【合同会社から株式会社へ】組織変更の方法・費用・期間を税理士が完全ガイド

低コストで、スピーディーに設立できる「合同会社(LLC)」。その機動性を活かし、あなたのビジネスは、着実に、そして力強く成長を遂げてきました。

しかし、事業が次のステージへと進むにつれて、あなたは、合同会社という「器」が、もはや、あなたのビジネスの成長スピードに追いつけていない、と感じ始めているのではないでしょうか。

「大企業との取引で、会社形態を理由に、足元を見られている気がする…」
「外部からの『出資』を受け入れ、一気に事業をスケールさせたいが、合同会社では難しい…」
「優秀な人材を採用したいが、『株式会社』という看板の安心感には、やはり勝てない…」

もし、あなたがそのように感じているのなら、それは、あなたの会社が、蝶がさなぎの殻を破るように、次の形態へと「進化」すべき時が来た、という明確なサインです。

その進化のプロセスこそが、合同会社から株式会社への「組織変更」です。

この記事は、その重要で、しかし、極めて専門的で、複雑な「進化のプロセス」を、あなたが、安全に、そして、確実に完了させるための、完全ナビゲーションマニュアルです。そもそも、なぜ組織変更が必要なのか、という戦略的な理由から、法務・税務上の具体的な手続き、そして、その費用と期間の全てを、新宿で数多くの企業の「進化」をサポートしてきた私たちが、徹底的に解説していきます。

第1章:【本質理解】「組織変更」とは何か?― なぜ、解散・新規設立より有利なのか

まず、「組織変更」という手続きの、法的な本質を理解しましょう。

「法人格の同一性」を維持したまま、進化する

組織変更とは、合同会社が、その「法人格の同一性」を維持したまま、株式会社に変わる、会社法に定められた正式な手続きです。

これが意味するのは、あなたの会社は、一度死んで(解散して)、新しく生まれ変わる(新規設立する)のではなく、さなぎが蝶になるように、その連続性を保ったまま、姿を変える、ということです。

この「法人格の同一性」が維持されることで、以下のような、極めて大きなメリットが生まれます。

  • 資産・負債の承継:会社の預金、不動産、借入金などは、特別な手続きなく、そのまま新しい株式会社に、自動的に引き継がれます。
  • 契約関係の承継:お客様や、取引先、従業員との間で結ばれている、全ての契約は、原則として、そのまま有効に引き継がれます。一つひとつ、契約を巻き直す必要はありません。
  • 許認可の承継:事業に必要な営業許可(許認可)も、多くの場合、簡単な届出や、軽微な手続きで、そのまま引き継ぐことが可能です。(※一部、新規取り直しが必要な許認可もあります)
  • 税務上のメリット:繰越欠損金など、税務上の資産も、一定の要件のもと、そのまま引き継ぐことができます。

もし、この組織変更という手段を取らず、「合同会社を解散し、新たに株式会社を設立する」という方法を選んでしまうと、これらの引継ぎが、非常に煩雑になり、多大なコストと、時間、そして、税務上のリスクを伴うことになります。

第2章:【戦略的動機】なぜ、あなたは「株式会社」を目指すのか?

手続きの前に、改めて、なぜ、あなたは、コストと時間をかけてまで、株式会社へと進化する必要があるのか。その戦略的な動機を、明確に言語化しておきましょう。この動機こそが、あなたの会社の、次のステージへの羅針盤となります。

動機1:【信用の最大化】「株式会社」という、最強のブランドを手に入れる

これが、最も多くの経営者が、組織変更を決断する理由です。BtoBビジネスにおいて、大企業との取引や、公的な事業の入札など、「株式会社であること」が、暗黙の、あるいは、明確な取引条件となっているケースは、未だに、数多く存在します。株式会社という、日本で最も歴史があり、最も信頼されている法人格を手に入れることは、あなたの会社の、社会的信用力を最大化し、ビジネスチャンスを飛躍的に拡大させます。

動機2:【資金調達の多様化】「出資」という、新たな翼を手に入れる

合同会社は、その仕組み上、外部の第三者から、大規模な「出資」を受け入れるのが、非常に困難です。しかし、株式会社になることで、あなたは、「株式」という、資金調達のための、極めて強力で、柔軟なツールを手にします。

  • ベンチャーキャピタルからの出資:事業の爆発的な成長を目指すための、大規模な資金調達の道が開かれます。
  • 株式上場(IPO):証券取引所に上場し、広く一般の投資家から、資金を調達するという、究極のゴールを目指すことが可能になります。

動機3:【人材獲得の有利化】優秀な仲間を、惹きつける

優秀な人材ほど、安定した、そして、将来性のあるプラットフォームで、自らの能力を発揮したいと願っています。「合同会社」と「株式会社」、求職者の目には、どちらが、より魅力的に映るでしょうか。株式会社という、社会的に認知された器と、将来的にストックオプション制度などを導入できる可能性は、あなたの採用競争力を、大きく高めます。

