければ成り立たないこの事業計画は、『他力本願』であまりにも脆弱だ。もしその助成金が落ちたらどうするんだ?私たちの融資の返済も止まるじゃないか。…この案件は否決だ」

あなたの事業計画のプラス要因として提示したはずの「助成金」が、逆にあなたの計画の「脆弱性」を証明する最悪の「マイナス要因」となってしまうのです。

第3章:【最強の併用術】「融資」でキャッシュを確保し、「助成金」を獲りに行く

では、どうすればこの2つの水源から正しく水を飲むことができるのでしょうか。

その答えこそが、私たち専門家が実践する「融資先行、助成金後追い」の原則です。

それは「創業融資」を「エンジン」とし、「助成金」を「ターボ」として機能させる戦略です。

【プロが実践する完璧な5ステップ】

STEP 1:【計画】「助成金ゼロ」でも成り立つ事業計画書を作る

まず、助成金や補助金の存在など一切なかったものとして、あなたの事業が自己資金と創業融資(例:1,000万円)だけで完全に自立して黒字化できる、という堅実な「事業計画書」と「資金繰り表」を完璧に作り上げます。

STEP 2:【融資】その計画書で「創業融資(1,000万円)」を満額勝ち取る

この計画書を日本政策金融公庫に提出します。面談でもし「助成金なども活用しますか?」と聞かれたら、こう答えます。

OKワード:「はい、もちろんです。ただし本計画は、助成金を一切アテにせず、ご融資と自己資金だけで完全に成り立つよう設計しております。その上で、私たちの〇〇という取り組み(例:IT化)がもし補助金の対象となるのであれば、専門家と相談しプラスアルファの財務強化策として申請を検討し、採択されれば貴庫への返済原資に充当します」

この答えが、「この経営者は堅実な計画を立てた上で、さらなる高みを目指す向上心もある」という120点の評価を生みます。

STEP 3:【実行】融資された「現金」で堂々と投資を実行する

あなたの口座に1,000万円が振り込まれます。あなたは、その潤沢なキャッシュを使い、事業計画に沿って、

  • 従業員を雇用し、給与を支払い、
  • ITシステムを業者に発注し、支払いを完了させます。

この時点で、あなたの会社は資金繰りの不安から完全に解放されています。

STEP 4:【申請】「過去の実績」として助成金・補助金を申請する

その支払いが完了した「領収書」や「雇用契約書」を完璧な「証拠」として添付し、満を持して「キャリアアップ助成金」や「IT導入補助金」に申請します。

STEP 5:【回収】数ヶ月後、「ボーナス」としてのキャッシュを手に入れる

数ヶ月後、あなたの口座に忘れた頃に助成金(数十万円)、補助金(数百万円)が振り込まれます。

このお金はあなたの事業の運転資金をさらに厚くする、まさに最強の「ボーナス(ターボ)」となり、あなたの会社の成長をさらに加速させるのです。

第4章:【専門家の価値】なぜこの併用術には「税理士」と「社労士」が不可欠なのか?

この一見完璧に見える戦略ですが、これには高度な専門知識と事務処理能力が要求されます。

①「助成金」と「補助金」の専門家は誰か?

まず、この2つの制度は申請先も専門家も異なります。

  • 助成金(厚生労働省系):主に「雇用」や「人材育成」に関する支援金です。(例:キャリアアップ助成金、人材開発支援助成金)
    → 専門家:社会保険労務士(社労士)
  • 補助金(経済産業省・自治体系):主に「新しい投資」や「革新」に関する支援金です。(例:ものづくり補助金、IT導入補助金、事業再構築補助金)
    → 専門家:税理士、中小企業診断士

②「最強のチーム」を編成する

つまり、あなたの会社の資金調達を最大化するためには、

  1. 税理士(私たち):「創業融資」の事業計画書と資金繰り表の作成を支援し、「エンジン」となる融資を勝ち取る。同時に「補助金」の申請に必要な財務計画を策定する。
  2. 社会保険労務士(私たちの提携パートナー):「助成金」の申請に必要な就業規則や雇用契約書の整備を行い、「ターボ」となる助成金を確実に獲りに行く。

という、専門家による完璧な「ワンストップ・チーム」を編成することが不可欠なのです。

私たち荒川会計事務所は、創業融資に精通しているだけでなく、あなたの事業に最適な助成金・補助金を見極め、それを獲得するための最強のパートナー(社労士など)と緊密に連携しています。

第5章:【FAQ】「融資と助成金・補助金」に関する一歩進んだ疑問

最後に、これらの制度の併用についてさらに深く検討されている起業家の皆様から、私たちが特によくお受けする専門的なご質問とその回答を、Q&A形式でまとめました。

Q1. 補助金(補助金)の「採択」は先に通りました。でも、それを実行するための現金がありません。この「採択通知書」を使って融資を受けることはできますか?

