【創業融資】「定款」と「事業計画書」の致命的な「ズレ」が、あなたの融資を一発で否決させる本当の理由

あなたは今、人生を賭けた起業のスタートラインに立っています。あなたの手元には、おそらく2種類の重要書類の作成が迫っていることでしょう。

一つは、金融機関(日本政策金融公庫など)に提出し、あなたの事業の「未来」と「情熱」を語る「事業計画書」

もう一つは、公証役場や法務局に提出し、あなたの会社の「法的な存在」を定義する「定款(ていかん)」

多くの起業家が、この2つの書類を、「銀行用のプレゼン資料」と「法務局用のお役所書類」というように、全く別々の面倒なタスクとして捉えてしまっています。

「定款はネットの雛形(テンプレート)をコピペして作ればいいや」
「事業計画書はとにかく情熱的に儲かるストーリーを書けばいいんだろう」

もしあなたがそのように考えているとしたら。あなたは自らの手で、あなたの創業融資の成功確率をゼロにする致命的な「時限爆弾」を埋め込んでいるのと同じことです。

この記事は、そのあまりにも多くの起業家が知らずに犯している「最悪の過ち」からあなたを救い出すための究極の「戦略的設計マニュアル」です。

融資担当者は、あなたの事業計画書を読んだ後、必ずあなたの会社の「登記簿謄本(=定款の公的な写し)」を取り寄せ、その2つを見比べます。

そして、その2つの書類の間にたった一つの「矛盾」や「ズレ」を発見した瞬間、彼らの心の中には「この経営者は信用できない」という強烈な赤信号が灯るのです。

なぜその「ズレ」があなたの信用を一瞬で破壊するのか。その審査の深層心理と、金融機関が「この経営者は本物だ」と確信する完璧な「整合性」を構築するための全知識を、新宿で数えきれないほどの会社の「設計図」と「未来図」を描いてきた私たちが徹底的に解説します。

第1章:【審査官の思考】なぜ銀行はあなたの「定款」にこれほど執着するのか?

まず、なぜ融資担当者があなたの事業の「数字」よりも先に、この法的な「言葉」にこだわるのか。彼らがあなたの「事業目的」から読み取ろうとしている3つの極めて重要な「リスク・シグナル」を理解しましょう。

融資が否決される3つの致命的な「ズレ」

シグナル(ズレ) 事業計画書(未来図) 定款・登記(設計図) 審査官の本音
① 焦点の欠如 「AIマーケティング事業」 「飲食店、不動産、介護…」など20個羅列 「結局何がしたいのか?本気度が低い」
② 計画との不一致 「SaaSプロダクト開発」 「ITコンサルティング」のみ 「計画と登記が違う。嘘か素人か?」
③ 資本金の矛盾 「自己資金:300万円」 「資本金:10,000円」 「残りの299万はどこへ?見せ金か?」

シグナル1:【焦点の欠如】=「この経営者は、何がしたいのか分からない」

融資担当者の心の声:「事業計画書では『新宿で最先端のAIを活用したWebマーケティング事業を行いたい』と熱く語っている。しかし、取り寄せた登記簿謄本の目的欄には『1. 飲食店の経営、2. 介護事業、3. 不動産取引、4. アパレルの輸入販売…』と脈絡のない目的が20個も羅列されている。

…この経営者は本当にWebマーケティングで起業するつもりなのだろうか?それとも、これは単なる思いつきの一つで本命は別にあるのか?こんな節操のない計画では経営資源が分散し、どの事業も中途半端に終わる典型的な失敗パターンだ。この人物にお金は貸せない。」

「何でもできる」という目的は金融機関から見れば、「何一つ本気でやる気がない」という最悪のメッセージなのです。

シグナル2:【計画との不一致】=「言っていること(計画)と、やること(登記)が違う」

融資担当者の心の声:「創業計画書では『革新的なSaaSプロダクトの開発』のために500万円の融資を希望している。しかし、登記簿謄本の目的欄には『1. ITコンサルティング、2. システムの受託開発』としか書かれていない。

『SaaS』や『自社プロダクトの開発・運営』といった最も重要なキーワードが定款(登記)に一切記載されていない。これはどういうことだ?