動機4:【事業承継の円滑化】未来へ、事業を繋ぐ

合同会社の事業承継(持分の譲渡)は、原則として、他の全社員の同意が必要となり、手続きが煩雑です。一方、株式会社は、「株式」という、明確に分割可能な単位で、会社の所有権が存在するため、将来、あなたの子供へ、あるいは、信頼できる従業員へと、事業をスムーズに、そして、計画的に、承継させていくことが、はるかに容易になります。

第3章:【実践ガイド】組織変更、5つのステップと、その詳細

それでは、実際に、組織変更を行うための、具体的な手順を、ステップバイステップで見ていきましょう。このプロセスは、会社法に厳格に定められており、一つでも手順を誤ると、手続きそのものが無効になる可能性があるため、細心の注意が必要です。

STEP 1:組織変更計画の作成

まず、組織変更の設計図となる「組織変更計画」を作成します。この計画には、法律で定められた以下の事項を、必ず記載しなければなりません。

  • 変更後の株式会社の目的、商号、本店所在地、発行可能株式総数
  • 変更後の株式会社の定款で定める事項(取締役の任期や株式の譲渡制限など)
  • 変更後の株式会社の取締役の氏名
  • 合同会社の社員(あなた)が取得する、変更後の株式会社の株式の数やその算定方法
  • 各社員に割り当てる株式に関する事項
  • 組織変更が効力を生じる日(効力発生日)

プロの視点:
ここでの設計が、新しい株式会社の、未来の全てを決定づけます。特に、「発行可能株式総数」や、新しい「定款」の内容は、将来の増資戦略や、税務戦略に、大きな影響を及ぼします。テンプレートを安易に使うのではなく、専門家と共に、あなたの会社の未来像に合わせて、オーダーメイドで設計することが、極めて重要です。

STEP 2:総社員の同意

作成した組織変更計画について、合同会社の全社員(出資者)の同意を得る必要があります。一人でも反対する社員がいると、組織変更はできません。社員があなた一人だけの「一人合同会社」の場合は、あなた自身の意思決定だけで、この要件はクリアできますが、その意思決定を証明する「総社員の同意書」という書面は、法的な証拠として、必ず作成・保管しておきましょう。

STEP 3:債権者保護手続き【最重要・最長プロセス】

組織変更は、会社の債権者(金融機関や、買掛金の支払先である取引先など)にとっても、重要な事柄です。そのため、会社法は、債権者が、この組織変更に対して、異議を述べる機会を与える「債権者保護手続き」を、厳格に義務付けています。

この手続きは、以下の2つを、同時に、そして、遅滞なく行わなければなりません。

  1. 官報公告:国の広報誌である「官報」に、「当社は株式会社に組織変更することにいたしました。この決定に対し、異議のある債権者は、本公告掲載の翌日から一箇月以内にお申し出下さい。」といった内容の公告を掲載します。
  2. 個別催告:会社が把握している、全ての債権者(銀行、仕入先、未払金のある取引先など)に対して、書面で個別に、組織変更を行う旨と、異議があれば申し出るべき旨を、通知します。(定款で、官報以外の時事に関する日刊新聞紙や、電子公告を、公告方法として定めている場合は、この個別催告を省略できる場合があります)

この、債権者が異議を述べることができる期間は、法律で「最低でも1ヶ月以上」と定められています。つまり、この債権者保護手続きだけで、組織変更の全プロセスに、最低でも1ヶ月という期間が必要になるのです。これが、組織変更のスケジュールにおける、最大のボトルネックです。

STEP 4:組織変更の登記申請

1ヶ月以上の債権者保護手続き期間が終了し、STEP 1で定めた「効力発生日」が到来したら、その日から2週間以内に、本店所在地を管轄する法務局へ、登記申請を行います。この期限を過ぎると、「登記懈怠」として、過料(罰金)の対象となる可能性があります。

この登記申請には、以下の2つの登記を、同時に申請します。

  • 合同会社の解散登記申請
  • 株式会社の設立登記申請

この登記が完了した時点で、法的に、あなたの会社は、合同会社から株式会社へと、その姿を変えます。

STEP 5:設立後の各種届出

登記が完了しても、手続きは終わりではありません。税務署、都道府県税事務所、市区町村役場、そして年金事務所などに対して、「合同会社から株式会社へ組織変更しました」という旨の異動届出書を、速やかに提出する必要があります。

第4章:【費用と期間】あなたの会社の「進化」にかかる、リアルなコスト

費用:合計で、20万円~30万円程度が目安

組織変更にかかる主な費用は、以下の通りです。

  1. 登録免許税:法務局に納める、国税です。合計で、60,000円かかります。
    • 株式会社の設立登記分:資本金の額の1,000分の1.5。ただし、この額が3万円に満たない場合は、30,000円。
    • 合同会社の解散登記分:30,000円。
  2. 官報公告費用:官報に公告を掲載するための費用です。掲載する行数によって変動しますが、約3万円~5万円程度を見ておくと良いでしょう。
  3. 専門家への手数料(司法書士・税理士に依頼する場合):組織変更計画の作成、定款の作成、登記申請書類の作成、各種法務・税務アドバイスなど、その複雑な手続きを、ミスなく、そして、あなたの会社にとって最も有利な形で進めるための費用です。一般的に、10万円~20万円程度が相場となります。

