【創業時の資金調達】融資と助成金・補助金の違いと、賢い併用戦略を税理士が徹底解説

素晴らしいビジネスアイデアという名の「エンジン」を手にし、あなたは今、起業という壮大な旅のスタートラインに立っています。しかし、どれほど高性能なエンジンも、その力を発揮させるための「燃料」、すなわち「資金」がなければ、ただの鉄の塊に過ぎません。

そして、多くの起業家が、この最初の「燃料補給(資金調達)」で大きな壁にぶつかります。

「返済が必要な『融資』と、返済不要の『助成金』、どちらを使えばいいのだろう?」
「そもそも、自分はどちらを利用できるのだろうか?」
「両方をうまく活用して、資金を最大化する方法はないだろうか?」

「融資」と「助成金・補助金」。これらは、どちらもあなたの事業を力強く後押ししてくれる、心強いツールです。しかし、その性質は、全くの別物。例えるなら、必要な時に必要なだけ借りられる「レンタカー(融資)」と、特定の条件を満たした時に国からお祝いとしてもらえる「ギフトカード(助成金)」ほどに違います。

もし、この違いを正しく理解せず、間違った選択をしてしまうと、本来受けられるはずだった有利な融資を逃したり、もらえるはずだった返済不要の資金を取りこぼしたりと、取り返しのつかない事態になりかねません。

この記事では、新宿で数えきれないほどの企業の資金調達を成功させてきた私たちが、この2つの強力なツールの「決定的な違い」と、それぞれの具体的な中身、そして、両方を賢く組み合わせて、あなたの会社の資金調達を最大化するための「併用戦略」まで、徹底的に解説していきます。

第1章:【本質理解】「融資」と「助成金・補助金」― 似て非なる2つの資金調達

戦略を立てる前に、まずはそれぞれの「正体」を正確に理解しましょう。この本質的な違いが、すべての戦略の基礎となります。

1-1. 「融資」とは ― 未来の利益を前借りする『アクセル』

融資とは、銀行や日本政策金融公庫といった金融機関から、将来の返済を約束してお金を「借りる」ことです。これは、あなたの事業の信用力と、将来性を担保にした、未来の利益の「前借り」と言えます。

融資の主な特徴

  • 返済義務:元金と利息を、契約に定められた期間で返済する義務があります。これは、事業のキャッシュフローに対する、継続的なプレッシャーとなります。
  • 資金使途の柔軟性:事業に必要なものであれば、運転資金(仕入、人件費、家賃など)や設備資金(内装、機械、車両など)として、比較的柔軟に使うことができます。
  • 調達可能額の大きさ:事業計画がしっかりしていれば、数百万円~数千万円という、事業の立ち上げに十分な、まとまった金額を調達することが可能です。
  • 調達までのスピード:日本政策金融公庫などの場合、申し込みから1ヶ月~1ヶ月半程度と、比較的スピーディーに資金を手にすることができます。

戦略的な位置づけ
融資は、あなたの事業の成長スピードをコントロールするための「アクセル」です。これを踏み込むことで、自己資金だけでは不可能な、力強いスタートダッシュや、事業拡大が可能になります。創業期の資金調達においては、まずこの「融資」を、資金計画の主軸(メインエンジン)として考えるのが王道です。

1-2. 「助成金・補助金」とは ― 国策協力でもらえる『ボーナス』

助成金・補助金とは、国や地方自治体が、特定の政策目標(例:雇用創出、DX推進、地域活性化など)の達成に協力してくれる事業者に対して、その経費の一部を「給付する」、原則として返済不要の資金です。

助成金・補助金の主な特徴

  • 返済義務なし:最大のメリットです。給付された資金は、あなたの会社の自己資本となり、財務基盤を強化します。
  • 資金使途が限定的:「〇〇の目的のために使った経費」に対してのみ支給されるため、運転資金などとして自由に使うことはできません。
  • 原則として「後払い」:これが最も重要な注意点です。まずあなたが自己資金や融資で支払いを行い、事業を実施した後に、報告書を提出して審査を受け、初めて入金されます。つまり、当座の資金にはなりません。
  • 複雑な手続きと競争率:申請書類は非常に複雑で、公募期間も短く、補助金の場合は審査で落とされることも多い(競争率が高い)のが実情です。

戦略的な位置づけ
助成金・補助金は、事業のメインエンジンではなく、特定の目的を達成するための「ブースター」です。計画していた投資に対して、後から国が一部を補填してくれる、ありがたいボーナスと捉えるのが適切です。

【一覧表】融資と助成金・補助金の決定的な違い

融資 助成金・補助金
資金の性質 負債(借金) 自己資本(贈与)
返済義務 あり(元金+利息) 原則なし
資金使途 比較的、自由 極めて限定的
入金タイミング 審査通過後、先払い 事業実施後、後払い
難易度 事業計画の質が問われる 要件合致と、複雑な事務処理能力が問われる

第2章:【融資編】創業者が使える、2つの強力な融資制度

事業の主軸となる資金を確保するため、創業者が活用すべき融資制度を2つ、詳しくご紹介します。

① 日本政策金融公庫「新創業融資制度」― 創業者の王道

もはや説明不要かもしれませんが、これから起業する、あるいは起業して間もない事業者にとって、最も有利で、最も現実的な選択肢です。

  • 対象者:新たに事業を始める方、または事業開始後、税務申告を2期終えていない方
  • 融資限度額:最大3,000万円(うち運転資金1,500万円)
  • 担保・保証人:原則として、無担保・無保証
  • 自己資金要件:原則、創業資金総額の10分の1以上の自己資金が必要

