創業融資という最初の大きな山を乗り越え、あなたの事業は今、ようやく軌道に乗り始めた。
顧客も増え、売上も伸びてきた。そして、あなたは今、目の前に広がる新たなチャンスを掴むために、次の一手を打とうとしています。
「2号店を出店したい」
「新しい機械を導入し生産性を上げたい」
「優秀な人材を採用し一気に事業をスケールさせたい」
しかし、その全てには再び「資金」が必要です。
「一度審査に通ったのだから、次も簡単だろう」。もし、あなたがそのように安易に考えているとしたら。それは、あなたの会社の未来を左右する極めて危険な誤解です。
この記事は、そのあなたの会社を次のステージへと引き上げる「2回目の融資(追加融資)」という、全く異なるゲームの完全な攻略本です。
金融機関の審査官の視点は、もはやあなたの「夢」や「情熱」にはありません。彼らが見ているのは、ただ一つ。あなたが創業時に約束した「結果」です。
なぜ追加融資は創業融資よりも難しいのか。その冷徹な理由と、金融機関が「この会社になら、もっと貸したい」と確信するベストな「タイミング」、そして、その審査を完璧にクリアするための「5つの絶対条件」。その全ての戦略をここに徹底的に公開します。
第1章:【残酷な真実】なぜ「追加融資」は創業融資よりも「難しい」のか?
まず、あなたのマインドセットをリセットする必要があります。
あなたが一度目に成功した「創業融資」には、実は「創業者」という立場だけで受けられた強力な「下駄(げた)」が履かされていました。
- 「政策的な追い風」:国が開業率を上げるために「創業者には積極的に貸しなさい」という方針を示しています。
- 「未来への期待値」:過去の実績(決算書)がないため、審査はあなたの「事業計画(未来)」と「自己資金(覚悟)」だけで評価されました。
しかし、あなたが一度決算書を提出した瞬間。あなたはもう「創業者」という保護された存在ではありません。あなたは他の何十万という中小企業と同じ土俵で戦う一人の「経営者」です。
そして、追加融資の審査官が見ているのは、あなたの「未来の計画」ではありません。彼らが見ているのは、あなたの「過去1年間の通信簿(決算書)」という動かぬ「結果」なのです。
創業融資 vs 追加融資 審査基準の根本的な違い
| 審査のフェーズ | 創業融資(1回目) | 追加融資(2回目以降) |
|---|---|---|
| 評価の基準 | 「未来」への期待値 | 「過去」の実績 |
| 主な審査資料 | 事業計画書、自己資金の通帳 | 決算書、試算表、返済実績 |
| 審査官の視点 | 「この計画は実現可能か?」 | 「この経営者は約束を守ったか?」 |
| 難易度 | 「創業者」として優遇あり | 「一経営者」として厳しく評価 |
創業融資が「期待」で借りられるものだとすれば、追加融資は「結果」で勝ち取るもの。審査の難易度が根本から異なるのです。
第2章:【タイミングの極意】融資を申し込むべき「ベスト」と「ワースト」
では、その厳しい審査を突破するために、いつ銀行の扉を叩くべきか。その「タイミング」こそが最初の戦略です。
追加融資を申し込む「タイミング」の比較
| タイミング | 金融機関の評価 | 結果 |
|---|---|---|
| 【ワースト】 資金が尽きた時(SOS) |
「沈みゆく船」と判断。慈善事業ではない。 | 100%否決。信用格付も最低に。 |
| 【ベスト】 資金が潤沢な時(先行投資) |
「健康な企業の前向きな投資(プロテイン)」と判断。 | 満額承認の可能性大。好条件を引き出せる。 |
【最悪のタイミング】「資金が尽きた」瞬間
「資金繰りが苦しい。来月の支払いができない。助けてください」
これは「交渉」ではありません。単なる「SOS」です。金融機関は慈善団体ではありません。沈みゆく船から逃げ出すことはあっても、沈みゆく船に新たなお金を投じる投資家はいないのです。
この最悪のタイミングで相談することは、あなたの会社の信用格付を最低ランクに落とし、未来の全ての可能性を閉ざす自殺行為に他なりません。
【最高のタイミング】「資金が十分にある」瞬間
皮肉なことに、金融機関が最もお金を貸したい相手。それは、「今、お金に困っていない会社」です。
「決算書が絶好調だ。そして手元のキャッシュも潤沢にある。しかし私たちは満足していない。この絶好のチャンスを逃さず、さらなる高み(例:2号店)を目指すために、あなたの銀行の力も借りたい」
これこそが、銀行が最も好む「ポジティブな前向きな資金需要」です。
資金調達は、あなたの会社が「病気」になってから飲む「薬」ではありません。あなたの会社が最も健康な時に、さらに強靭な肉体を手に入れるために飲む「プロテイン」であるべきなのです。
具体的なベストタイミング
- 決算が黒字で着地した直後:あなたの「通信簿」が最高得点を記録した瞬間。
- 前回の融資の返済が一定期間(例:1年以上)順調に進んでいる時:あなたの「返済能力」が実績として証明された瞬間。
- 明確な次の「一手」が決まった瞬間:「2号店の物件が見つかった」「大型の受注が内定した」といった、具体的な投資機会が生まれた瞬間。
