会社の設立登記が完了し、法務局で登記簿謄本を手にした、あなた。法的に、あなたの会社は、この世に誕生しました。その達成感は、何物にも代えがたいものでしょう。
しかし、それは、いわば「出生届」を出し終えた段階に過ぎません。次に待っているのは、あなたの会社が、一人の納税者として、社会的な責任を果たしていくための、税務署への「最初の公式なご挨拶」です。
その、記念すべき最初の挨拶状となるのが、「法人設立届出書」です。
「ただ、会社の名前と住所を書けばいいだけだろう?」
もし、あなたがそのように、この書類を軽視しているとしたら。それは、これから長い付き合いが始まる、税務署という、あなたの会社の、最も重要なステークホルダーの一人に対して、最初の第一印象を、自ら損ねてしまう、極めて勿体無い行為です。
この記事は、単なる書類の書き方マニュアルではありません。この「法人設立届出書」が持つ法的な意味から、その一字一句の、正確で、プロフェッショナルな書き方、そして、この届出書と「三点セット」で提出しなければ、あなたの会社が、将来、数百万円単位の損失を被りかねない、極めて重要な関連書類まで。
新宿で、数えきれないほどの会社の「最初の挨拶」を、完璧な形でプロデュースしてきた私たちが、あなたの会社の、税務上の輝かしいスタートを、完全にナビゲートします。
第1章:【本質理解】「法人設立届出書」とは、何のための書類なのか?
具体的な書き方に入る前に、まず、なぜ、この書類が、法律で提出を義務付けられているのか、その本質的な目的を理解しましょう。
- 目的1:税務署への「自己紹介」
「この度、〇〇という名前で、〇〇という事業を行う会社が、〇〇という場所に誕生しました。これから、日本の納税者の一員として、よろしくお願いいたします」という、税務署に対する、公式な自己紹介状です。この届出によって、税務署は、あなたの会社の存在を初めて認知し、管理台帳に登録します。 - 目的2:税務上の「基本情報」の登録
あなたの会社の、納税地(本店所在地)、事業年度(決算期)、資本金の額、事業内容といった、今後の法人税や消費税の申告・納税の基礎となる、全ての基本情報を、税務署に正確に伝える役割を果たします。 - 目的3:その後の「税務行政」の起点
この届出書が提出されて初めて、税務署は、あなたの会社に対して、確定申告書の用紙を送付したり、税務に関する重要なお知らせを送ったり、といった、様々な行政サービスを開始することができます。この届出を怠ると、重要な通知が届かず、気づかぬうちに、申告漏れなどの、深刻な事態に陥る可能性があります。
提出期限と提出先
- 提出期限:会社設立の日(登記日)から、2ヶ月以内。
- 提出先:あなたの会社の本店所在地を管轄する「税務署」。
プロの視点:実は、この届出書は、税務署だけでなく、「都道府県税事務所」と「市区町村役場」にも、それぞれ提出する必要があります。様式は、各自治体で若干異なりますが、記載内容は、ほぼ同じです。3つの役所に、同じ内容を届け出る必要がある、と覚えておきましょう。
第2章:【実践ガイド】「法人設立届出書」の、一字一句の、完璧な書き方
それでは、国税庁のウェブサイトからダウンロードできる「法人設立届出書」の、具体的な書き方を、項目ごとに、ステップバイステップで、徹底的に解説していきます。あなたの会社の「登記簿謄本(履歴事項全部証明書)」と「定款」を手元に用意して、見比べながら進めましょう。
法人設立届出書(記入項目・徹底解説)
【基本情報欄】
- 法人名・フリガナ:登記簿謄本の記載通りに、一字一句、正確に記入します。
- 納税地:本店所在地を、登記簿謄本の通りに、都道府県から、ビル名、部屋番号まで、正確に記入します。
- 法人番号:会社設立後、国税庁から通知される、13桁の番号です。設立直後で、まだ通知が届いていない場合は、空欄のままで構いません。
- 代表者氏名・フリガナ:あなたの氏名を、正確に記入します。
- 代表者住所:あなたの個人の住所を、住民票の通りに、正確に記入します。
【設立に関する情報欄】
- 設立年月日:あなたの会社の「誕生日」、すなわち、法務局に登記申請を行った日付を、登記簿謄本の記載通りに記入します。
- 事業年度:定款で定めた、あなたの会社の事業年度(決算期)を記入します。(例:「4月1日から3月31日まで」)
- 資本金の額又は出資金の額:登記簿謄本に記載されている、資本金の額を、正確に記入します。
【事業の概要欄】
- 事業の目的(定款に記載のもの):定款に記載した「事業目的」を、そのまま、あるいは、要約して転記します。全てを書ききれない場合は、主要なものをいくつか記載し、「…ほか」としても構いません。
- 事業の概要:【プロの視点:最初のプレゼンテーション】ここは、単に目的を羅列するだけでなく、税務署の担当者に対して、「この会社が、具体的に、どのようなビジネスで、どのようにして利益を上げていくのか」を、分かりやすく説明する、最初のプレゼンテーションの場です。
例えば、「ITコンサルティング」だけでなく、「中小企業を対象とした、クラウド会計導入支援及び、業務効率化に関するコンサルティング。月額顧問契約を主たる収益源とする。」といったように、ターゲット顧客、サービス内容、収益モデルまでを、箇条書きなどで、簡潔に、しかし、具体的に記述することで、税務署に対して、事業の実態が明確で、計画性のある会社である、という、非常に良い第一印象を与えることができます。
