【創業融資と信用情報】CICの開示方法と、審査に落ちる「ブラックリスト」の全知識

あなたは今、人生を賭けた事業の完璧な「未来の設計図(事業計画書)」をその手に持っているかもしれません。

しかし金融機関の融資担当者が、その未来の設計図を評価する前に、まず彼らが秘密裏に、そして徹底的に調査するもう一つの重要な書類があることを、あなたはご存知でしょうか。

それは、あなたの「過去の通知表」。すなわち、「個人信用情報」です。

「個人のクレジットカードの履歴が、会社の融資に関係あるはずがない」
「数年前に一度だけ支払いが遅れたことがあるけど、もう昔の話だ」

もしあなたがそのように安易に考えているとしたら。それは地雷が埋まっていることを知らずに戦場へと丸腰で足を踏み入れるのと、同じくらい危険な行為です。

創業融資の審査において、この「個人信用情報」はあなたの事業計画の素晴らしさを評価する以前の、最初の、そして最も冷徹な「足切りライン」として機能します。ここにたった一つの致命的な「傷」があるだけで、あなたのどれほど輝かしい事業計画書も、読まれることさえなくゴミ箱へと直行してしまう可能性があるのです。

この記事は、その目に見えない、しかし絶対的な「足切りライン」からあなたを守るための究極の防衛マニュアルです。あなたの「過去の通知表」が今どうなっているのか。その具体的な確認方法から、審査を一発でアウトにする「ブラックリスト」の正体、そして万が一そこに「傷」を見つけてしまった場合の唯一の、そして正しい対処法まで。新宿で数えきれないほどの起業家の過去と未来に向き合ってきた私たちが、その全ての知識をここに公開します。

第1章:【本質理解】なぜ会社の融資で「個人の過去」が問われるのか?

まず多くの起業家が抱く最も素朴な疑問、「なぜ会社の融資で個人のプライベートな借金の履歴が関係あるのか?」という問いに、金融機関の揺るぎない「本音」からお答えしましょう。

経営者と会社は「一心同体」である

特に創業期の中小企業において、金融機関は会社という「法人格」と経営者である「あなた個人」を決して切り離しては考えません。

彼らにとって融資とは、あなたの会社の未来の事業計画にお金を貸すと同時に、その計画を実行し最終的な返済の責任を負う、経営者であるあなた「個人」の人間性、誠実さ、そしてお金に対する規律にお金を貸すということなのです。

そして、そのあなたの「人間性」や「お金への規律」を過去の行動に基づいて客観的に、そして冷徹に評価するための唯一無二の客観的なデータ。それが「個人信用情報」なのです。

金融機関があなたの信用情報から読み取る3つの資質

評価基準 審査官の心の声(=あなたへの評価)
1. 誠実性 「あなたは『約束』を守れる人間か?」
(小さな支払いの約束を守れない人が、事業の大きな返済の約束を守れるはずがない)
2. 計画性 「あなたは『お金』を管理できる人間か?」
(リボ払いやカードローン残高は、計画性のない財務管理能力の低い人物の証拠)
3. 申告の信頼性 「あなたは他に『隠し事』をしていないか?」
(申告していない借入の発覚は、私たちを騙そうとする不誠実な人物の証拠)

第2章:あなたの「通知表」はどこにある?― 3つの個人信用情報機関

あなたの信用に関する「通知表」は一箇所ではなく、実は3つの異なる「学校(信用情報機関)」によってそれぞれ作成・保管されています。そして金融機関は融資の審査の際に、これらの全ての通知表を取り寄せます。

3つの個人信用情報機関とそれぞれの役割

機関名 略称 主な加盟企業 創業者がまず確認すべき理由
(株)シー・アイ・シー CIC クレジットカード会社、信販会社 クレカや携帯電話の分割払い履歴が全て記録されているため。最優先で確認すべき。
(株)日本信用情報機構 JICC 消費者金融 過去にカードローン等の利用がある場合。
全国銀行個人信用情報センター KSC 銀行、信用金庫、信用組合 住宅ローンや銀行系カードローンの履歴がある場合。

