【会社の商号】使える文字・記号のルール完全版|失敗しない会社名の決め方

あなたの事業の、魂を込めた「名前」。

会社の「商号」は、単なるビジネス上の記号ではありません。それは、あなたの会社の理念を映し出す「旗印」であり、顧客や社会からの信用を蓄積していく、最も重要な「無形資産」です。そして、その名前は、これから何十年と、あなたと共に、そして、あなたの後も、生き続ける、未来への遺産ともなり得ます。

しかし、その、情熱と、夢を込めた名前が、
たった一つの、知らなかった「ルール」によって、
法務局の窓口で、あっさりと突き返されてしまうとしたら…?

あるいは、もっと恐ろしいのは、無事に登記を終えた数年後、あなたの会社の名前が、他社の権利を侵害しているとして、使用の差し止めや、多額の損害賠償を請求される、という事態です。

会社の「名付け」は、クリエイティブな作業であると同時に、法律、マーケティング、そして、将来の事業戦略が、複雑に絡み合う、極めて論理的な「設計作業」なのです。

この記事は、その、あまりにも多くの起業家が見過ごしてしまう、重要な「設計」のプロセスを、あなたが、完璧に、そして、戦略的に、遂行するための、日本で最も詳しい、完全マニュアルです。法務局が定める、使える文字・記号の厳格なルールから、あなたの会社を、法的なリスクから守るための禁止事項、そして、融資やSEO、ブランディングで、最大限の力を発揮する、戦略的な名前の考え方まで。その全ての知識を、ここに公開します。

第1章:【基本のルール】商号で「使える」文字と記号、その全て

まず、法務局での登記申請で、あなたの会社の名前として、法的に認められる、文字と記号の、基本的なルールを、正確に理解しましょう。

使える文字

商号に使用できる文字の種類は、法律(商業登記規則第50条)で、明確に定められています。

  • 日本語の文字
    • ひらがな
    • カタカナ
    • 漢字(常用漢字、人名用漢字など、一般的に使用されるもの)
  • ローマ字(アルファベット)
    • 大文字(A, B, C…)
    • 小文字(a, b, c…)
  • アラビヤ数字
    • 0, 1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9

使える記号

使用できる記号は、以下の6種類に、厳格に限定されています。これ以外の、例えば「!」や「?」、「@」といった記号や、絵文字などは、一切使用できません。

  1. 「&」(アンパサンド)
  2. 「’」(アポストロフィー)
  3. 「,」(コンマ)
  4. 「-」(ハイフン)
  5. 「.」(ピリオド)
  6. 「・」(中点)

プロの視点:記号使用の注意点
これらの記号は、字句(日本語の単語や、ローマ字の単語)を区切る目的でのみ、使用が認められています。つまり、商号の「先頭」や「末尾」に、記号を使うことは、原則として、できません。(ただし、末尾のピリオドは、省略を表すものとして、例外的に認められています)
【NG例】「-株式会社ABC-」「株式会社&A&B」
【OK例】「株式会社A・B・C」「A&B CONSULTING 株式会社」

必須のルール:「会社の種類」を、必ず含める

商号には、その会社が、どのような法人格であるかを示す文言を、必ず、名前の「前」または「後ろ」に入れなければなりません。

  • 株式会社 → 「株式会社」という文字を入れる
  • 合同会社 → 「合同会社」という文字を入れる

これを、名前の前に入れることを「前株(まえかぶ)」、後ろに入れることを「後株(あとかぶ)」と呼びます。

  • 前株の例:株式会社 新宿商事
  • 後株の例:新宿商事 株式会社

法的な効力に、違いは一切ありません。どちらを選ぶかは、語呂の良さや、会社のイメージ戦略によります。一般的に、社名を覚えてほしい場合は「後株」、会社形態を先に伝えたい場合は「前株」が選ばれる傾向にあります。