もしかして、本当は受託開発のための運転資金が欲しいのをSaaS開発と偽って申し込んでいるのではないか?あるいは、自分の会社の憲法とこれからやろうとしている事業が食い違っていることにさえ気づいていない素人なのか?」

あなたが融資を申し込んでいる事業が、あなたの会社の定款で法的に許可されていない。この「計画の矛盾」は、あなたの信用を一瞬で失墜させます。

シグナル3:【資本金の矛盾】=「あなたの『覚悟』の数字が一致しない」

融資担当者の心の声:「事業計画書の『7. 必要な資金と調達方法』の欄。ここには『自己資金:300万円』と書いてある。素晴らしい覚悟だ。

…しかし、取り寄せた登記簿謄本を見ると『資本金の額:金 10,000円』となっている。

待て。自己資金300万円はどこへ消えたんだ?なぜその覚悟のお金を会社の資本金として投下しなかったんだ?残りの299万円はどこか別の場所に隠しているのか?それとも、そもそもその300万円という自己資金の申告自体が嘘(見せ金)だったのではないか?」

あなたの「覚悟の証」であるはずの自己資金が、あなたの会社の「法的な元手」である資本金と著しく乖離している。この説明のつかない矛盾は、あなたの経営者としての誠実さそのものへの疑念を生みます。

第2章:【勝利の方程式】融資に勝つ「最強の事業目的」3階層設計術

では、これらの全ての地雷を回避し、融資担当者に「この経営者は本物だ」と確信させる事業目的は、どのように設計すれば良いのでしょうか。

その答えは、「まず事業計画書(未来図)を完璧に描き、その未来図を実現させるためだけの法的な器(設計図=定款)をオーダーメイドで作る」という正しい順番を守ることです。

融資に勝つ「事業目的」3階層設計術

階層 目的 役割と具体例
第1階層【核】 今すぐやる事業 事業計画書と100%一致させる。
(例:中小企業へのITコンサルティング)
第2階層【法務】 許認可に必要な文言 法律遵守の姿勢を見せる。
(例:古物営業法に基づく古物の売買)
第3階層【未来】 論理的に関連する事業 将来のビジョンを示す(3〜5個程度)。
(例:Webサイトの企画、制作、運営)

【第1階層】あなたの「核」となる事業(The Core)

まず、事業目的の1番目(筆頭)に、あなたが今回創業融資を受けて「今すぐに始める核となる事業」を、具体的かつ明確に記載します。

  • NG例:「コンサルティング業」
  • OK例:「中小企業に対する経営合理化及びIT化に関するコンサルティング業務」

この第1階層が、あなたの創業計画書と100%完全に一致していることが絶対条件です。

【第2階層】「許認可」をクリアする魔法の文言(The Legal)

次に、あなたのその核となる事業、あるいは将来行う可能性のある事業に「許認可」が必要かどうかを徹底的に調査し、その申請に必要な「魔法の文言」を、一字一句正確に埋め込みます。

  • 飲食業なら:「飲食店の経営」
  • 中古品売買なら:「古物営業法に基づく古物の売買」
  • 人材派遣業なら:「労働者派遣事業」
  • 不動産業なら:「宅地建物取引業」
  • 建設業なら:「建設工事業」

この第2階層の存在こそが、あなたの法律遵守意識と準備の周到さを証明します。

【第3階層】「未来の可能性」を示す論理的な布石(The Future)

最後に、あなたの事業が成長した2年後、3年後に論理的に展開する可能性のある「関連事業」を、3~5個程度追加します。

これは「何でも屋」を目指すためではありません。これは、「この経営者は未来へのビジョンと成長戦略を持っている」という、あなたの「経営者としての視座の高さ」をアピールするために行うのです。

