あなたは今、会社員としての安定した日常の傍ら、自らの情熱とスキルを注ぎ込み、「副業」という名の小さなビジネスを育てているかもしれません。
そして、その副業の売上が月5万円、10万円、30万円と着実に成長していくその通帳の数字を眺めながら、あなたの心の中では、一つの大きな決意が固まりつつあるはずです。
「これならいける。会社を辞めて、本気で独立しよう」
しかし、その大きな一歩を踏み出すためには、多くの場合、「創業融資」という力強いロケットブースターが必要です。
その時、あなたはこう考えるかもしれません。
「金融機関の審査官にこの副業の売上実績を見せれば有利になるだろうか?」
「それとも、これはあくまで会社設立前の『お小遣い稼ぎ』に過ぎず、審査の土俵には乗らないのだろうか?」
この記事は、そのあなたの根源的な問いに対する決定的な「答え」を提示するものです。
結論から申し上げます。
あなたのその「副業の売上実績」は、
創業融資の審査において、他の何物にも代えがたい、
あなたの事業の成功確率を証明する最強の「武器(=実績)」です。
ただし、それは、
その売上をあなたが法律に則って正しく「確定申告」しているという絶対的な大前提があってこそ。
もし、あなたがその実績を隠蔽(無申告)していたとしたら。その「武器」は、あなたの信用を一瞬で地に落とし、未来永劫、融資の道を閉ざす最悪の「凶器」へと豹変します。
この記事では、その天国と地獄の分岐点を、金融機関の視点から徹底的に解剖します。
第1章:【審査官の思考】なぜ「創業前の実績」は金(ゴールド)より価値があるのか?
金融機関の融資担当者が創業融資の審査において最も恐れていること。それは、「その事業計画書は本当に実現可能なのか?」という未来への不確実性(リスク)です。
彼らの目の前には、毎日何十もの「夢」と「情熱」に溢れた、しかし「根拠」のない事業計画書が積み上がっています。
その中で、もしあなたの計画書に以下のような一文が書かれていたら、彼らの目の色は変わります。
「本事業計画書の売上予測(月商100万円)は、単なる希望的観測ではありません。私は会社員として勤務の傍ら、過去1年間、本事業を副業としてテストマーケティングし、すでに月商30万円を安定的に達成する実績を有しております。(証拠資料として、昨年度の確定申告書B、および事業用通帳のコピーを添付)」
この一文が担当者の心を鷲掴みにする3つの理由を解説します。
理由1:「市場が存在する」という最強の証明(Proof of Concept)
「机上の空論」で終わる事業計画の9割は、「誰もその商品を欲しがっていなかった」という残酷な現実の前に敗れ去ります。
しかし、あなたの「副業の売上」は、「私のこの商品(サービス)は、すでに現実の市場でお金を払ってでも欲しいと言ってくれる顧客が存在する」という、「市場の実在証明(=Proof of Concept)」そのものです。
担当者は、この時点であなたの事業の失敗リスクが他のゼロスタートの案件よりも遥かに低いことを確信します。
理由2:「経営者としての実行能力」の証明(Proof of Execution)
「アイデア」を語ることは誰にでもできます。しかし、そのアイデアを現実に落とし込み、「集客」し、「商品」を提供し、「対価」を回収し、「利益」を出すという一連の泥臭いビジネスプロセスを実行できる人間は、ごく一握りです。
あなたが会社員という制約の中で、すでにその一連のプロセスを回し、結果(売上)を出しているという事実は、「この人物は単なる夢想家ではない。口だけでなく、実際にビジネスを動かすことができる『経営者』だ」という、何よりも強力な「人物評価」に繋がります。
理由3:「売上計画」の数字に「神」が宿る
創業計画書で最も審査が厳しく、そして最も嘘がバレやすい項目。それが、「事業の見通し(収支計画)」です。
ゼロスタートの起業家が、「たぶん月商100万円はいくと思います」と語るその数字には、何の裏付けもありません。
しかし、あなたは違います。