第2章:【禁止事項】あなたの商号を「違法」にする、3つの致命的な罠

使える文字や記号のルールを守っていても、あなたの考えた商号が、法律違反となり、登記できない、あるいは、後から、使用を差し止められる可能性があります。

罠1:【同一本店・同一商号の禁止】物理的な場所の重複

ルール:「同じ住所に、同じ名前の会社は、2つ以上、登記することはできない」

これは、会社法で定められた、絶対的なルールです。例えば、あなたが、新宿パークタワーの20階にある、レンタルオフィスの一室を、本店所在地として登記しようとしたとします。もし、すでに、その同じ部屋を本店所在地とする、「株式会社ABC」という会社が存在した場合、あなたは、同じ「株式会社ABC」という名前で、登記することはできません。

対策:
会社設立の準備段階で、法務局のウェブサイトや、「国税庁法人番号公表サイト」などを利用して、あなたの本店所在地に、同じ、あるいは、酷似した名前の会社が存在しないか、必ず「商号調査」を行う必要があります。

罠2:【不正競争防止法】有名企業の「ブランド力」に、ただ乗りしてはいけない

ルール:「ソニー」や「トヨタ」、「グーグル」といった、日本全国、あるいは、世界的に、広く知られている有名企業の名前と、同一、あるいは、著しく類似した商号を使い、その企業のブランド力や信用力に、ただ乗り(フリーライド)して、消費者に誤解を与えるような行為は、不正競争防止法によって、禁止されています。

具体例
あなたが、新宿で、中古車販売の会社を設立する際に、「新宿トヨタ自動車 株式会社」といった商号で登記しようとしても、それは、まず受理されません。たとえ、登記ができてしまったとしても、後から、本物のトヨタ自動車株式会社から、商号の使用差し止めや、損害賠償を求める、訴訟を起こされる、極めて高いリスクを負います。

罠3:【業種誤認の禁止】特定の業種でしか使えない、「魔法の言葉」

ルール:法律によって、特定の業種の会社でなければ、その商号に、使用することができない、と定められている言葉があります。

  • 「銀行」:銀行法により、銀行業の免許を受けた会社でなければ、使用できません。
  • 「信託」:信託業法により、信託業の免許・登録を受けた会社でなければ、使用できません。
  • 「保険」:保険業法により、「生命保険」「損害保険」といった言葉は、保険業の免許を受けた会社でなければ、使用できません。

また、法律で明確に禁止されていなくても、「〇〇省」や「〇〇市役所」といった、公的な機関と誤解されるような名前や、「〇〇協会」「〇〇財団」といった、非営利団体と誤解されるような名前も、登記の際に、修正を求められる可能性があります。

第3章:【戦略的ネーミング】融資・SEO・商標を制する、プロの視点

法的なルールをクリアすることは、スタートラインに立つための、最低条件に過ぎません。本当に重要なのは、その名前が、あなたのビジネスを、成功へと導く「力」を持っているか、という、戦略的な視点です。

視点1:【融資】金融機関の担当者は、あなたの「名前」を見ている

意外に思われるかもしれませんが、会社の商号は、創業融資の審査においても、無視できない影響を与えます。融資担当者は、事業計画書の数字だけでなく、その会社の「佇まい」から、経営者の資質や、事業への本気度を、読み取ろうとします。

  • 信頼性を損なう名前の例:あまりに奇抜で、ふざけているような名前。事業内容と、全く関係のない、個人的な趣味に基づいた名前。公序良俗に反する、あるいは、社会通念上、不適切と見なされる言葉を使った名前。

これらの名前は、「この経営者は、ビジネスを、真剣に考えているのだろうか」「長期的に、事業を継続する意思があるのだろうか」といった、無用な疑念を、担当者に抱かせます。シンプルでも、誠実さが伝わる、事業内容を的確に表した名前は、それ自体が、あなたの会社の「信用力」となるのです。

