融資の種類一覧|公的融資と民間融資のメニュー・要件・手続きを完全ガイド

事業の成長という名のエンジンを、さらに力強く回転させるための「燃料」、それが「融資」による資金調達です。

しかし、その「融資」という燃料ステーションには、様々な種類の給油口が並んでいます。「日本政策金融公庫」「制度融資」「銀行プロパー融資」「ビジネスローン」…。それぞれに、全く異なる性質、異なるオクタン価(金利)、そして、異なる給油方法(手続き)があります。

「自分の会社には、どの燃料が最適なんだろう?」
「そもそも、自分はどの給油口を使える資格があるんだろうか?」

もし、あなたがこの違いを正しく理解せず、あなたの会社のエンジン(事業ステージ)に合わない、あるいは、粗悪な燃料(高金利ローン)を補給してしまえば、エンジンはすぐに焼き付き、あなたの事業という車は、道半ばで停止してしまうかもしれません。

この記事は、その複雑な融資の全体像を、誰にでも分かるように解き明かすための「完全マップ」です。国や自治体があなたを応援する「公的融資」と、銀行などがビジネスとして行う「民間融資」。その決定的な違いから、それぞれの具体的な融資メニュー、利用するための条件、そして、申し込みから実行までの手続きの全てを、新宿で数多くの資金調達をナビゲートしてきた私たちが、徹底的に解説していきます。

第1章:【大原則】「公的融資」と「民間融資」― あなたは、どちらの扉を叩くべきか?

まず、全ての融資制度は、その成り立ちと「目的」によって、大きく2つのカテゴリーに分類される、という大原則を理解しましょう。この根本的な思想の違いが、審査の基準や、あなたへの向き合い方の全てを決定づけます。

① 公的融資 ―「育てる」ための融資

目的:国や地方自治体が、「日本の経済を活性化させる」という公的な目的のために、創業者や中小企業を支援(育成)するための融資制度です。利益を上げること自体が目的ではなく、有望な事業者を育てることで、社会全体に貢献することがミッションです。例えるなら、将来有望な学生に、国の未来を託して、有利な条件で奨学金を提供する「国の育英制度」のようなものです。

主な担い手:日本政策金融公庫、地方自治体+信用保証協会

特徴:

  • 事業実績のない創業者にも、積極的に門戸を開いている
  • 過去の実績よりも、事業計画の将来性を重視する傾向
  • 金利が低く、無担保・無保証で利用できる制度が豊富

結論:これから起業する方、創業して間もない方が、まず最初に検討すべき、王道の選択肢です。

② 民間融資 ―「儲ける」ための融資

目的:銀行や信用金庫といった民間の金融機関が、自社の利益(利息収入)を上げるという商業的な目的のために、企業へ貸し付けを行う融資です。あくまでビジネスであり、貸したお金が確実に回収できるか、というリスク管理が最優先されます。例えるなら、実績と信用のある社会人に対して、明確な返済能力を審査した上で、金利という対価を得て、資金を貸し出す「商業ローン」です。

主な担い手:都市銀行、地方銀行、信用金庫、信用組合、ノンバンクなど

特徴:

  • すでに事業実績があり、利益が出ていることが、主な対象
  • 事業の将来性よりも、過去の決算書や返済実績を重視する傾向
  • 金利は公的融資より高めで、担保や保証人を求められることが多い

結論:事業が軌道に乗り、さらなる拡大を目指す、成長期・成熟期の企業向けの選択肢です。

第2章:【公的融資・徹底解説】創業者と中小企業の、最強の味方

それでは、起業家であるあなたにとって、最も重要となる「公的融資」の具体的な中身を、詳しく見ていきましょう。

① 日本政策金融公庫 ― 国が運営する「起業家のための銀行」

日本政策金融公庫は、国が100%出資する、創業者・中小企業支援のための専門金融機関です。

主な融資メニュー

  • 新創業融資制度:新たに事業を始める方、または事業開始後2期を終えていない方が対象。原則無担保・無保証で、最大3,000万円まで利用可能な、まさに「創業者のための王道融資」です。
  • 中小企業経営力強化資金:私たちのような国が認定した専門家(認定経営革新等支援機関)のサポートを受けていることを条件に、さらに低い金利で、より大きな金額(最大7,200万円)の融資が狙える、プロ向けの制度です。
  • マル経融資(小規模事業者経営改善資金):商工会議所の経営指導を受けている小規模事業者が対象の、非常に低利な融資制度です。

利用要件
制度によって異なりますが、創業融資の場合は、主に「自己資金」「事業経験」「信用情報」「事業計画の質」などが、総合的に審査されます。

手続きの流れ
全国にある日本政策金融公庫の支店窓口、または郵送、インターネットで申し込みます。手続きは、公庫とあなたの二者間で完結するため、比較的シンプルで、スピーディー(申込から約1ヶ月~1ヶ月半)なのが特徴です。

② 制度融資 ― 自治体と連携する「地域密着型」の融資

あなたがお住まいの「都道府県」や「市区町村」が、地元の金融機関や信用保証協会と連携して、中小企業を支援する融資制度です。

主な融資メニュー
各自治体によって、独自の様々なメニューが用意されています。例えば、「東京都創業融資」や、「新宿区産業振興資金融資」など、地域名がついたものが多くあります。

利用要件
その自治体内で事業を営んでいること、納税していること、許認可を取得していることなどが、基本的な条件となります。そして、最も重要なのが、「信用保証協会の保証を受けられること」が、融資の絶対条件となっている点です。