プロの視点:
この3つの機関は、CRIN(クリン)というネットワークで相互に情報の一部を共有しています。つまり、あなたがもし消費者金融(JICC加盟)で長期延滞を起こした場合、その重大な事故情報はCICやKSCにも共有され、あなたの全ての金融取引に影響を及ぼすのです。

今回は、この中で最も多くの人が関わる可能性の高い「CIC」の情報の見方と取得方法について詳しく解説していきます。

第3章:【実践ガイド】CICの信用情報を自分で取り寄せる方法

融資を申し込む前に、あなた自身の「通知表」を自分の目で確認しておくこと。それは試験の前に過去問を解いておくようなものであり、経営者としての最低限のリスク管理です。

最も速くて簡単な「インターネット開示」

現在、最も推奨される方法はスマートフォンやパソコンを使った「インターネット開示」です。

  • 準備するもの:
    • クレジットカード(開示手数料500円の決済用。本人名義のもの)
    • そのクレジットカード会社に届け出ている電話番号(固定電話または携帯電話)
  • 手順:
    1. CICの公式ウェブサイトの「インターネットで開示する」のページへアクセスします。
    2. 画面の指示に従い、あなたの個人情報(氏名、生年月日、電話番号など)とクレジットカード情報を入力します。
    3. 指定された電話番号へ電話をかけ、受付番号を取得します。
    4. 取得した受付番号を画面に入力し、手数料(500円)をクレジットカードで決済します。
    5. 決済完了後、すぐにあなたの信用情報がPDFファイルとして画面に表示され、ダウンロードできます。
  • 所要時間:慣れればわずか10分程度で完了します。

第4章:【通知表の解読法】あなたの「信用偏差値」を読み解く

さて、手に入れたPDFファイル。そこにはあなたの過去5年間の金融取引の全てが記号と数字で克明に記録されています。

最重要項目:「クレジット情報」の「入金状況」欄

あなたが最も注意深く見るべきは、この「入金状況」の欄です。ここには過去24ヶ月分の毎月の支払状況が以下の記号で記録されています。

【最重要】CIC「入金状況」の記号の意味

記号 意味 審査への影響
請求どおり(またはそれ以上)の入金があった◎ 問題なし(最高の評価)
請求も入金もなかった(カード未利用月)○ 問題なし
P請求額の一部が入金された△ 要注意(資金繰りが厳しいと見なされる)
Aお客様の都合で入金がなかった(未入金)× 危険信号(明確な「延滞」記録)
B, Cお客様の都合とは無関係な理由で未入金× マイナス評価(詳細は要確認)

【ブラックリストの正体】「26. 返済状況」欄の「異動」という一文字

そして、あなたが最も恐れるべき一文字。それが「クレジット情報」の中ほどにある「26. 返済状況」の欄に記載される「異動(いどう)」という言葉です。

ここに「異動」と記載されるのは、主に以下の重大な金融事故があった場合です。

  • 長期延滞:返済日より61日以上、または3ヶ月以上の支払いの遅れがあった場合。
  • 代位弁済:あなたが返済できなくなり、保証会社があなたに代わって返済を行った場合。
  • 債務整理:裁判所に自己破産の申し立てなどを行った場合。

この「異動」という記録こそが、一般的に言われる「ブラックリストに載る」という状態の正体です。この記録がある場合、その情報は事故の発生から5年間(自己破産などは最長10年)あなたの信用情報に残り続けます。そして、この記録がある限り、創業融資の審査を通過することは極めて絶望的です。

第5章:【復活への道筋】もしあなたの「通知表」に傷を見つけたら

もしあなたが自身の信用情報を確認し、そこに忘れていた「A」マークや、最悪の場合「異動」の文字を見つけてしまったら。

絶望する必要はありません。しかし、今すぐ融資を申し込むという無謀な挑戦はただちに中止しなければなりません。

信用情報の「傷」と再生ロードマップ

傷の種類 取るべき行動 面談での説明
ケースA:
「A」マーク(短期延滞)
最低1年間、完璧な支払い実績(「$」マーク)を積み重ねる。 「当時は管理が未熟でした。その反省からこの1年は完璧に実行しています」と誠実に謝罪・改善を報告する。
ケースB:
「異動」(ブラックリスト)
融資申込を中止し、その事故情報が消える5年後まで待つ (隠して申し込むのは自殺行為。発覚すれば二度と融資は受けられない)