これらの費用を合計すると、**おおむね20万円~30万円程度**の費用が、組織変更には必要となります。

期間:最低でも、1ヶ月半~2ヶ月は必要

組織変更の手続きには、法律で定められた期間があるため、ある程度の時間が必要です。

  • 組織変更計画~総社員の同意:1日~1週間
  • 債権者保護手続き最低1ヶ月以上
  • 登記申請~完了まで:1週間~2週間

全てのプロセスを、最もスムーズに進めたとしても、**全体で約1ヶ月半~2ヶ月程度**の期間がかかると考えておくのが、現実的なスケジュールです。

第5章:【FAQ】「組織変更」に関する、一歩進んだ疑問

最後に、組織変更を具体的に検討されている経営者の皆様から、私たちが特によくお受けする、専門的なご質問とその回答を、Q&A形式でまとめました。

Q1. 債権者保護手続きは、本当に必要ですか?省略できませんか?

A1. はい、法律で定められた、絶対に省略できない手続きです。「うちの会社には、借金はないから大丈夫だろう」と、安易に考えてはいけません。債権者とは、金融機関からの借入金だけでなく、仕入先への「買掛金」や、経費の「未払金」、あるいは、事務所の「敷金返還請求権」を持つ家主なども、広く含まれるからです。この手続きを怠った場合、組織変更そのものが、後から無効となる、極めて深刻なリスクがあります。

Q2. 組織変更後、銀行口座や、各種契約は、どうなりますか?

A2. 「法人格の同一性」が維持されるため、原則として、大きな手続きは不要です。

  • 銀行口座:金融機関の窓口に、組織変更した旨が記載された、新しい「登記簿謄本(履歴事項全部証明書)」と、新しい社印・銀行印などを持参し、「名義変更」の手続きを行うだけで、口座番号はそのまま、継続して利用できます。
  • 各種契約:取引先との契約や、事務所の賃貸借契約なども、原則として、そのまま有効に引き継がれます。ただし、契約書の内容によっては、組織変更があった場合に、通知する義務が定められていることがあるため、主要な契約書は、一度見直しておくのが安全です。

Q3. 組織変更で、税務上のデメリットはありますか?

A3. 組織変更は、税務上、非常に専門的な論点を含みます。基本的には、一定の要件を満たす「適格組織再編」に該当すれば、資産や負債を簿価のまま引き継ぐことができ、課税関係は生じません。

しかし、例えば、合同会社の社員が、金銭ではなく、株式以外の資産(例えば、不動産など)の交付を受けた場合など、特殊なケースでは、「非適格組織再編」と見なされ、会社の資産の含み益に対して、法人税が課税されてしまう、といった予期せぬ税務リスクが発生する可能性があります。組織変更計画を立てる、最初の段階で、必ず、私たちのような税務の専門家にご相談ください。

Q4. 組織変更のベストなタイミングは、いつですか?

A4. 一概には言えませんが、税務上の観点からは、事業年度の開始日(期首)を、組織変更の「効力発生日」とすることが、最も一般的で、経理処理がスムーズです。期中に組織変更を行うと、その事業年度の決算・申告が、「組織変更前の合同会社としての期間」と、「組織変更後の株式会社としての期間」に分かれ、非常に煩雑になります。

結論:会社の「進化」は、専門家と共に、計画的に

合同会社から株式会社への組織変更。それは、単なる事務手続きではありません。それは、あなたの会社の、次のステージへの扉を開ける、極めて重要な「戦略的進化」のプロセスです。

そのプロセスには、会社法、税法、そして、登記実務といった、複数の専門領域が、複雑に絡み合います。

新しい株式会社の、未来の成長を見据えた、最適な「定款」は、どのようなものか。債権者保護手続きに、法的な不備はないか。そして、税務上、最も有利な形で、資産を引き継ぐ方法は、何か。

これらの高度な判断を、あなたが、たった一人で、完璧に下すことは、不可能に近いでしょう。

私たち荒川会計事務所は、あなたの会社の「進化のプロジェクトマネージャー」です。提携する司法書士と共に、法務・税務の両面から、あなたの会社の組織変更を、最も安全に、最もスムーズに、そして、あなたの会社の未来にとって、最も有利な形で、実現させることを、お約束します。

あなたの会社の「器」、今のままで、未来の成長に対応できますか?

その重要な「進化のプロセス」を、私たち専門家と、共に歩みませんか?
まずは無料相談で、あなたの会社の、次のステージへのロードマップを、一緒に描きましょ-う。

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