ケーススタディ:ITコンサルティング会社の場合

  1. 中小企業に対するIT化に関するコンサルティング業務(=第1階層:核)
  2. Webサイト及びECサイトの企画、制作、運営、保守(=第3階層:関連事業)
  3. 自社Webサービスの企画、開発、運営(=第3階層:未来の布石)
  4. IT人材の教育、研修及びセミナーの開催(=第3階層:未来の布石)
  5. 前各号に附帯又は関連する一切の事業(=最後のお守り)

この最後の「附帯関連業務」の一文は、あなたの事業目的の柔軟性を担保する重要なお守りとして、必ず末尾に記載してください。

第3章:【FAQ】「事業目的」と「創業融資」に関する一歩進んだ疑問

最後に、この戦略的な定款設計について、さらに深く検討されている起業家の皆様から、私たちが特によくお受けする専門的なご質問とその回答を、Q&A形式でまとめました。

Q1. 事業目的は、具体的に何個くらいが適切ですか?多すぎると本当に不利ですか?

A1. 法律上、事業目的の数に上限はありません。しかし、融資審査という観点では、明確に「最適な数」が存在します。

私たちは「5個 ~ 15個」の範囲内を強く推奨します。

  • 少なすぎる(1~3個):事業への熱意は伝わりますが、「将来のビジョンが狭い」「事業が失敗した時のBプランがない」と見なされ、事業の継続性を不安視される可能性があります。
  • 多すぎる(20個以上):まさに第1章で解説した「何でも屋」の典型です。「焦点が定まっていない」「本気度が疑わしい」と判断され、ほぼ間違いなくマイナス評価となります。

重要なのは、数ではなく、「核となる事業」から「論理的な一貫性」を持って展開されているかどうか。そのストーリーの美しさです。

Q2. 事業目的の「順番」は、審査に影響しますか?

A2. はい、絶大な影響があります。

登記簿謄本はあなたの会社の公式なプロフィールです。そして、事業目的の一番最初(筆頭)に書かれている項目こそが、あなたの会社の「本業(メイン事業)」であると、金融機関、税務署、取引先、社会の全てが認識します。

もしあなたが「飲食店の開業資金」の融資を申し込むのに、事業目的の筆頭が「不動産コンサルティング」になっており、「飲食店の経営」が10番目に書かれていたらどうでしょうか。

担当者は、「この会社、本業は不動産屋なのか?飲食は片手間か?」と強烈な不信感を抱きます。

必ず、創業計画書でメインとして語る事業を、定款の事業目的の一番最初に記載してください。

Q3. 登記が完了した後から、目的を追加・変更することはできますか?

A3. はい、いつでも可能です。しかし、それには相応の「手間」と「コスト」がかかります。

手続き

  1. 株主総会での「特別決議」:定款の変更となるため、株主総会での3分の2以上の賛成が必要です。
  2. 株主総会議事録の作成:法務局に提出するための法的に完璧な議事録を作成します。
  3. 法務局への「目的変更登記申請」:決議から2週間以内に申請します。

コスト

  • 登録免許税:30,000円(法務局に支払う国税)
  • 専門家(司法書士)への報酬:数万円

プロの視点:
だからこそ、「設立時」にどれだけ未来を見据えた設計ができるかが勝負なのです。設立時にあと数行書き加えておくだけで、将来支払うはずだったこの数万円のコストと数週間の手間を全てゼロにできるのです。

Q4. 創業計画書に書いた事業と全く関係ない事業目的が定款に入っていても大丈夫ですか?(例:将来やりたい不動産投資など)

A4. あなたの会社の「本気度」を疑わせるという点において、非常にマイナスです。

融資担当者は、「創業期の今この瞬間に経営資源を100%集中すべき起業家が、なぜ今関係のない不動産投資のことまで考えているんだ?」と、あなたの事業への集中力を疑います。

プロの視点:
定款の事業目的は、「将来やるかもしれない全てのこ」を羅列する場所ではありません。それは、「創業期において金融機関から信用を得るために戦略的に設計する」ものです。

本当に必要になったタイミングで、その都度目的変更登記(登録免許税3万円)を行えば良いのです。設立時の数万円の登記費用をケチった結果、数百万、数千万円の融資の信用を失う。これほど愚かなことはありません。

Q5. 「前各号に附帯又は関連する一切の事業」の一文は本当に万能ですか?これさえあれば許認可も大丈夫ですか?