ケースA:「A」マーク(短期の延滞)が数個散見される場合

  • 取るべき行動:まずその原因(口座の残高不足など)を徹底的に反省し、二度と繰り返さない仕組みを作ります。そして、そこから最低でも1年間、全ての支払いを完璧に期日通りに行い、あなたの通帳と信用情報に美しい「$」マークを並べ続けます。
  • 面談での説明:1年後、融資の面談で担当者から過去の延滞について質問されたら、正直に、そして誠実にこう答えます。「はい、当時は私の資金管理が未熟であったためご迷惑をおかけしました。その反省からこの1年間、全ての支払いをこのように完璧に行ってまいりました。二度とこのようなことはございません。」この誠実な反省と改善の具体的な「証拠」が、あなたのマイナスをプラスに転じさせます。

ケースB:「異動」の記録がある場合

  • 取るべき行動:これが最も厳しい道です。あなたが取るべき唯一の、そして正しい行動は、「その『異動』情報がCICから消える日(事故発生から5年後)をひたすら待つ」ことです。
  • 絶対にやってはいけないこと:この事実を隠して融資を申し込むこと。それは100%発覚します。そしてあなたは「金融事故を起こした」という事実に加えて、「それを隠蔽しようとした不誠実な人物」という二重の最悪の烙印を押されることになるのです。

第6章:【FAQ】「信用情報」に関する一歩進んだ疑問

最後に、信用情報に関して起業家の皆様が抱く、より深い疑問とその回答をQ&A形式でまとめました。

Q1. 信用情報報告書のどの項目を特に注意して見れば良いですか?

A1. 報告書は専門用語が多く分かりにくいかもしれません。融資審査の観点から、特に以下の3つの項目を重点的にチェックしてください。

  1. 「入金状況」の欄:過去24ヶ月の支払い履歴です。ここに「A」(未入金)や「P」(一部入金)のマークがないか、まず確認します。理想は全てが「$」か「-」で埋まっていることです。
  2. 「26. 返済状況」の欄:ここに「異動」という文字がないか、絶対に確認してください。これが、いわゆるブラックリストのサインです。
  3. 「お支払いの状況」→「4. 残高」の欄:クレジットカードのリボ払いやカードローンの現在の残高が記載されています。この合計額があなたの年収に対して過大ではないか、客観的に見つめ直す必要があります。

Q2. 身に覚えのない延滞記録(Aマーク)が記載されていました。どうすれば良いですか?

A2. 非常に稀ですが、信用情報機関や加盟している金融機関の事務的なミスによって誤った情報が登録されてしまう可能性はゼロではありません。

もし明らかに、ご自身の記憶と異なる不利益な情報が記載されていた場合は、その情報が記載されているクレジットカード会社や金融機関のカスタマーサービスへ直接電話で問い合わせてください。

そして、「CICの信用情報を開示したところ、〇年〇月分の支払いについて延滞を示す『A』マークが記載されていましたが、私の記録では期日通りに支払っているはずです。事実関係を調査していただけないでしょうか」と、冷静に、そして具体的に申し出ます。

もし調査の結果、金融機関側のミスであったことが判明すれば、その金融機関がCICに対して情報の訂正を依頼し、あなたの信用情報はクリーンな状態に修正されます。

Q3. 共同経営で起業します。パートナーの信用情報も審査に影響しますか?