【その他の情報欄】
- 消費税の新設法人に該当することとなった事業年度:資本金が1,000万円以上の場合など、設立第1期目から消費税の課税事業者となる場合に、その事業年度を記入します。ほとんどの会社は、免税事業者となるため、空欄のままで結構です。
- 設立の形態:「5 その他」に丸をつけ、()内に「金銭出資による設立」などと記入するのが一般的です。
- 事業を開始する年月日:実際に、事業活動を開始する(または、した)日付を記入します。
- 関与税理士:私たちのような税理士が、この届出書を代理で作成・提出する場合は、ここに、事務所の情報を記載し、署名・押印します。
添付書類:あなたの会社の「戸籍謄本」と「憲法」
この届出書には、記載内容が、事実であることを証明するための、以下の添付書類が必要です。
【法人設立届出書・添付書類チェックリスト】
- 定款等の写し:公証役場で認証を受けた、定款のコピーを1部。
- 登記事項証明書(登記簿謄本):法務局で取得した、履歴事項全部証明書の原本。
- 株主等の名簿の写し:誰が、何株を保有しているかを示す「株主名簿」のコピー。
- (設立時に現物出資がある場合)出資者の氏名、出資金額、出資された財産の種類などを記載した書類。
- (任意)設立趣意書。
第3章:【最重要】「設立届」と、必ず「三点セット」で出すべき、2つの魔法の書類
法人設立届出書は、あくまで、あなたの会社の存在を、税務署に知らせるための、最低限の義務に過ぎません。
しかし、賢明な経営者は、この「最初の挨拶」の機会に、必ず、以下の2つの、あなたの会社の、未来の税負担を、劇的に軽減するための「魔法の書類」を、セットで提出します。
魔法の書類①:「青色申告の承認申請書」― 節税の「パスポート」
これは、設立後に提出する、全ての書類の中で、間違いなく、最も重要な書類です。これを、期限内に提出するか、しないかで、あなたの会社が、将来、支払う税金の額は、数百万円、時には、数千万円単位で、変わってきます。
提出期限:設立の日以後、3ヶ月を経過した日の前日、または、第1期の事業年度終了の日の、いずれか早い日の前日まで。
得られるメリット:
- 欠損金(赤字)の10年間繰越控除:設立初期に出た赤字を、10年間にわたって、将来の黒字と相殺し、法人税をゼロにすることができます。
- 少額減価償却資産の特例:30万円未満のPCや備品などを、購入した年に、一括で経費にすることができます。
- 各種の税額控除:研究開発税制や、所得拡大促進税制といった、法人税額から直接、税金を差し引く、強力な税額控除の、ほとんどが、青色申告法人であることを、適用要件としています。
プロの視点:
この申請書は、一度、提出期限を過ぎてしまうと、その事業年度については、二度と、青色申告法人になることはできません。設立届を出す際には、何があっても、絶対に、この書類を、一緒に提出する、と肝に銘じてください。
魔法の書類②:「給与支払事務所等の開設届出書」― 給与支払いの「開始宣言」
あなたの会社が、あなた自身(役員)や、従業員に対して、給与を支払うためには、まず、「私たちの会社は、給与を支払う事務所ですよ」ということを、税務署に届け出る必要があります。
提出期限:給与支払事務所を設置した事実があった日から、1ヶ月以内。
プロの視点:セットで提出すべき、もう一つの書類
給与から預かった源泉所得税は、原則として、毎月10日までに納付しなければなりません。しかし、給与を支払う従業員が10人未満の会社であれば、「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を併せて提出することで、この毎月の納付を、年2回(7月と1月の半年分まとめ払い)に変更できます。これにより、事務負担が劇的に軽減されるだけでなく、資金繰りにも有利に働くため、ほとんどの中小企業が、この特例を利用しています。
結論:会社の「最初の挨拶」は、あなたの未来を占う
法人設立届出書と、それに付随する一連の書類の提出。
それは、単なる、面倒な、事務手続きではありません。それは、あなたの会社が、税務の世界において、どのようなスタートを切るかを決定づける、極めて重要な「戦略的行動」です。
あなたは、
- ただ、最低限の義務である「設立届」だけを提出し、節税の最大の武器である「青色申告」の権利を、みすみす手放してしまいますか?
- それとも、専門家のサポートのもと、設立の、まさにその瞬間に、あなたの会社の、未来の税負担を、最小化するための、全ての布石を、完璧に打ちますか?
私たち荒川会計事務所は、あなたの会社の、この「最初の挨拶」を、最高の形でプロデュースします。
会社の、税務上の「第一印象」、失敗したくありませんよね?
その最初の届出が、あなたの会社の、未来の税金を、決定づけます。
設立後の、複雑な税務手続きは、全て、私たち専門家にお任せください。
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