【本店移転登記】手続きと費用を完全ガイド|管轄内・管轄外の違いを税理士が解説

事業が成長し、より広く、より機能的なオフィスへ。あるいは、戦略的な理由から、ビジネスの中心地へと拠点を移す。会社の「移転」は、あなたのビジネスが、次のステージへとステップアップする、輝かしい成功の証です。

しかし、その物理的な引越作業の裏側で、法律が、あなたに、ある一つの、極めて重要で、そして、絶対に忘れてはならない手続きを、義務付けていることを、ご存知でしょうか。

それが、「本店移転登記」です。

「ただの住所変更だろう?後でやればいいや」
「登記って、なんだか難しくて、費用もかかりそう…」

もし、あなたが、日々の業務の忙しさを理由に、この法的な義務を軽視し、先延ばしにしているとしたら。あなたの会社は、気づかぬうちに、法律違反の状態に陥り、ある日突然、裁判所から「過料(罰金)」の通知が届く、という、深刻な事態を招きかねません。

この記事は、その、あまりにも多くの経営者が見過ごしてしまう、重要な法務手続きの、完全ナビゲーションマニュアルです。なぜ、この登記が、それほどまでに重要なのか。そして、移転先が「同じ市区町村の中」か、「外」かによって、手続きの手間と費用が、全くの別物になる、という、専門家でなければ知らない、重要な分岐点。その全てを、新宿で、数多くの企業の移転手続きをサポートしてきた私たちが、徹底的に、そして、分かりやすく解説していきます。

第1章:【本質理解】なぜ、本店移転登記は「義務」なのか?― 会社の「住所」が持つ、法的な重み

具体的な手続きに入る前に、まず、なぜ、会社法は、本店移転から「2週間以内」という、厳しい期限を設けてまで、この登記を義務付けているのか、その本質的な理由を理解しましょう。

会社の「本店」とは、単なる「場所」ではない

あなたの会社の「本店所在地」は、単に、あなたが仕事をする場所に過ぎません。法律上、それは、以下のような、極めて重要な役割を担う、会社の「公式な住所」です。

  • 納税地の基準:法人税、法人住民税、法人事業税といった、各種税金を、どこの税務署・自治体に納めるかを決定する、基準となります。
  • 裁判管轄の基準:もし、あなたの会社が、訴訟を起こされた場合、原則として、この本店所在地を管轄する裁判所で、裁判が行われます。
  • 法律上の通知の送達先:裁判所や、行政機関からの、重要な通知は、この登記された本店所在地へ送達されます。もし、移転しているにも関わらず、登記を怠っていると、あなたは、自社にとって、極めて重要な法的通知を、受け取れない、という致命的なリスクを負うのです。

「登記」とは、社会の「取引の安全」を守るための、公的な約束

そして、「登記」とは、この重要な本店所在地を、国の公的な帳簿(登記簿)に記録し、それを、誰でも閲覧できるように「公示」することで、あなたの会社と取引を行う、全ての第三者(金融機関、取引先、顧客)の、安全を守るための、社会的なインフラです。

登記された本店所在地は、「この住所に行けば、この会社は、確かに存在する」という、社会に対する、あなたの会社の「公的な約束」なのです。その約束を、正当な理由なく、更新しない行為は、社会の信頼を裏切る行為であり、だからこそ、法律は、厳しいペナルティを課しているのです。

第2章:【運命の分岐点】「管轄内移転」と「管轄外移転」、その決定的な違い

ここからが、本店移転登記の、最も重要なポイントです。あなたの新しいオフィスの場所によって、手続きの難易度、費用、そして、必要な時間が、全くの別物になります。

その運命を分けるのが、旧本店所在地と、新本店所在地を、管轄する「法務局」が、同じかどうか、という点です。

  • 管轄内移転:旧所在地と、新所在地を、同じ法務局が管轄する場合。
    例:東京都新宿区内での移転(例:「新宿区西新宿」から「新宿区新宿」へ)
  • 管轄外移転:旧所在地と、新所在地を、異なる法務局が管轄する場合。
    例:市区町村をまたぐ移転(例:「新宿区」から「渋谷区」へ)

ケースA:【比較的、簡単】「管轄内移転」の手続きと費用

同じ市区町村内での移転など、管轄法務局が変わらない場合は、手続きは、比較的シンプルです。

STEP 1:社内での意思決定

取締役会を設置している会社であれば、「取締役会の決議」で、具体的な移転先住所と、移転日を決定します。取締役会を設置していない会社(ほとんどの中小企業が該当)であれば、「取締役の過半数の一致」を証明する「決定書」を作成します。