A5. いいえ、全く万能ではありません。これは法律家の間で「バスケット条項」と呼ばれる便利な一文ですが、その効力は限定的です。

この一文がカバーできる範囲
あくまで「主たる事業に附帯する小さな業務」に限られます。例えば、「Web制作業」を目的に掲げている会社が、そのクライアント向けに「Webマーケティングの小規模なセミナー」を開催するといったレベルです。

この一文が絶対にカバーできない範囲
「Web制作業」の会社がこの一文を根拠に「不動産取引業」の免許を申請したり、「飲食店の経営」を始めたりすることは絶対にできません。

特に第2章で解説した「許認可」が必要な事業は、この「附帯事業」の解釈には決して含まれません。必ずその許認可に必要な文言を個別に記載する必要があります。

Q6. 定款の「事業目的」は法務局の登記官も審査するのですか?

A6. はい、審査します。しかし、その視点は金融機関とは全く異なります。

法務局の登記官が審査するポイントは、主に以下の3つです。

  1. 適法性:その事業目的が法律に違反していないか。(例:「賭博場の運営」などは当然NG)
  2. 明確性:その事業目的が日本語として意味が通じるか。あまりにも抽象的すぎたり造語すぎたりすると修正を求められる場合があります。(例:「宇宙人の研究」など)
  3. 営利性:株式会社は利益を上げることを目的とする法人です。「ボランティア活動」や「寄付行為」そのものを事業目的の筆頭に掲げると営利性の観点から修正を求められる可能性があります。

プロの視点:
登記官は、あなたの事業目的が「多すぎる」ことや「一貫性がない」ことを一切気にしません。彼らの仕事はあくまで法律の形式を整えることだからです。

ここに最大の罠があります。

「法務局(登記)は通ったから安心だ」と思ってその節操のない定款を金融機関に提出した瞬間、「融資(審査)」に落ちるのです。

「法務局」と「金融機関」審査の視点の違い

審査項目 法務局の登記官 金融機関の融資担当
事業目的の「一貫性」 ◎ 気にしない × 最も重視する(本気度)
事業目的の「数」 ◎ 気にしない × 気にする(焦点の欠如)
資本金の「額」 ◎ 気にしない (1円以上) × 最も重視する(覚悟)
審査の結論 「適法性」がOKなら登記完了 「一貫性」がNGなら融資否決

私たちは、この「法務」と「財務」の両方の視点を同時にクリアする完璧な事業目的を設計します。

結論:あなたの「憲法」はあなたの「信用」そのもの

「定款」と「事業計画書」。

この2つの書類は別々のものではありません。

それは、あなたの事業という一つの生命体の「法的な設計図」と「未来への航海図」であり、両者が完璧に一致して初めて、あなたの船は金融機関という港から信頼と資金という名の追い風を受けて出航できるのです。

その最も重要で最も神聖な設計図を、インターネットの無料テンプレートの丸写しで済ませて本当に良いのですか?

あなたの「定款」、あなたの「事業計画書」と、矛盾していませんか?

そのたった数行の「ズレ」が、あなたの融資の未来を閉ざしているかもしれません。
まずは無料相談で、あなたの2つの設計図が完璧に整合しているか、私たちプロに診断させてください。

無料相談で「定款と事業計画書」の整合性を診断する
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記事執筆監修者

荒川会計事務所(経営革新等支援機関(認定支援機関))代表税理士・登録政治資金監査人・行政書士の荒川 一磨です。

    

会社設立と創業融資を得意とし、何でも相談できる話しやすいパートナーであることを心掛けている事務所です。

事務所所在地 〒160-0022 東京都新宿区新宿2-5-16 霞ビル8F

電話番号 0120-016-356

所属 東京税理士会四谷支部・東京行政書士会新宿支部

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