A3. はい、影響する可能性が非常に高いです。

特に、あなたのパートナーが設立する会社の「取締役」や「連帯保証人」になる場合、金融機関はあなた個人の信用情報と全く同じように、パートナーの信用情報も必ず照会します。

そして、もしパートナーの信用情報に「異動」などの重大な問題があった場合。それはあなた自身の信用情報に問題があるのとほぼ同じくらい、審査に対して致命的なマイナス要因となります。

プロの視点:
共同経営を決断するまさにその前に。お互いのビジネス上の「健康診断」として、それぞれの信用情報を開示し合い、透明性をもって共有しておくこと。これは未来の無用なトラブルを避けるための極めて重要な、そして誠実なステップです。

Q4. JICCやKSCの信用情報も全て取り寄せておくべきですか?

A4. 理想を言えば「はい」です。しかし現実的な費用対効果を考えると、まずは「CIC」だけでも必ず確認しておくべきというのが私たちの見解です。

なぜなら、

  • CICはクレジットカードや携帯電話の分割払いなど、ほとんどの人が何らかの形で関わっている最も網羅的な信用情報機関であること。
  • そしてCRINというネットワークを通じて、JICCやKSCの重大な事故情報(異動情報など)もCICの情報に「交流情報」として記載されるため、致命的な問題はCICを確認するだけで発見できる可能性が高いこと。

がその理由です。もしあなたが過去に消費者金融からの借入や銀行系のカードローンを多用していたという自覚がある場合は、念のためJICCやKSCの情報も併せて取り寄せておくとより万全です。

結論:あなたの「過去」と誠実に向き合うこと

創業融資の審査とは、あなたのビジネスの「未来」を語る場であると同時に、あなたの人間としての「過去」が厳しく問われる場でもあります。

その過去の「通知表」を、融資を申し込む前に自らの目で確認しておく。それは経営者として自らの足元を客観的に見つめ直す、最初の、そして最も重要なリスク管理です。

私たち荒川会計事務所は、あなたのその「過去」から目をそらしません。

私たちは、あなたの信用情報にたとえ傷があったとしても、それを共に受け止め、そこから立ち上がるための最も現実的で最も誠実な再起へのロードマップを、あなたと一緒に描きます。

あなたの「過去の通知表」、見るのが怖いですか?

その一枚の紙が、あなたの夢の明暗を分けます。手遅れになるその前に。
まずは無料相談で、あなたの「信用情報」に関する不安の全てを私たちに打ち明けてください。

無料相談で「信用情報」について相談する
お電話でのお問い合わせはこちら メールでのお問い合わせはこちら

記事執筆監修者

荒川会計事務所(経営革新等支援機関(認定支援機関))代表税理士・登録政治資金監査人・行政書士の荒川 一磨です。

    

会社設立と創業融資を得意とし、何でも相談できる話しやすいパートナーであることを心掛けている事務所です。

事務所所在地 〒160-0022 東京都新宿区新宿2-5-16 霞ビル8F

電話番号 0120-016-356

所属 東京税理士会四谷支部・東京行政書士会新宿支部

免責事項

当サイトに掲載されている情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容の完全性、正確性、有用性、安全性を保証するものではありません。税法、会社法、各種制度は法改正や行政の解釈変更等により、コンテンツ作成日時点の情報から変更されている可能性があります。最新の情報については、必ず関係省庁の公式情報をご確認いただくか、専門家にご相談ください。

当サイトに掲載されている内容は、あくまで一般的・抽象的な情報提供を目的としたものであり、特定の個人・法人の状況に即した税務上、法律上、経営上の助言を行うものではありません。具体的な意思決定や行動に際しては、必ず顧問税理士や弁護士等の専門家にご相談のうえ、適切な助言を受けてください。

当サイトの情報を利用したことにより、利用者様に何らかの直接的または間接的な損害が生じた場合であっても、当事務所は一切の責任を負いかねます。当サイトの情報の利用は、利用者様ご自身の判断と責任において行っていただきますようお願い申し上げます。

当サイトに掲載されている文章、画像、その他全てのコンテンツの著作権は、当事務所または正当な権利者に帰属します。法律で認められる範囲を超えて、無断で複製、転用、販売等の二次利用を行うことを固く禁じます。

当サイトからリンクやバナーによって外部サイトに移動された場合、移動先サイトで提供される情報・サービス等について、当事務所は一切の責任を負いません。