STEP 2:法務局への登記申請

実際に移転した日から、2週間以内に、管轄の法務局へ、以下の書類を提出します。

  • 本店移転登記申請書
  • 取締役会議事録、または、取締役決定書

費用(登録免許税)

法務局に納める登録免許税は、30,000円です。

ケースB:【格段に、複雑】「管轄外移転」の手続きと費用

市区町村をまたぐなど、管轄法務局が変わる場合は、手続きの難易度と、費用が、一気に跳ね上がります。なぜなら、これは、単なる住所変更ではなく、定款の変更と、2つの法務局をまたぐ、複雑な連携手続きが必要になるからです。

STEP 1:【定款変更】株主総会での「特別決議」

多くの会社の定款には、本店所在地が「当会社は、主たる事務所を東京都新宿区に置く。」といったように、市区町村までしか、定められていません。

もし、あなたが、新宿区から渋谷区へ移転する場合、この定款の条文そのものを、「東京都渋谷区に置く。」と、変更する必要があります。そして、この定款変更は、会社の憲法改正にあたるため、株主総会での「特別決議」(議決権の3分の2以上の賛成)という、極めて厳格な手続きが必要になります。

STEP 2:社内での、具体的な住所の意思決定

株主総会で「渋谷区に移転する」という大枠が決まった後、さらに、取締役会(または、取締役の決定)で、「渋谷区〇〇一丁目…」という、具体的な移転先住所と、移転日を、正式に決定します。

STEP 3:法務局への「2つの」登記申請

実際に移転した日から、2週間以内に、登記申請を行います。ここが、最も複雑なポイントです。申請書は、2通作成し、旧本店所在地を管轄する法務局(この例では、東京法務局新宿出張所)の窓口に、2通まとめて、同時に提出します。

  • 旧法務局へ提出する申請書:「当社の本店は、渋谷区へ移転しました」という届出。
  • 新法務局へ提出する申請書:「この度、新宿区から、当社が、そちらの管轄である渋谷区へ、移転してきました」という、新規の届出。

旧法務局が、この2通の申請書を受理した後、旧法務局から、新法務局へ、あなたの会社の登記データが、送付される、という流れになります。

費用(登録免許税)

登録免許税も、2つの法務局に対して、それぞれ支払う必要があります。

  • 旧法務局へ:30,000円
  • 新法務局へ:30,000円

合計で、60,000円となり、管轄内移転の、ちょうど2倍の費用がかかります。

第3章:【登記後の世界】まだ終わらない、怒涛の「住所変更」手続き

法務局への登記申請が完了しても、あなたの「移転プロジェクト」は、まだ半分も終わっていません。今度は、あなたの会社の、新しい登記簿謄本を手に、ありとあらゆる関係各所へ、「住所が変わりました」という届出を行って回る、怒涛の「届出フェーズ」が、始まります。

【本店移転後・届出先チェックリスト】

  • 税務署:「異動届出書」を提出します。もし、管轄の税務署が変わる場合は、旧税務署と、新税務署の両方へ、提出が必要な場合があります。
  • 都道府県税事務所、市区町村役場:税務署と同様に、「異動届出書」を提出します。
  • 年金事務所:社会保険の、適用事業所所在地変更届を提出します。
  • 労働基準監督署、ハローワーク:労働保険の、所在地変更届を提出します。
  • 許認可の管轄行政庁:建設業許可や、古物商許可など、事業に必要な許認可についても、全て、住所変更の届出が必要です。
  • 金融機関:取引のある、全ての銀行、信用金庫の窓口へ、新しい登記簿謄本と印鑑を持参し、住所変更の手続きを行います。
  • 社会保険労務士、弁護士など、契約している専門家
  • 取引先(顧客、仕入先):請求書や、契約書の住所を変更してもらうよう、速やかに通知します。
  • ウェブサイト、会社案内、名刺、封筒、請求書・領収書の雛形など、全ての印刷物

第4章:【FAQ】「本店移転登記」に関する、一歩進んだ疑問

最後に、本店移転を具体的に検討されている経営者の皆様から、私たちが特によくお受けする、専門的なご質問とその回答を、Q&A形式でまとめました。

Q1. 移転日から2週間の期限を過ぎてしまいました。もう登記はできませんか?ペナルティは?