第3章:【審査の核心】追加融資を100%成功させる「5つの絶対条件」
最高のタイミングを選んだあなたが次に準備すべき、審査官の心を射抜くための「5つの武器」です。
追加融資の審査を通過する「5つの絶対条件」
| 絶対条件 | 審査官の視点(=見ているポイント) |
|---|---|
| 1. 返済実績 | 「前回の融資を一度も遅れず返済しているか?」 |
| 2. 健全な決算書 | 「きちんと『黒字』か?『債務超過』ではないか?」 |
| 3. 情報の透明性 | 「言われなくても『月次試算表』を提出してくれているか?」 |
| 4. 根拠ある計画書 | 「今回の計画は『過去の実績』に基づいて作られているか?」 |
| 5. 返済原資の確保 | 「増やした借入の返済分を含めても、利益は十分に出るか?」 |
条件1:【過去の実績】「約束(返済)」を守り抜いたという絶対的な信用
審査官の視点:「この経営者は前回お貸しした創業融資を、この1年間一度も遅れることなく計画通りに返済してくれているか?」
これが全ての土台です。創業時に交わした最初の「約束」を誠実に守り続けてきたという、この地道な「返済実績」こそが、あなたの経営者としての信用を何よりも雄弁に物語ります。
対策:言うまでもありませんが、既存の借入(公庫、銀行、ローン、クレジットの全て)の支払いを一日も遅らせないこと。
条件2:【現在の健康状態】「黒字」で「債務超過」でない決算書
審査官の視点:「直近の決算書はどうだ?創業時の計画通り、あるいはそれ以上にきちんと『黒字(利益)』を出せているか?そして、その利益の蓄積によって会社の純資産はプラス(債務超過でない)を維持できているか?」
決算書はあなたの1年間の経営の結果そのものです。この「通信簿」が赤点(赤字・債務超過)であれば、追加融資という次のステージに進むのは極めて困難です。
対策:私たち顧問税理士と日々の経営(月次決算)から見直し、まずは会社を利益の出せる体質へと改善すること。それこそが最強の融資対策です。
条件3:【リアルタイムな対話】「月次試算表」の継続的な提出
審査官の視点:「決算書が黒字なのは分かった。しかし、それは数ヶ月前の過去の姿だ。今この瞬間、経営はどうなっている?…ああ、この社長は毎月、顧問税理士が作成した正確な『試算表』を自主的に提出してくれているな。計画とのズレも分析されている。この透明性こそが信頼の証だ。」
これは多くの経営者が見落とすプロのテクニックです。決算書(年1回)だけでなく、日々の経営成績表である「月次試算表」を金融機関と自主的に共有し続けること。
この誠実なコミュニケーションが、あなたの会社の経営の「透明性」を証明し、担当者をあなたの会社のファン(応援団)へと変えていくのです。
条件4:【未来への説得力】「実績」に裏打ちされた新しい事業計画書
審査官の視点:「今回の追加融資500万円の使い道は2号店の出店だな。その売上計画の根拠は…?なるほど。『既存店(1号店)の過去1年間の平均客単価と回転率を基に、最も保守的に算出した』と。これは前回のような夢物語ではない。確かな『実績』に裏付けられた、極めて堅実な計画だ。」
追加融資の事業計画書は、創業時のものとは全く異なります。それは「過去の実績の分析」から始まり、「その成功要因をいかに横展開(スケール)させるか」という、「実績」と「未来」を論理で繋ぐ作業なのです。
条件5:【明確なゴール】「返済原資」が十分に確保されている
審査官の視点:「この新しい計画によって会社の利益はいくら増えるのか?その増えた利益で、既存の借入の返済と今回の追加融資の返済、その『両方』を賄ってもなお会社に十分なキャッシュが残るか?」
最後はやはりここに行き着きます。あなたの新しい計画書が、借金の総額が増えた後でも問題なく返済を継続できるという「返済原資(税引後利益+減価償却費)」を明確に数字で示せているか。
この5つの条件が全て揃った時、金融機関の担当者は初めてあなたの会社の未来に安心して「追加投資」を決断できるのです。
第4章:【FAQ】「追加融資」に関する一歩進んだ疑問
最後に、追加融資を具体的に検討されている経営者の皆様から、私たちが特によくお受けする専門的なご質問とその回答を、Q&A形式でまとめました。
Q1. 創業融資(公庫)の返済がまだ終わっていません。それでも追加融資は申し込めますか?
A1. はい、全く問題ありません。むしろ、それこそが王道です。
金融機関は、あなたが一度に借りられる総額(与信枠)を、あなたの会社の規模や収益力、財務内容に応じて設定しています。
創業時に借りた融資の返済が進み、その元金が減っていくと、その減った分だけあなたの会社の「与信枠」が再び空くというイメージです。
事業が成長し、あなたの会社の信用格付が上がれば、その「与信枠」そのものも大きくなっていきます。
「借りて、返して、また借りる」。この健全なサイクルを繰り返すことこそが、金融機関との信頼関係を築き、会社の成長を加速させる王道なのです。
Q2. 公庫から創業融資を受けました。追加融資も公庫に申し込むべきですか?それとも別の銀行に行くべきですか?