事業実績のない創業者を、未来の可能性を信じて支援してくれる、まさに「起業家のための制度」です。

② 日本政策金融公庫「中小企業経営力強化資金」― 専門家と組むことで使える、裏ワザ的制度

こちらは、知る人ぞ知る、さらに有利な条件を引き出せる可能性のある制度です。

  • 対象者:自ら事業計画を策定し、「認定経営革新等支援機関」から、その計画に対する指導および助言を受けている方
  • 融資限度額:最大7,200万円(うち運転資金4,800万円)
  • 担保・保証人:原則、無担保・無保証での利用が可能
  • 金利:新創業融資制度よりも、さらに低い金利が適用されることが多い
  • 自己資金要件:新創業融資制度のような、明確な自己資金要件がありません。(ただし、実務上は自己資金があった方が圧倒的に有利です)

プロの視点:
この制度の最大のポイントは、「認定経営革新等支援機関」の関与が必須である点です。そして、私たち荒川会計事務所は、国からその経営支援能力を認められた、まさにこの「認定経営革新等支援機関」です。つまり、あなたが私たちと一緒に事業計画を練り上げ、融資を申し込むことで、この非常に有利な「中小企業経営力強化資金」の利用資格を得ることができるのです。これは、専門家とタッグを組む、大きなメリットの一つです。

第3章:【助成金編】創業時に狙いたい、雇用関連の助成金

次に、融資と組み合わせることで、あなたの会社の財務をさらに強くする「助成金」の具体例を見ていきましょう。創業期に最も活用しやすいのは、従業員の雇用に関連するものです。

① 中途採用等支援助成金(生涯現役起業支援コース)

  • 助成金の目的:40歳以上の方が起業し、中高年齢者(40歳以上)の従業員を雇用した場合に、その募集や採用、教育訓練にかかった経費の一部を助成する制度です。
  • 主な対象者:40歳以上で、自らが起業し、中高年齢者を1名以上雇用する事業主。
  • 助成額の例:起業者が60歳以上の場合は最大200万円、40歳~59歳の場合は最大150万円が、かかった経費に応じて支給されます。
  • 注意点:起業前に計画書を提出し、認定を受ける必要があります。また、経費の範囲も細かく定められています。

② 特定求職者雇用開発助成金

  • 助成金の目的:高齢者、障害者、母子家庭の母など、就職が特に困難な方を、ハローワーク等の紹介により、継続して雇用する労働者として雇い入れた場合に支給されます。
  • 主な対象者:上記の対象者を、ハローワーク等の紹介で雇用保険の一般被保険者として雇い入れる事業主。
  • 助成額の例:対象者の種類や企業規模、労働時間によって異なりますが、例えば、母子家庭の母等を雇い入れた場合、中小企業であれば1人あたり60万円が助成されます。
  • 注意点:助成金は、対象者を雇用してから一定期間(通常6ヶ月)が経過した後に、複数回に分けて支給されます。

これらの助成金は、申請手続きが非常に複雑で、提出書類も多岐にわたります。通常、社会保険労務士(社労士)が申請を代行します。私たちにご相談いただければ、提携する優秀な社労士と連携し、あなたが利用できる助成金の診断から申請までを、スムーズにサポートいたします。

第4章:【戦略】融資と助成金を120%活用する、賢い併用戦略

ここまで見てきた「融資」と「助成金」。それぞれの特性を理解した上で、賢い起業家は、これらを戦略的に組み合わせます。

その王道パターンは、以下の通りです。

創業時の資金調達・最強の組み合わせ戦略

  1. STEP 1(主軸):まず、日本政策金融公庫の「融資」を申し込み、事業の立ち上げに必要な運転資金と設備資金を、「先払い」で、まとまった額、確実に確保する。
  2. STEP 2(補強):融資の事業計画の中で予定している「従業員の雇用」や「ITツールの導入」などに対して、合致する「助成金・補助金」の申請を、同時並行で進める。
  3. STEP 3(回収):融資で得た資金で、計画通りに従業員を雇用し、経費を支払う。その後、助成金の報告書を提出し、支払った経費の一部を、「後払い」で国から補填してもらう。

例えるなら、融資は、家を建てるための、まとまった「建設費用」です。そして、助成金・補助金は、その家を建てた後に申請して受け取れる「省エネ住宅ポイント」や「子育て世帯への給付金」のようなものです。

この戦略を取ることで、あなたは、事業開始時に必要な資金を確実に確保しつつ、その後の事業運営の中で、返済不要の資金を得て、会社の財務基盤をさらに強化することができるのです。

結論:専門家と共に、あなたの会社の「資金調達ポートフォリオ」を設計する

創業時の資金調達は、単に一つの方法を選べば良い、という単純なものではありません。それは、あなたの事業計画と、国の制度を深く理解し、融資と助成金・補助金という、性質の異なる複数のツールを、最適なタイミングで、最適なバランスで組み合わせる、高度な「財務戦略」です。

私たち荒川会計事務所は、単に融資の申請書作成をお手伝いするだけではありません。あなたの事業計画を拝見し、

  • あなたの事業に最適な融資制度は何か?
  • あなたが利用できる可能性のある、返済不要の助成金・補助金はないか?
  • それらを、どのような順番で、どのように組み合わせて申請するのが、最も効果的か?

といった、あなたの会社だけの「最適な資金調達ポートフォリオ」を、オーダーメイドで設計する、戦略的パートナーです。

あなたの会社が使えるお金、最大化しませんか?

知らないだけで、損をしているかもしれません。
まずは無料相談で、あなたの会社が利用できる「融資」と「助成金」の可能性を、診断させてください。

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