「私は現在、副業として週に10時間の稼働で月商30万円を達成しています。今回、融資を受けて独立し、この事業に週50時間を投下することで、単純計算で5倍の月商150万円が見込めます。しかし、そこから保守的に見積もり、開業半年後の目標を120万円と設定しています。」
この「過去の実績」をベースに積み上げられた売上計画は、もはや「希望」ではありません。それは、金融機関の担当者が反論のしようのない、極めて確度の高い「論理的な予測」へと昇華されるのです。
第2章:【最悪の禁じ手】「副業の無申告」があなたの未来を閉ざす本当の理由
では、逆にあなたがその素晴らしい副業の売上実績を持っていながら、「面倒だから」「バレないだろうから」と、税務署に確定申告をしていなかった(=無申告)としたら、どうなるでしょうか。
あなたはその最強の「武器」を、自らの手で「凶器」へと変えてしまいます。
融資面談での最悪のシミュレーション
あなた:「審査官、私はこの事業を副業で1年間続けてきて、すでに月商30万円の売上を上げているんです!だから、この事業は絶対に成功します!」
審査官:「ほう、それは素晴らしい実績ですね。それでは、その実績が客観的に確認できる昨年度の『確定申告書』の控えを拝見できますか?」
あなた:「え…あ、いや、その、売上がまだ少なかったので、申告はまだしていなくて…」
審査官(の心の声):「…終わった。この経営者は2つの点で失格だ。
一つは、『法律違反(脱税)』を平気で行う、コンプライアンス意識の低い人物であるということ。
もう一つは、その違法な状態を隠し、その売上を融資審査のアピール材料として使おうとした、『不誠実な人物』であるということだ。
こんな信頼できない人物に、国の公的な資金を貸せるはずがない。」
結末:あなたのその輝かしい「実績」は、その瞬間にあなたの「不誠実さ」を証明する最悪の「証拠」へと反転し、融資は100%否決されます。
第3章:【実践ガイド】あなたの「副業実績」を最強の「武器」に変える3つのステップ
では、どうすればあなたの副業実績を完璧な融資審査の武器として磨き上げることができるのでしょうか。
STEP 1:【今すぐやる】税務署へ「正しい申告」を行う
もし、あなたが今この記事を読んでおり、まだ昨年度の確定申告の期限内であればラッキーです。
たとえ、副業の利益(売上から経費を引いたもの)が20万円以下で所得税の申告義務がなかったとしても、あえて個人事業主としての「開業届」と「青色申告承認申請書」を税務署に提出し、青色申告で確定申告を行ってください。
もし、すでに期限を過ぎてしまっている(無申告状態である)場合は、今すぐ私たち税理士に相談し、「期限後申告」として1日でも早く正しい申告を済ませてください。
この税務署の受付印が押された「確定申告書の控え」こそが、あなたの実績を証明する唯一無二の公式なパスポートです。
STEP 2:【準備する】「お金の流れ」を可視化する
申告書とセットで、あなたのその副業の売上が入金され、経費が引き落とされている「銀行通帳(できれば事業専用のもの)」のコピー(過去1年分)を準備します。
この2つが揃って初めて、あなたの申告した「数字」と現実の「お金の流れ」が一致し、担当者はあなたの実績を100%信用します。
STEP 3:【語る】事業計画書にその「実績」を組み込む
そして、第1章で解説した通り、その確かな「実績」をあなたの事業計画書の「創業の動機」「経営者の略歴」、そして「事業の見通し(売上計画)」の全ての項目に一貫したストーリーとして組み込み、あなたの計画の骨太な「背骨」とするのです。
第4章:【FAQ】「副業の売上」に関する一歩進んだ疑問
最後に、この副業と創業融資の関係について、さらに深く検討されている起業家の皆様から、私たちが特によくお受けする専門的なご質問とその回答を、Q&A形式でまとめました。
Q1. 副業の利益が20万円以下なので、確定申告(所得税)をしていません。この場合、どう証明すれば良いですか?