A2. これは、あなたの会社のステージと戦略によって答えが変わる重要な分岐点です。
【ステージ別】追加融資の申込先
| ステージ | 推奨される申込先 | 理由 |
|---|---|---|
| A: 創業1~2年 (赤字/薄利) |
日本政策金融公庫 (JFC) / 制度融資 | 民間銀行はまだ「決算書」で動けないため。 |
| B: 創業3年以上 (連続黒字) |
民間銀行 (信金・地銀) | 「プロパー融資」を勝ち取るステージ。公庫を卒業する。 |
- ケースA:まだ創業1~2年で、決算書が赤字、あるいは黒字が小さい場合
このステージでは、まだ民間金融機関(銀行、信用金庫)がプロパー融資(銀行が100%リスクを負う融資)に応じてくれる可能性は低いです。したがって、再度、日本政策金融公庫に相談するか、あるいは地元の信用金庫に信用保証協会の保証付き(制度融資)で申し込むのが現実的な戦略となります。 - ケースB:創業から3年以上が経過し、連続で黒字決算を達成している場合
おめでとうございます。あなたはいよいよ公庫や保証協会を「卒業」し、民間金融機関との本格的な取引へと進むステージです。このタイミングでこそ、あなたのメインバンク(信用金庫や地方銀行)に対して「プロパー融資」の申し込みを打診すべきです。これが認められれば、あなたの会社は「優良企業」として金融機関からお墨付きをもらったことになります。
Q3. 追加融資の事業計画書は、創業時と同じもので良いですか?
A3. いいえ、絶対にダメです。それは創業融資で落ちる最大の理由の一つです。
先述の通り、審査のステージは全く異なっています。
- 創業時の計画書:「なぜ自分はこの事業を成功させられるか(未来への期待)」を証明する書類。
- 追加融資の計画書:「創業時の計画に対してこれだけの『結果(過去の実績)』を出してきた。だからこの実績をベースに次の投資(追加融資)を行えば、これだけのさらなる結果が生まれる」と証明する書類。
プロの視点:
最強の追加融資の事業計画書とは、「創業時の事業計画書との比較表」です。「計画では売上1,000万円でした。実績は1,200万円と20%上回りました。その勝因は〇〇です。今回の追加融資(500万円)は、その勝因である〇〇をさらに強化するための投資です」。
この「計画 → 実績 → 分析 → 次の計画」という完璧なPDCAサイクルを証明できること。それこそが担当者が最も見たい経営者の姿なのです。
Q4. 直近の決算が赤字になってしまいました。もう追加融資は絶望的ですか?
A4. いいえ、諦めるのはまだ早いです。赤字にも「良い赤字」と「悪い赤字」があります。
「赤字決算」でも評価が分かれる理由
| 赤字の種類 | 評価 | 説明 |
|---|---|---|
| 悪い赤字 | × 絶望的 | 売上不振・コスト管理の失敗による赤字。 |
| 良い赤字 | ○ 交渉可能 | 売上は好調だが、広告宣伝費や人材採用費への「戦略的な先行投資」による一時的な赤字。 |
- 悪い赤字:売上が計画を大幅に下回り、コスト管理も杜撰で、ただ赤字を垂れ流している状態。これは絶望的です。
- 良い赤字:売上は計画通りあるいはそれ以上に伸びている。しかし、事業の成長を加速させるため計画的に広告宣伝費や人材採用費を投下した結果、一時的に利益が赤字になっている「戦略的な先行投資としての赤字」。
もしあなたの赤字が後者(良い赤字)であり、その先行投資がすでに未来の売上として実を結び始めている(=直近の月次試算表では黒字化している)ことを明確に証明できるのであれば。その赤字はマイナス評価ではなく、むしろ「この経営者はリスクを取って成長投資ができる有望な経営者だ」というポジティブな評価に転換させることさえ可能なのです。
結論:「追加融資」とは、あなたの「経営者としての通信簿」
最初の創業融資が「入学試験」だったとするならば。
2回目となる追加融資は、あなたが経営者として過ごしてきたこの数年間の全てが問われる「卒業試験」であり、そして次のステージへの「進級試験」です。
その試験の採点基準は、ただ一つ。あなたの手元にある「決算書」と「試算表」という名の「通信簿」です。
私たち荒川会計事務所は、そのあなたの通信簿を、金融機関が最高の「A+」評価を付けざるを得ない完璧な内容へと、あなたと共に創り上げていく専門家です。
あなたの「通信簿」、銀行に自信を持って見せられますか?
その数字の裏付けが、あなたの会社の未来の成長角度を決定づけます。
まずは無料相談で、あなたの会社の「決算書」と「追加融資」の可能性を私たちに診断させてください。
記事執筆監修者
荒川会計事務所(経営革新等支援機関(認定支援機関))代表税理士・登録政治資金監査人・行政書士の荒川 一磨です。
会社設立と創業融資を得意とし、何でも相談できる話しやすいパートナーであることを心掛けている事務所です。
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