視点2:【SEOとドメイン】デジタルの世界で、あなたの「住所」を確保する

現代のビジネスにおいて、ウェブサイトのドメイン(例:arakawa-kaikei.com)は、あなたの会社の、インターネット上の「本店所在地」です。どんなに素晴らしい商号を考えても、その名前のドメインが、すでに他社に取得されていては、あなたのデジタル戦略は、最初から、大きなハンデを負うことになります。

商号決定前の、必須チェック
「お名前.com」などの、ドメイン登録サービスサイトで、あなたが考えた商号の、「.com」や、「.co.jp」といった、主要なドメインが、まだ取得可能かどうかを、必ず、事前に確認してください。また、同様に、X(旧Twitter)や、Instagramなどの、主要なSNSのアカウント名が、取得可能かも、併せて確認しておくのが、賢明な戦略です。

視点3:【商標権】あなたの「ブランド」を守る、最強の盾

これが、多くの起業家が、設立時に見過ごし、数年後に、絶望的な事態に直面する、最大の落とし穴です。

「商号(会社名)」「商標(ブランド名)」は、全くの別物です。

  • 商号:法務局の管轄。会社の、法的な戸籍上の名前。
  • 商標:特許庁の管轄。商品やサービスの、ブランド名やロゴ。

あなたの会社の商号が、法務局で、問題なく登記できたとしても。もし、他社が、すでに、同じような名前を、あなたの事業と、同じ、あるいは、類似の分野で、「商標登録」していた場合。あなたの商号の使用は、その他社の「商標権の侵害」となり、使用の差し止めや、多額の損害賠償を請求される、極めて高いリスクを負います。

プロの視点:
商号を決定する、まさにその段階で、特許庁のデータベース「J-PlatPat」で、類似の商標が、すでに登録されていないかを、必ず、調査する必要があります。そして、もし、あなたの商号が、誰の権利も侵害していない、ユニークなものであると確認できたなら。会社設立と、ほぼ同時に、その名前を、あなた自身の「商標」として、出願・登録すること。それが、あなたの、最も価値のある資産である「ブランド」を、未来永劫、守り続けるための、最強の、そして、唯一の、方法です。

第4章:【FAQ】「会社の商号」に関する、一歩進んだ疑問

最後に、会社の名前を決める上で、さらに深く検討されている起業家の皆様から、私たちが特によくお受けする、専門的なご質問とその回答を、Q&A形式でまとめました。

Q1. 一度決めた商号を、後から変更することはできますか?

A1. はい、いつでも変更は可能です。しかし、それには、相応の手間と、決して安くないコスト、そして、目に見えない、大きな「ビジネス上のコスト」がかかることを、覚悟しなければなりません。

法的な手続きと費用

  1. 株主総会での「特別決議」:商号は、会社の憲法である「定款」の、絶対的記載事項です。これを変更するには、株主総会での、議決権の3分の2以上の賛成が必要な、特別決議を経る必要があります。
  2. 法務局への「変更登記申請」:決議の日から2週間以内に、法務局へ、商号変更の登記申請を行います。この際、登録免許税として、30,000円が必要です。

本当のコスト:ビジネス上の、見えない損失
本当に恐ろしいのは、この登記費用ではありません。

  • 全ての公的書類の変更:法務局への登記だけでなく、税務署、都道府県、市区町村、年金事務所など、全ての行政機関へ、異動届出書を提出し直す必要があります。
  • 全ての契約・登録情報の変更:銀行口座、許認可、ウェブサイトのドメイン、賃貸借契約、取引先との基本契約…あなたの会社名が記載されている、全てのものを、変更する、膨大な事務作業が発生します。
  • ブランド資産の、完全なリセット:そして、これが最大の損失です。あなたが、それまで、時間と、お金と、情熱を注ぎ込んで、築き上げてきた、顧客からの「信用」や「知名度」といった、ブランド資産が、商号を変更した瞬間に、ほぼゼロにリセットされてしまうのです。

だからこそ、会社の商号は、設立の段階で、10年後、20年後までを見据えて、完璧に、そして、慎重に、決定する必要があるのです。

Q2. 使いたい会社名のドメイン(.com)が、すでに取られています。それでも、その商号で登記すべきですか?