手続きの流れ
手続きは、金融機関の窓口や、自治体のあっせん窓口から申し込みます。その後、「金融機関」と「信用保証協会」による、二段階の審査が行われます。関係者が多いため、手続きが複雑で、融資実行までの期間が長い(申込から約2~3ヶ月)のが特徴です。

第3章:【民間融資・徹底解説】事業が軌道に乗ってからが本番

次に、民間金融機関が主体となる融資です。これは、創業期ではなく、事業が成長し、実績を積んだ後に、あなたのメインの選択肢となってきます。

① プロパー融資 ― 銀行との「信頼関係」の証

プロパー融資とは、信用保証協会の保証を付けずに、金融機関が100%自らのリスクで、企業に直接行う融資のことです。

主な融資メニュー
企業の資金ニーズに応じて、手形貸付(短期運転資金)、証書貸付(長期設備資金)、当座貸越(いつでも借りられる極度額設定)など、様々な形態があります。

利用要件
これが、最も厳しい条件です。銀行が全てのリスクを負うため、創業して間もない企業や、赤字の企業、財務内容が悪い企業が利用することは、ほぼ不可能です。一般的に、「最低でも3期連続の黒字決算」と、その銀行との長年にわたる良好な「取引実績」が、審査の土台となります。

手続きの流れ
普段から取引のある、メインバンクの融資担当者と、直接交渉することから始まります。まさに、企業の真の実力が問われる、資金調達の最高峰と言えるでしょう。

② ビジネスローン ― 手軽さの裏にある「高金利」という罠

消費者金融や信販会社、あるいは銀行の一部門が扱う、審査がスピーディーで、手続きが簡単な事業資金融資です。

特徴
「最短即日融資」「事業計画書不要」などを謳い、一見すると、非常に魅力的に見えます。

プロの視点:絶対に手を出してはいけない理由
私たちは、お客様がビジネスローンを利用することに、断固として反対します。その理由は、致命的なデメリットにあります。
比較にならないほどの高金利:公的融資が年利1~3%程度であるのに対し、ビジネスローンの金利は、年利8%~18%にも達します。例えば、300万円を5年で返済する場合、公的融資の利息総額が約20万円であるのに対し、金利15%のビジネスローンでは、利息だけで130万円以上も支払うことになります。これは、事業の利益を、ただ利息の支払いで失い続けることを意味します。
信用の失墜:決算書に、ノンバンクからの高金利な借入が記載されていると、日本政策金融公庫や銀行からは、「この会社は、よほど資金繰りに困っているのだな」「正規の金融機関から借りられない、問題のある会社なのだな」と見なされ、将来、あなたが本当に低利な公的融資やプロパー融資を受けようとした際の、深刻な障害となります。

ビジネスローンは、あなたの会社の未来を、長期的に蝕む「劇薬」です。どんなに資金繰りが苦しくても、決して、安易に手を出してはいけません。

結論:あなたの会社の「ステージ」に合わせた、最適な融資戦略を

ここまで見てきたように、「融資」と一口に言っても、その種類と特性は、全く異なります。

あなたの会社が、今、どのステージにいるのか。それによって、選ぶべき選択肢は、自ずと決まってきます。

  • 創業期~成長前期:まず、日本政策金融公庫を主軸に検討する。そして、地元の金融機関との関係構築を重視するなら、制度融資も併せて検討する。
  • 成長後期~成熟期:公的融資で築いた「返済実績」と「黒字決算」を武器に、メインバンクとのプロパー融資交渉に臨む。
  • 全てのステージにおいて:ビジネスローンには、決して手を出さない。

この、あなたの会社の成長段階に合わせた、最適な融資戦略を、あなた一人で描き、実行することは、決して簡単ではありません。

私たち荒川会計事務所は、あなたの会社の「財務戦略のパートナー」として、現在のステージを正確に診断し、未来の成長を見据えた、最適な融資の組み合わせと、その実現までの具体的なロードマップを、あなたと共に創り上げます。

あなたの会社に、最適な「燃料(融資)」を補給しませんか?

間違った選択で、会社の未来を危険に晒す前に。
まずは無料相談で、あなたの会社に最適な「融資戦略」を、私たちと一緒に考えましょう。

無料相談で「最適な融資戦略」を立てる
お電話でのお問い合わせはこちら メールでのお問い合わせはこちら

免責事項

当サイトに掲載されている情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容の完全性、正確性、有用性、安全性を保証するものではありません。税法、会社法、各種制度は法改正や行政の解釈変更等により、コンテンツ作成日時点の情報から変更されている可能性があります。最新の情報については、必ず関係省庁の公式情報をご確認いただくか、専門家にご相談ください。

当サイトに掲載されている内容は、あくまで一般的・抽象的な情報提供を目的としたものであり、特定の個人・法人の状況に即した税務上、法律上、経営上の助言を行うものではありません。具体的な意思決定や行動に際しては、必ず顧問税理士や弁護士等の専門家にご相談のうえ、適切な助言を受けてください。

当サイトの情報を利用したことにより、利用者様に何らかの直接的または間接的な損害が生じた場合であっても、当事務所は一切の責任を負いかねます。当サイトの情報の利用は、利用者様ご自身の判断と責任において行っていただきますようお願い申し上げます。

当サイトに掲載されている文章、画像、その他全てのコンテンツの著作権は、当事務所または正当な権利者に帰属します。法律で認められる範囲を超えて、無断で複製、転用、販売等の二次利用を行うことを固く禁じます。

当サイトからリンクやバナーによって外部サイトに移動された場合、移動先サイトで提供される情報・サービス等について、当事務所は一切の責任を負いません。