A1. いいえ、登記申請自体は、2週間を過ぎても、問題なく受理されます。しかし、それは「登記懈怠(とうきけたい)」という、明確な法律違反の状態です。

その結果、後日、裁判所から、会社の代表者である、あなた個人に対して、100万円以下の「過料(かりょう)」という、行政上の罰金の支払いを命じる通知が、届く可能性があります。この過料の金額は、登記を怠っていた期間の長さに比例して、高くなる傾向にあります。数年間放置していた場合、10万円以上の過料が課せられるケースも珍しくありません。気づいた時点で、一日でも早く、登記申請を行うことが、被害を最小限に食い止める、唯一の方法です。

Q2. 一人会社なのですが、それでも「株主総会」や「取締役会」の議事録は必要ですか?

A2. はい、絶対に必要です。たとえ、株主も、取締役も、あなた一人だけであっても、法律上は、あなたが、一人二役で、株主総会や、取締役会(あるいは、取締役の決定)を、開催し、その議事を、法的に有効な「議事録」として、作成・保管する義務があります。

この議事録は、本店移転登記の際に、法務局へ提出する、必須の添付書類となります。この、一見すると形式的な手続きを、正しく行えるかどうかが、あなたの会社の、コンプライアンス意識の高さを示す、重要なバロメーターとなるのです。

Q3. 「管轄外移転」の際に、会社の印鑑カードは、どうなりますか?

A3. これは、非常に重要な、そして、多くの方が間違えるポイントです。管轄外移転を行うと、旧法務局に登録されていた、あなたの会社の印鑑登録は、自動的に廃止されます。

そのため、管轄外移転の登記申請を行う際には、旧法務局への申請書と併せて、新法務局に対して、改めて、「印鑑届書」を、新たに提出し直す必要があります。これにより、新法務局で、新しい「印鑑カード」が発行されることになります。

旧法務局で使っていた、古い印鑑カードは、失効し、使えなくなりますので、注意が必要です。

Q4. 移転に伴い、税務署や銀行への届出を忘れると、どんな不利益がありますか?

A4. 法務局への登記以上に、実務上、深刻な問題を引き起こす可能性があります。

  • 税務署への届出を忘れた場合:税務署は、あなたの旧本店所在地を、納税地として認識し続けます。その結果、確定申告書や、税務に関する重要な通知が、旧住所に送付され続け、あなたが、それを受け取れない、という事態が発生します。これにより、気づかぬうちに、申告漏れや、納税遅延となり、延滞税などのペナルティが課せられるリスクがあります。
  • 銀行への届出を忘れた場合:銀行からの、残高不足の通知や、融資に関する重要なお知らせが、届かなくなります。また、法人としての本人確認(実在確認)が、定期的に行われる際、登記簿上の住所と、銀行に届けている住所が異なると、不正利用を疑われ、口座が一時的に凍結される、といった、最悪の事態も、考えられます。

結論:会社の「引越し」は、専門の「プロジェクトマネージャー」と共に

本店移転。それは、単なる、物理的な「引越し」ではありません。

それは、

  • 法務:株主総会の運営、議事録の作成、法務局への、期限内の、正確な登記申請。
  • 税務:税務署、都道府県、市区町村への、遅滞なき届出。
  • 労務:年金事務所、労働基準監督署、ハローワークへの、各種変更届。

といった、複数の専門領域が絡み合う、極めて複雑で、ミスが許されない、一つの、巨大な「経営プロジェクト」なのです。

このプロジェクトを、あなたが、本業の傍らで、たった一人で、完璧に遂行できますか?

私たち荒川会計事務所は、あなたの会社の、この重要な「移転プロジェクト」の、最高の「プロジェクトマネージャー」です。私たちは、提携する司法書士、社会保険労務士と共に、あなたの会社の移転に伴う、法務・税務・労務の、全ての煩雑な手続きを、あなたが、ほとんど意識することなく、完璧に、そして、ワンストップで、完了させることを、お約束します。

あなたは、面倒な書類仕事に、一切、頭を悩ませる必要はありません。あなたは、ただ、新しいオフィスで、あなたの会社の、新しい未来を、創造することだけに、集中してください。

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まずは無料相談で、あなたの「移転プロジェクト」の、最適な進め方を、私たちにご相談ください。

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