A2. 私たちは、原則として、お勧めしません。現代のビジネスにおいて、ウェブサイトは、会社の「顔」であり、最も重要な営業ツールです。

もし、あなたの会社の商号と、ウェブサイトのドメイン名が、全く異なっている場合、

  • 顧客が、あなたの会社を、インターネットで検索しようとした時に、見つけられない、あるいは、他社のサイトに、たどり着いてしまう。
  • 名刺交換をした相手が、ドメイン名を見て、「この会社は、なぜ、自社の名前のドメインが取れなかったのだろうか?準備不足だったのだろうか?」と、無用な不信感を抱く。

といった、深刻なデメリットが生じます。

代替案
「.com」がダメなら、「.co.jp」(日本で登記された法人のみ取得可能)や、「.jp」、「.net」といった、他のドメイン(トップレベルドメイン)が空いていないか、まず確認しましょう。それでも、主要なものが全て埋まっている場合は、商号に、地名(例:「新宿〇〇」)や、事業内容(例:「〇〇テクノロジー」)を加えるなど、ドメインが取得可能な、別の商号を、再検討することを、強くお勧めします。

Q3. フリーランス時代から、自分の名前(例:「荒川経営研究所」)を屋号として使ってきました。法人化する際も、この名前を、そのまま商号にすべきですか?

A3. これは、非常に良いご質問であり、多くのフリーランスの方が、法人成りの際に直面する、重要なブランディング上の選択です。

個人名を商号にするメリット

  • 既存のブランド資産の継承:あなたが、個人として、すでに築き上げてきた、業界での知名度や、顧客からの信頼を、法人化した後も、シームレスに引き継ぐことができます。

個人名を商号にするデメリット

  • 事業のスケール(拡大)の限界:「荒川経営研究所」という名前は、良くも悪くも、「荒川さん個人の会社」という、属人的なイメージを、強く与えます。将来、あなたが、従業員を増やし、組織として、事業を拡大していきたい、あるいは、事業を、誰かに売却(M&A)したいと考えた時に、この「個人名」が、会社の成長の、足かせとなる可能性があります。
  • プライバシーの問題:会社の代表取締役の氏名は、登記簿謄本で公開されるため、結局は分かってしまいますが、商号そのものに個人名が入っていると、よりプライバシーが、広く知れ渡ることになります。

プロの視点:
一つの賢明な戦略は、会社名は、より普遍的で、スケール可能な商号(例:「フューチャー・デザイン株式会社」)とし、その会社のサービスブランドとして、あなた個人の名前(「荒川経営研究所」)を、使い続ける、という方法です。そして、そのサービスブランド名である「荒川経営研究所」を、会社名義で「商標登録」することで、法的に、あなたのブランドを、完全に保護するのです。

結論:会社の「名付け」は、専門家と共に行う、最初の経営戦略

会社の商号を決定すること。それは、単なる、クリエイティブな、ネーミング作業ではありません。

それは、

  • 法務:会社法、不正競争防止法
  • 知財:商標法
  • マーケティング:ブランディング、SEO、ドメイン戦略
  • 財務:金融機関からの信用力

といった、複数の専門領域が、複雑に絡み合う、あなたの、最初の、そして、極めて重要な「経営戦略」なのです。

この、複雑なパズルを、起業家が、一人で、完璧に解くことは、至難の業です。

私たち荒川会計事務所は、あなたの会社の設立において、提携する、司法書士(登記の専門家)や、弁理士(商標の専門家)と共に、あなたの会社の、この最初の、そして、最も重要な「名付け」のプロセスを、法務・税務・財務の、あらゆる側面から、ワンストップで、サポートします。

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