A1. これは非常に多く、そして危険な誤解です。
確かに、会社員が副業の「所得(利益)」が年間20万円以下の場合、「所得税」の確定申告は法律上不要とされています。
しかし、そのルールは「住民税」には適用されません。あなたは法律上、所得の大小に関わらず、お住まいの市区町村にその副業所得を申告する「義務」があります。
融資審査での正しい対応
もし、あなたがこの住民税の申告も行っていない場合、あなたの実績を証明する公的な書類は存在しないことになります。
その場合に取るべき唯一の次善策は、
- 事業専用の通帳コピー:副業の入出金が明確に分かる通帳の履歴。
- 自主作成の損益計算書(試算表):月々の売上と経費をあなた自身で集計した一覧表。
- 請求書・領収書などの控え:その試算表の根拠となる取引の証拠。
これらを全てセットで提出し、「申告義務は発生しませんでしたが、事業の実態はここにあります」と証明するしかありません。
しかし、言うまでもなく、税務署の受付印が押された確定申告書に比べ、その証明力(信頼性)は格段に落ちると覚悟してください。
Q2. 副業の売上が大きくなりすぎて、会社の就業規則に違反してしまっているのがバレるのが怖いです。
A2. これは非常にデリケートな問題です。あなたの懸念はもっともです。
まず、大前提として、日本政策金融公庫や税務署があなたの融資の情報や確定申告の情報をあなたの勤務先の会社に密告することは法律(守秘義務)によって固く禁じられているため、100%ありません。
唯一バレるリスクがあるのは、「住民税」の通知です。(※これには「普通徴収」を選択するという回避策があります)
プロの視点:
融資担当者もプロです。彼らも世の中の多くの会社が副業を禁止していることは知っています。
あなたがそのリスクを冒してまで副業を行い、実績を積み上げてきたという事実は、むしろ、「この経営者は会社のルールに縛られるよりも、自らの事業への情熱と覚悟を優先した本物の起業家だ」とポジティブに評価される可能性さえあるのです。
重要なのは、その副業が「勤務時間中に行っていた」や「会社の機密情報を流用した」といった法的な一線を越えていないことです。
Q3. 副業はしていましたが、赤字でした。これは、むしろ言わない方が良いですか?
A3. いいえ、赤字こそ最高の「教科書」としてアピールすべきです。
重要なのは、「赤字だった」という結果ではありません。
OKなアピール例
「私はこの1年間、副業としてテストマーケティングを行い、結果として〇〇万円の赤字を計上しました。しかし、私はこの貴重な赤字(投資)から、『当初想定していたAという集客方法は全く響かず、むしろBというターゲット層にCという訴求を行うことが最適解である』という、金銭には代えがたい生きた市場データを手に入れました。
今回の創業計画書は、その失敗のデータに基づいて戦略を全面的に見直した成功確率の高いプランです。」
この「失敗から学び、分析し、改善できる」というPDCA能力こそが経営者に求められる最も重要な資質であり、あなたの赤字はその資質を証明する最高の勲章となるのです。
Q4. 創業融資の「自己資金」の審査において、副業の売上・利益はどのように評価されますか?
A4. これは「事業実績」の評価とはまた別の重要な論点です。
副業で得た利益は、あなたの「自己資金」の源泉(出所)として最高の評価を受けます。
例えば、あなたの自己資金が100万円あるとします。
- ケースA:その100万円が全て会社員時代の給与からの貯蓄である。
- ケースB:その100万円の内訳が、給与からの貯蓄50万円 + 副業で稼いだ利益50万円である。
融資担当者の目には、どちらがより高く評価されるでしょうか。
答えは圧倒的にケースBです。
なぜなら、ケースBの起業家は、「会社からの給料に頼るだけでなく、自らの事業の力でゼロから50万円の自己資金を生み出す能力がある」という、経営者として最も重要な才覚(稼ぐ力)をすでに証明しているからです。
あなたの副業の利益は、あなたの自己資金の「額」を増やすだけでなく、その「質」を最強のレベルにまで高めてくれるのです。
結論:あなたの「副業」はあなたの「履歴書」である
副業の売上。
それは単なる過去の収入ではありません。
それは、あなたの経営者としての「能力」「覚悟」「計画性」の全てが詰まった、最も信頼できる「履歴書」なのです。
その最強の履歴書を、
- 「無申告」という行為で自ら破り捨ててしまうのか。
- それとも「確定申告」という公的な手続きを経て最強の「武器」として磨き上げるのか。
その選択はあなたの手に委ねられています。
私たち荒川会計事務所は、あなたのその地道な努力の結晶である「副業の実績」を、金融機関が最高の評価を下さざるを得ない完璧な公式文書(確定申告書と事業計画書)へと昇華させる専門家です。
あなたの「副業」、まだ申告していませんか?
その最強の武器を自ら捨ててしまうその前に。
まずは無料相談で、あなたの「副業実績」を最強の「融資の武器」へと変える戦略を、私たちと一緒に立てましょう。
記事執筆監修者
荒川会計事務所(経営革新等支援機関(認定支援機関))代表税理士・登録政治資金監査人・行政書士の荒川 一磨です。
会社設立と創業融資を得意とし、何でも相談できる話しやすいパートナーであることを心掛けている事務所です。
事務所所在地 〒160-0022 東京都新宿区新宿2-5-16 霞ビル8F
電話番号 0120-016-356
所属 東京税理士会四谷支部・東京行政書士会新宿支部
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