A1. これは、まさに第2章で解説した「黒字倒産の罠」に陥っている典型的なケースです。しかし解決策はあります。

結論から言うと、その「採択通知書」は、融資審査において非常に強力なプラスの資料となります。

金融機関の視点
「この事業計画は、経済産業省(など)の専門家の審査を一度通過した、お墨付きのプランである」
「融資を実行し、この設備投資が無事に完了すれば、数ヶ月後、確実に補助金(例:100万円)が入金され、当行の融資の返済原資が厚くなる」

あなたが取るべき行動
その「採択通知書」と補助金に申請した際の「事業計画書」、そして「設備投資の見積書」を全てセットにして金融機関(公庫や銀行)に、「補助金が入金されるまでのつなぎ資金として融資をお願いしたい」と申し込みます。(これを「ブリッジ・ファイナンス」や「POファイナンス」と呼ぶこともあります)

ただし、これはあくまで応急処置です。本来は第3章で解説した通り「融資」を先に確保しておくのが王道です。

Q2. 「助成金(Joseikin)」と「補助金(Hojokin)」、その違いがよく分かりません。戦略に影響はありますか?

A2. はい、その違いを理解することはあなたの戦略にとって極めて重要です。

どちらも「返済不要」で「後払い」という点は同じです。しかし、その「もらえる確率(確実性)」が全く異なります。

  • 助成金(例:キャリアアップ助成金):
    主に厚生労働省の管轄です。「雇用」に関するものが中心です。
    特徴:法律で定められた「要件を満たしさえすれば原則として100%受給できる」。これは競争ではありません。
  • 補助金(例:ものづくり補助金):
    主に経済産業省や自治体の管轄です。「新しい投資」に関するものが中心です。
    特徴:あらかじめ「予算」と「採択件数」が決まっています。したがって、要件を満たした上で、他の申請者よりも優れた事業計画書を提出し、競争に「勝利」しなければ受給できません(不採択のリスクが常にある)。

戦略への影響
この違いからもお分かりの通り、「補助金」をアテにした資金計画はギャンブルであり、絶対に組んではいけないということです。

「助成金」は要件さえ満たせば確実性が高いため計画に組み込みやすいように思えますが、それでも入金は1年近く先になるため、やはりそれ単体で資金繰りを考えるのは危険なのです。

Q3. 助成金や補助金が入金された後、税金はかかりますか?

A3. はい、かかります。

これは非常に重要な落とし穴です。「返済不要」=「税金もかからない」と誤解されている経営者様が非常に多い。

助成金や補助金は会計上「雑収入(ざつしゅうにゅう)」という、あなたの会社の利益(売上)として計上されます。

例えば、あなたの会社がトントン(利益ゼロ)の状態で100万円の助成金が入金された場合。あなたの会社のその期の利益は「100万円」となります。

そして、あなたの会社はその100万円の利益に対して、法人税(約20%~30%)を支払わなければなりません。

プロの視点:
この「納税のタイミング」までを見据えたキャッシュフローの管理が不可欠です。「助成金が入った!」と喜んで全額を使ってしまい、その数ヶ月後の決算で法人税が支払えないという本末転倒な事態に陥らないよう、必ず私たち税理士にご相談ください。

結論:あなたの資金調達、まだ「融資」だけで考えていませんか?

創業融資と助成金・補助金。

その時間軸と性質が全く異なる2つの資金を、正しい順番で、そして正しい戦略で組み合わせる。

それこそが、あなたの会社のスタートダッシュを最大化し、未来のキャッシュフローを盤石にするプロフェッショナルな資金調達術です。

その複雑なパズルを解き明かし、あなたの会社が獲得できる資金の「総額」を最大化するために。

私たち荒川会計事務所は、あなたの最強の「戦略チーム」となることをお約束します。

あなたの資金調達、まだ「融資」だけで考えていませんか?

その融資の先に眠っている「返済不要のお金」を見逃していませんか?
まずは無料相談で、あなたの会社が獲得できる資金の「総額」を私たちプロフェッショナル・チームに診断させてください。

無料相談で「融資+助成金」の最適戦略を立てる
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記事執筆監修者

荒川会計事務所(経営革新等支援機関(認定支援機関))代表税理士・登録政治資金監査人・行政書士の荒川 一磨です。

    

会社設立と創業融資を得意とし、何でも相談できる話しやすいパートナーであることを心掛けている事務所です。

事務所所在地 〒160-0022 東京都新宿区新宿2-5-16 霞ビル8F

電話番号 0120-016-356

所属 東京税理士会四谷支部・東京行政書士会新宿支部

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